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司法試験の「参考書」の種類と選び方①(総論)

合格者の試験対策(実務家Sさん)

はじめに

司法試験を受けるにあたり、受験生の皆さんが一度は悩むのが「参考書選び」です。
法律の勉強を始めたばかりの方の中には、基本書や判例集など書籍の種類が多すぎて、参考書の位置づけが分からない、という方もいることでしょう。

そこで、ここでは全4回に分けて、法律書における「参考書」の位置づけと、私が使用した参考書をご紹介していきます。

司法試験受験生の必須アイテム

大きく分けると3種類

司法試験対策のための参考書は、大きくわけると以下の3つに分類できます。

  • 基本書
  • 判例集
  • 予備校本

予備校本の中にも複数の種類があり①基本書と同じく、網羅的に法律を説明するもの(伊藤塾の試験対策講座シリーズ(シケタイ)、LECのC-Bookシリーズなど)②司法試験の答案をベースに答案の書き方を説明するもの(読み解く合格思考シリーズ/辰巳法律研究所など)③主にまとめ用として使用するもの(司法試験&予備試験 完全整理択一六法(択六)、趣旨規範ハンドブックなど)に分かれます。

私は、以下のように書籍を使い分けていました。

上記図のうち、実線は司法試験まで使用した教材、点線はほとんど使用しなかった教材です。

その他受験生がよく読む参考書

上記3種類からは外れるものの、受験生がよく読む参考書として

  • (ⅰ)学者による解説書…小山剛「憲法上の権利の作法」(尚学社)、橋本博之「行政法解釈の基礎-仕組みから読み解く」(日本評論社)など
  • (ⅱ)実務家による解説書…憲法ガール、行政法ガールなど

があります。
これらは、答案を書くための補助教材の位置づけです。

参考書の用途とメリット・デメリット

以下では、それぞれの参考書の用途と、司法試験におけるメリット・デメリットを説明致します。

基本書

基本書は、主に①法律・判例の体系を網羅的に理解する②不明点があるときに辞書として参照する、という使い方をしていました。
通読するかは別として、各科目1冊は揃えておくと便利です。

■メリット

  • 内容が正確である
  • 1冊の本を使うことで、論理的に矛盾しない考え方を身に着けることができる
  • 実務家になっても使用する

■デメリット

  • 司法試験では問われないような、学説の対立等の記載がある(が故に、通読が大変)
  • ある程度学習が進まないと、自分に合う・合わないが分からない
  • 一元化の素材としては不向き

なお、私が使った基本書は「(司法試験 基本書)の記事URL」としてまとめていますので、宜しければ参考にして下さい。

判例集

判例集は、その名の通り、判例の内容及び解説の確認のために使います。
試験前に読み返すため、事案の概略図を書き込んだり、論点や覚えるべき言い回しを付箋で貼っていました。

■メリット

  • 判例がコンパクトにまとまっているため、後で判例のみを確認したいときに便利
  • 教科書では引用されていない事実や論点まで引用がなされている

■デメリット

  • 判例集によっては、引用部分が長すぎる(又は短すぎる)
  • 論文対策としては十分だが、択一対策としては掲載判例が足りないことがある
  • 1冊の本の中で、担当の解説者によって内容の良しあしが異なる

予備校本

私は、予備校本の中でも、択一六法と趣旨規範ハンドブックを愛用していました。
これは、主にまとめノートの役割を果たすものです。

基礎的な学習は基本書を使用していたため、シケタイやC-Bookは使用していません。
以上をふまえた、予備校本一般のメリット・デメリットは以下のとおりです。

■メリット

  • 図表が使用されていたり、平易な言葉で書かれており、わかりやすい
  • 司法試験向けの情報が集約されており、一元化しやすい
  • 論文の書き方や択一の解き方など、司法試験合格のためのノウハウを学ぶことができる

■デメリット

  • 書籍によっては、内容に不正確な部分があったり、論理に整合性が無い場合がある
  • 内容を正確に理解するためには、基本書や判例集との併用が必要となる
  • 種類が多く、毎年バージョンアップされるため、選ぶのが難しい

予備校本の良いところは、何と言っても、司法試験向けに情報が集約されている点です。もっとも、情報がコンパクトであるがゆえに、説明が十分でなかったり、前後関係が省略されていることもあります。

参考書の選び方

迷ったらスタンダードを選べ

特に初学者の方は、どのような参考書を選ぶか迷うと思います。
そのような場合には、 皆が使っているスタンダードな書籍を揃えればよい と思います。

司法試験は、皆が出来ていることを出来るようになれば良い試験です。そのため、参考書選びにおいて、他の受験生と差をつける必要はないでしょう。

私の失敗

合格者が口を酸っぱくしていう言葉に「手を広げない」ということがあります。
参考書選びにおいても、一度使うものを決めたら、基本的には変更しない方が良いでしょう。

私の場合、先輩から譲り受けたり、書店で気になった本を購入したりと、気づくと沢山の書籍が手元にあり、最終的に一元化する教材を選ぶのに時間がかかりました。

結果的に、どの参考書を使うか迷った科目は成績が伸び悩みました。
今思えば、他の受験生も使用しているメジャーな参考書1冊に絞って使い続ければよかったです。

おまけ・ロースクールの授業で使う参考書との両立

ロースクールでは、大学同様、担当の先生によって、独自の教材を指定することがあります。
もちろん、有名どころの教材であれば、ロースクールの授業を機に使い始めるのもありだと思います。

ただ、何冊も参考書を読むのは難しいと思うので、私の場合は、「ロースクールの授業で使うもの」と割り切って、授業前の通学時間で目を通すだけ、のように使用していました。

総論はここまでとして、次記事からは、私が実際に使用していた参考書を紹介します。

執筆者情報
実務家弁護士S
私大法科大学院卒業・新司法試験合格・実務経験2年以上
加藤ゼミの受講により勉強法を変えたことで司法試験に合格したことから、その経験を後輩に伝えたいと思い記事を執筆。
受験生時代の得意科目は刑法、苦手科目は行政法。