加藤ゼミナールについて

司法試験の「参考書」の種類と選び方④(公法系、労働法)

合格者の試験対策(実務家Sさん)

憲法

判例集

■「判例プラクティス憲法」信山社
憲法は、判例百選ではなく、判例プラクティスを使用していました。
判例百選と異なり、この本は人権から統治までが1冊にまとまっています。
・使い方
ロースクールの授業レジュメや基本書に引用されている判例・裁判例については、事案から解説まで一通り目を通しました。その他の判例・裁判例については、事案と争点、判旨だけざっと読むに留めました。
判例集を読む際は、漫然と読み進めるのではなく、各事案のポイントを自分で説明できるようになることを目標にしていました。
・コメント
ロースクールの指定教材でしたが、思いのほか使いやすく、司法試験合格まで使用しました。
判例プラクティスは、事案・判旨・解説に加えて「争点」という項目があり、各事案の争点を簡潔に紹介していることから、後からざっと見返すのに適していました。
また、各章の冒頭に、判例の流れを解説したページがあり、裁判例の位置づけ(何の権利・自由の問題なのか、裁判例はどのように移り変わっていったのか)がわかりやすい点も良かったです。

予備校本・その他

■大島義則「憲法ガール」法律文化社
小説風の対話形式で、新司法試験の過去問の解説がなされます。私が受験をする少し前に出版されて流行し、当時の受験生は持っている人が多かった印象です。
・使い方
新司法試験の長文の憲法問題に苦手意識を持っていたことから、通学中に読書感覚で読んでいました。登場人物が新司法試験の問題について会話をしていくので、一緒になって考えていくと、憲法問題の思考方法をたどることができます。
・コメント
新司法試験の解説をしていることもあり、応用的な書籍のように思います。基本的な学説、判例・裁判例を抑えたうえで読むことをお勧めします。
小説風になっているので、すらすら読めるのですが、憲法の解き方として体系的に理解することが(あくまで私は)出来ませんでした。
合格後の今になって読み返すと良い本だと思うのですが、受験生当時の私にはオーバースペックだったと思います。

行政法

判例集

■橋本博之「行政法判例ノート」弘文堂
・使い方
サクハシの行政法(櫻井 敬子、 橋本 博之「行政法」弘文堂)と併せて、使用していました(サクハシの行政法では、判例を引用する際に、行政法判例ノートの掲載番号を記載しています。)。
事案と、事案の意義について簡潔に説明している「point」の項目を読んでから、判旨を読んでいました。
・コメント
判例百選と比べると個々の判例の記載が薄いように感じますが、司法試験対策という意味では十分だと思います。

予備校本・その他

■曽和俊文他「事例研究行政法」日本評論社
事例問題と解説から成る問題集。事例問題は、新司法試験の形式に近い長文問題です。
・使い方
事例問題を解き、簡単に答案構成をしたうえで、解説ページで具体的な検討方法を学びました。
・コメント
司法試験受験生がよく使用する問題集です(問題形式が新司法試験に似ているからでしょうか。)。「事例で考える会社法」と同じく、解説はありますが、具体的な答案例は載っていません。

※友人は「事例研究行政法」と司法試験の過去問を使用し、行政法の解き方をマスターしたと話していました。私は、この本だけでは行政法の解き方-特に答案の書き方が分からず、最終的に加藤ゼミを受講して理解することが出来ました。

労働法

判例集

※判例集は判例百選を持っていたのですが、ほとんど読んでいません。授業で使用していた「ケースブック労働法」で裁判例を学びましたが、そもそも判例集ではない(ので事案が載っていないケースもある)ため、ここでは紹介しません。

予備校本・その他

■「1冊だけで労働法」辰巳法律研究所
前半パートは、趣旨・規範本のように要件や定義がまとまっています。後半パートは、司法試験の問題と解答例が載っています。
・使い方
主に一元化用教材として使用し、ロースクールの授業に合わせて書き込みをし、繰り返し読みなおしました。後半パートの司法試験の問題については、答案の書き方を確認する際にさっと目を通しました。
・コメント
まとめノートとして使うには十分かと思います。自分で書き込みをしたこともあり、司法試験合格まで、特に情報量として不足は感じませんでした。
末尾に論点表と司法試験の出題年数が載っているところが良かったです。

おわりに

私が使用した参考書の紹介は以上になります。振り返ってみると、擦り切れるまで読み返した本もあれば、新品同様で手元に残っている本もあります。

参考書の使いやすさは人によって向き・不向きもあるので、一参考例にしていただければ幸いです。

執筆者情報
実務家弁護士S
私大法科大学院卒業・新司法試験合格・実務経験2年以上
加藤ゼミの受講により勉強法を変えたことで司法試験に合格したことから、その経験を後輩に伝えたいと思い記事を執筆。
受験生時代の得意科目は刑法、苦手科目は行政法。