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データや試験内容にみる「司法試験の難易度」とは?

合格者の試験対策(実務家Sさん)

はじめに

他の試験と比較して「司法試験合格は難しい」というイメージがありますが,具体的に何をもって「難しい」というのでしょうか。

合格率や他業種との観点から,司法試験の難しさについて考えていきたいと思います。

司法試験の合格率

●司法試験

受験者数 合格者 合格率
3,424人  1,421人 41.5%
(法務省:令和3年司法試験の合格発表について)

●予備試験

受験者数 合格者 合格率
14,317人 467人  3%   
(法務省:令和3年司法試験予備試験の結果について)

4割という合格率だけでみると,司法試験合格はそれほど難しくはなく,他方,予備試験はかなりの狭き門のように見えます。

しかし,そもそも司法試験を受験するためには法科大学院を卒業するか,予備試験に合格していることが前提となりますから,試験の難易度を一概に数字だけで判断はできません。

他士業との比較

行政書士

■結果データ(令和3年)

受験者数 合格者 合格率
47,870人 5353人 11.18%

■出題範囲:「行政書士の業務に関し必要な法令等」(出題数46題)
憲法,行政法,民法,商法及び基礎法学の中から出題される。
「行政書士の業務に関連する一般知識等」(出題数14題)
政治・経済・社会,情報通信・個人情報保護,文章理解
※参考:(一般社団法人行政書士試験研究センター 受験手続きの流れ | 行政書士試験研究センター)

行政書士試験は,受験者数と合格率からみると,比較的合格しやすい試験といえます。
試験内容も,択一式と記述式(簡単な事例に40字程度で答えるもの)であり,対策しやすい内容です。司法試験と比較すると出題科目が少なく,また,受験資格も問われないため,法律系資格の中ではトライがしやすい試験といえましょう。

※司法試験との関係
行政書士の試験科目は,司法試験と重なる部分が多く,司法試験受験生も受験がしやすいです。私の周りでも,大学在学中に,司法試験の勉強と並行して行政書士の資格を取っている友人がいました。

司法書士

■結果データ(令和3年)

受験者数 合格者 合格率
14,988人 613人 4%

■出題範囲
(1) 憲法,民法,商法(会社法その他の商法分野に関する法令を含む)及び刑法に関する知識
(2) 不動産登記及び商業(法人)登記に関する知識(登記申請書の作成に関するものを含む)
(3) 供託並びに民事訴訟,民事執行及び民事保全に関する知識
(4) その他司法書士法第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力
※参考:(日本司法書士会連合会)
筆記試験だけでなく,口述試験も課されます。

司法書士試験は,合格が難しい試験であると私は思います。広く法律知識が問われること,口述試験があることがその理由です。民事系だけでも結構な負担がありますし,択一のためだけに刑法を学ぶというのも,なかなか厳しいですね。

他方,予備試験とは異なり,司法書士試験に合格すれば司法書士として登録が出来ますので,最終合格までの時間やコストは,司法試験の方が上回りそうです。

※司法試験との関係
出題範囲を見てもらえばわかりますが,司法試験科目とは異なる科目の比重が重いため,司法試験から転向する場合も大変な労力が伴います。
司法書士になってから,司法試験合格を目指す方はいますが,例えばロースクール在学中に両者を並行して勉強するというのは難しいでしょう。

司法試験の難易度雑感

「4割が合格する試験」と聞くと,司法試験合格はそこまで難しくないように思えます。確かに,司法試験は,特殊なスキルが必要だったり,天才でないと受からないという試験ではありません。

しかし,8科目の論文試験・3科目の択一試験においてある程度の点数を取るためには,かなりの勉強量が必要となります(【実体験】司法試験合格までに必要な勉強時間とは)。ロースクールに通うとなれば,お金も時間もかかりますし,予備試験を経由するとなれば,並大抵ではない努力が必要であることは合格率からも自明です。

そのため,他の試験と比べても,時間や労力がかかるという意味で合格が難しい試験であることに変わりないでしょう。

おわりに

司法試験は難しい試験ではありますが,合格出来れば資格職として様々なことが出来るようになります。また,念押ししたいのは,難しいとはいっても,正しい努力が出来れば合格できる試験です。合格率や合格者数からみれば,受かりやすくなっているともいえますので,多くの方にチャレンジしてほしいと切に願います。

執筆者情報
実務家弁護士S
私大法科大学院卒業・新司法試験合格・実務経験2年以上
加藤ゼミの受講により勉強法を変えたことで司法試験に合格したことから、その経験を後輩に伝えたいと思い記事を執筆。
受験生時代の得意科目は刑法、苦手科目は行政法。