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令和3年予備試験解答速報-刑事訴訟法-

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解説

設問1

設問1では、準現行犯逮捕(刑事訴訟法212条2項、213条)の適法性が問われています。

1.準現行犯逮捕の要件

準現行犯逮捕の要件は、㋐212条2項各号該当性、㋑犯行・逮捕間の時間的接着性、㋒逮捕者を基準とした犯罪と犯人の明白性及び㋓逮捕の必要性(規則143条の3準用)です。これらのうち、㋑・㋒は「罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる」に対応する要件であり、逮捕者における犯罪と犯人の明白性という準現行犯逮捕の実質的根拠から導かれるものです。

要件検討に入る前に、これらの要件を抽象論として示すとともに、要件と準現行犯逮捕の実質的根拠の繋がりを示す必要があります。この過程は飛ばせません。

2.㋐212条2項各号該当性

初めに、㋐212条2項各号該当性から論じます。

平成25年司法試験の採点実感では、「同項各号の要件該当性の検討に先んじて犯罪と犯人の明白性の要件を論じたり、同項各号の要件該当性を犯罪と犯人の明白性の要件充足性を検討するための一要素として論じる等、同項の構造を理解していないと思われる答案が相当数見受けられた。」とあるので、㋐212条2項各号該当性は、㋒犯罪の犯人の明白性とは別の要件として、㋒に先行して論じる必要があります。

また、平成25年司法試験の出題趣旨では、「特定の犯罪…との関係で、甲の準現行犯の要件該当性を論じる必要がある。」、「例えば、甲の着衣及び靴に血が付着していたことについて、これが同項第3号の「被服に犯罪の顕著な証跡があるとき」に該当すると言うためには、なぜ、Vに対する殺人事件の証跡と言えるのかを論じる必要がある。」とあるため、212条2項各号該当性のうち2号及び3号該当性については当該被疑事件との関係で論じる必要があります。

本件住居侵入・強盗傷人事件(以下「本件被疑事件」とする)では犯人がVの持っていたバッグを奪っているところ、甲は、被害品の特徴と一致するバッグを持っていたのですから、本件被疑事件の被害品である「贓物…を所持しているとき」(212条2項2号)に当たります(㋐)。

また、Pが、甲に対し、「I署の者ですが、話を聞きたいので、ちょっといいですか。」と声をかけたところ、甲がいきなり逃げ出したことは、「誰何されて逃走しようとするとき」(212条2項4号)に当たります。

㋐212条2項各号該当性という要件との関係では、1号ないし4号のいずれに1つに該当すれば足りるため、複数の充足性を論じる実益はないように思えます。しかし、212条2項各号該当性は犯罪と犯人の明白性を客観的に担保するための要件ですから、犯罪と犯人の明白性を客観的に担保するための要件である㋑時間的接着性と、㋒犯罪と犯人の明白性の当てはめにおいて、何号に該当するのか、複数の該当事由が認められるのかという点が意味を持ちます。したがって、㋑及び㋒の当てはめで使うことになるという意味で、2号該当性だけでなく4号該当性まで認めることと(その分だけ明白性を推認する力が増す)、4号だけでなく2号も認定すること(4号該当性だけでは、明白性を推認する力が弱い)に意味があります。

3.㋑犯行・逮捕間の時間的接着性

本件被疑事件の発生から逮捕までの間には、午後2時頃から午後4時3分頃までという2時間以上、約5.3キロメートルという、比較的大きな時間的間隔と場所的間隔があります。このように、本問は時間的接着性が認められるかが微妙な限界事例に属しますから、㋑時間的接着性については、準現行犯逮捕においては現行犯逮捕よりも要求水準が緩和されていることを説明した上で、論じるのが望ましいです。

また、㋑時間的接着性は、犯人の明白性を客観的に担保する趣旨の要件であるため、時間的・場所的間隔が本件において犯人の明白性を客観的に担保できるだけのものかという視点で論じることになります。平成25年司法試験の出題趣旨でも、「「罪を行い終わってから間がない」ことについては、単に、犯行時と逮捕時との客観的な時間間隔及び距離関係を指摘するだけでは足りず、本件事案のような時間的・場所的近接性が,いかに犯罪と犯人の明白性に結び付くのかを論じる必要がある」とあります。

なお、㋑時間的接着性は、それ自体としては時間的概念であるものの、そのように判断できるための場所的近接性も必要であり、この意味において、㋑時間的接着性の判断においては時間的間隔だけでなく場所的間隔も考慮されることになります(条解刑事訴訟法第4版406頁、NO307法学教室「特集 新司法試験プレテスト」(必須科目)47頁[長沼範良])。

4.㋒犯罪と犯人の明白性

㋒犯罪と犯人の明白性は、(1)212条2項各号の該当事実、(2)犯行・逮捕間の時間的接着性、(3)その他の客観的事情を総合考慮して判断されます(川出敏裕「判例講座Ⅰ」初版67頁)。そして、犯罪の明白性と犯人の明白性は、いずれも、逮捕者を基準として判断され、その際、直接の認定資料は逮捕者自らが直接認識した客観的状況に限られ、供述証拠はかかる客観的状況を補充するものとして認定資料に供し得るにとどまります。

犯罪の明白性については、「Pらは、Vから、犯人らの特徴と奪われたバッグの特徴を聞き出した上、管理人に依頼して同マンションの出入口の防犯カメラ画像を確認した。その結果,同日午後2時1分頃に犯人らと特徴の一致する2名の男が走り去っていく様子が映っており、そのうち1名は被害品と特徴の一致するバッグを所持していた。」(問題文9~12行目)という事情から認めることができます。

犯人の明白性については、(3)Pは、Vから聞き出した犯人の特徴と甲の特徴が一致することと、Vから聞き出した被害品の特徴と一致するバッグを甲が持っていることを確認していること、(1)2号と4号に重ねて該当することが甲が犯人であることを強く推認することから、(2)2時間以上・約5.3キロメートルという時間的・場所的間隔を踏まえても、肯定することができると考えます。

なお、(3)では、犯人の特徴と被害品の特徴に関するVの供述を、Pが直接認識した甲の特徴と甲が持っていたバッグの特徴という客観的状況に甲の犯人性との関係で意味を与えるという形で(つまり、客観的状況を補充するものとして)使っているにとどまります。

5.㋓逮捕の必要性

準現行犯逮捕においても、逮捕の必要性が要件となります(酒巻匡「刑事訴訟法」初版60頁)であると解される。厳密には、明らかに逮捕の必要性がないと認められるということが準現行犯逮捕における消極要件となります。

本問では、本件被疑事件の重大性及び甲が逃げ出したことを踏まえながら、甲が逃走するおそれがあるとして、逮捕の必要性を認定することになります。

設問2

②の措置は、39条1項の接見申出に対する接見指定(39条3項)ですから、接見指定の可否(39条3項本文)及び内容(同条項但書)が問題となります。

1.接見指定の可否

身体拘束中の被疑者の接見交通権(39条1項)は、同人が弁護人からの援助を受ける機会を確保することを目的とするものであり、憲法34条前段の弁護人依頼権の保障に由来するので、これを制限する根拠となる「捜査のため必要があるとき」(39条3項本文)とは、接見を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生じる場合に限られます。そして、接見指定制度の趣旨は、厳格な時間的制約のなかで身体を拘束されている被疑者の身体の利用をめぐる調整にあるので、「捜査」は被疑者の身体を利用する捜査に限られ、①被疑者の身体を利用した捜査が現に行われており(物理的限定説)、又は②それが間近い時に行われる確実な予定がある場合(準限定説)には、原則として捜査に顕著な支障が生じる場合に当たると解されます(最判H11.3.24・百33)

午後4時50分頃、I署における弁解録取手続が終了し、Rは、甲が同手続において自らの犯行を自白したことから、裏付け捜査をするために、直ちに甲にナイフの投棄場所を案内させて、ナイフの発見、押収及び甲を立会人としたその場所の実況見分を実施しようと考え、捜査員や車両を手配しています。

その後、午後5時頃、S弁護士から午後5時30分から30分間甲と接見したい旨の申出があったのですから、間近い時に甲の身体を利用する上記捜査を行う確実な予定があったといえます。

当時は10月であるため日が暮れるのが比較的早いため、午後6時まで接見をしてから現場に向かったのでは、現場に到着した頃には辺りが暗くなっており、その日に予定していたXの身体を利用した上記捜査をすることに顕著な支障が生じます。

したがって、「捜査のため必要があるとき」という要件を満たします。

2.接見指定の内容

接見指定は、「被疑者の防衛の準備をする権利を不当に制限するようなもの」であってはならない規律に服します(39条3項但書)。そして、逮捕直後の接見が弁護人依頼権の保障の出発点を成すことに鑑み、初回接見の指定にあたっては、協議・検討を行い、接見の時間指定により捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能であれば、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り、逮捕に伴う所定の手続を終えた後において、比較的短時間であっても即時又は近接した時点での接見を認めるようにするべきであると解されています(最判H12.6.13・百34)。

川出敏裕「判例講座Ⅰ」初版224頁では、初回接見の申出から即時又は近接した時点よりも遅い時点での接見指定が適法とされる例として、「被疑者が重要な証拠物で未押収のものの所在を自供し、それに基づいて引き当たり捜査を実施しようとしている場合のように、被疑者を留置施設の外部に連れ出す形態での捜査を迅速に行わなければならない必要性があり、それが終了するまでには接見の申し出がなされた時点からある程度の時間を要する場合」が挙げられています。本問の事実関係は上記の例に準ずるものですから、接見指定の内容は「被疑者の防衛の準備をする権利を不当に制限するようなもの」に当たらないから適法であると論じることになります。

すなわち、甲が弁解録取手続において自分ともう1人の男による犯行を認めた上で、重要な証拠物である未押収のナイフについて「地図で説明することはできないが、近くに行けば案内できると思う」と供述しており、Rはこの供述に基づいて引き当たり捜査をしようとしていました。ナイフが誰かに拾われる前に上記捜査を行う必要があるため、初回接見の時間を午後5時30分から30分と指定すると、上記捜査に顕著な支障が生じることになります。

また、Sが上記30分間以外には接見の時間が取れないため、上記捜査の終了後から本日中に速やかに接見をさせることができない特段の事情があります。

したがって、Rが弁解録取手続終了後、即時又は近接した時点での接見を認めないで、初回接見の日時を「翌日の午前9時以降」と指定したことは、「被疑者の防衛の準備をする権利を不当に制限するようなもの」とはいえず、適法であるといえます。


司法試験過去問との関連性

予備試験の刑事訴訟法では、司法試験過去問が流用される傾向が非常に強いです(司法試験で出題されていない一事不再理効が出題された令和2年予備試験は、原則的な傾向に対する例外です)。

設問1は、準現行犯逮捕における時間的接着性に関する限界事例であるという点で司法試験プレテスト設問1が大変参考になるとともに、準現行犯逮捕だけが正面から問われた平成25年司法試験設問1も大変参考になります。

設問2は、同じく接見指定の可否及び内容が問われた平成28年司法試験設問2が大変参考になります。

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