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令和3年司法試験解答速報-行政法-

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講師作成の参考答案

解説

行政法の解答速報でも、憲法と同様、表面的な解答筋ではなく、問題処理の流れ、問題文のヒントから検討事項を抽出する視点、現場での頭の使い方といった、令和4年以降の司法試験・予備試験でも役立つ汎用性の高いことに重点を置いております。

設問から読む

憲法と同様、設問から読み、論述の内容と条件・形式について確認します。

設問1(1)では、本件不選定決定の処分性が問われており、論述の条件・形式に関する指示はありません。

設問1(2)では、本件不選定決定の取消訴訟における訴えの利益が問われており、これについても論述の条件・形式に関する指示はありません。

設問2では、本件不選定決定の取消訴訟において原告Bがどうような違法事由を主張するべきかが問われており、論述の形式として「想定されるA市の反論を踏まえ」ること、論述の条件として「当該訴訟が適法であることを前提」にすることについて指示があります。

 

なお、34行目では、Bから相談を受けた「弁護士Dの指示に応じる弁護士Eの立場に立って、設問に答えなさい」との指示があるため、設問1(1)(2)についても、原告訴訟代理人の立場として論じることになります。したがって、必ず「「処分」に当たる」「訴えの利益が認められる」という結論にしなければいけないわけではありませんが、仮に否定する結論に立つ場合には相当説得力のある論述をする必要があります。なるべく肯定する方向で書いた方がいいです。

それから、設問2では「Bはどのような違法事由を主張するべきか」が問われているのですから、「違法事由が認められない」との結論はあり得ません。Bの主張→市側の反論→Bの再反論としての主張、という構成で論じることになります。

会議録の整理

行政法では、会議録における指示・誘導に従って何について・どう論じるべきかを整理することが非常に重要です。

今回の解説では、会議録の読み方と整理の仕方についても重点を置いて説明をしていますので、別の問題でも活かすことができるスキルとして、習得して頂きたいと思います。

出題される判例の幅が広がった

令和2年司法試験でも感じたことですが、行政法では、論文試験で出題される判例の幅が広がりつつあります。

今回も、放送局の開設免許における競願関係に関する最高裁判例(最判S43.12.24・百Ⅱ173)、諮問手続に関する最高裁判例(最判S50.5.29・百Ⅰ118)など、これまで出題された判例に比べると重要度の下がる判例が出題されています。

おそらく、司法試験委員会としては、分野ごとの処理手順をはじめとする受験技術が進化してきたことを踏まえて、受験技術だけでは対応しきれない出題にしたいと考えているのだと思います。

設問1(1)の解説

設問1(1)では、Bに対する本件不選定決定の「処分」性(行訴法3条2項)について、同決定に不服を持つBから相談・依頼を受けた弁護士として検討することが求められています。したがって、できるだけ「処分」性を肯定する結論を導くべきです。

〇不選定決定に関する法令の仕組み

処分性を検討する前提として、処分性が問題となっている係争行為に関する法令の仕組みを正確に把握することが重要です。

条例9条を自主条例たる法規命令であると理解するのであれば、条例9条は、道路法(以下「法」とします)33条に基づく市道占有許可について、法33条1項所定の要件を満たすことに加えて、条例9条1項各号所定の要件を満たすことを要求することにより、法33条1項よりも許可要件を加重している上乗条例であると理解することになります。

しかし、会議録55~56行目には、「A市は、本件条例第9条を行政手続法上の審査基準として定めたようです。本件条例第9条の性格については、我々もA市と同じ立場をとることにしましょう」とあります。

したがって、条例9条については、法33条1項に基づく市道占有許可の基準についての審査基準(行手法9条)として、条例9条1項各号所定の要件を満たす必要がある旨を定めたものであると理解することになります。

そして、条例9条2項2号イでは、申請者が同号アに当たる屋台営業者ではない場合には、申請者が条例26条に基づく選定決定を受けた屋台営業候補者(条例25条)であることが必要であるとされています。

こうした意味で、条例26条に基づく選定決定は、法33条1項に基づく市道占有許可の前提要件に位置づけられることになります。

〇処分性を検討する際の構成1(講学上の要件を前提とした検討)

不選定決定の処分性を検討する構成は、”理論上”、2つあります。

1つ目は、「公権力性+直接具体的な法的効果」という講学上の要件(昭和39年最高裁判例の処分性の定立を講学上の要件に置換したもの)を前提として、法効果性の有無を問題にするという構成です(※以下では、1つ目の構成について丁寧に説明していますが、本問では、1つ目の構成で論じることは求められていません。)。

すなわち、例えば、法令上、Aという許認可処分について、それに先立ってBという同意等を得ていることが前提要件として必要であるという仕組みになっている場合、Bという同意等が拒否されると、その名宛人は、Aという許認可処分の前提要件を欠くことになるため、許認可処分を受けることができなり、その結果、許認可の対象行為を適法に行うことができなくなるという意味で、許認可の対象行為を適法に行うという法的地位に対する影響があるとして法効果性が認められそうです。

しかし、上記の名宛人が許認可の対象行為を適法に行うことができないのは、当該行為を適法に行うためには許認可を受けなければならないとする法令上の規定の一般的・抽象的な作用によるものであり、Bという同意等が拒否されたことによってはじめて生じるものではありません。

つまり、甲が同意等の拒否を受けたために当該行為に関する許認可を受けることできなくなることにより当該行為を適法に行うことができないという効果は、同意等を受けていない(同意等を受けるための申し出もしていない)ほかの人たちが許認可を受けていないために当該行為を適法に行うことができないという効果と同じであるということです。いずれの効果も、当該行為を適法に行うためには許認可を受けなければならないとする法令上の規定の一般的・抽象的な作用によるものです。

したがって、甲が当該行為を適法に行うことができないという効果は、上記の法令上の規定自体の効果として生じているものであり、同意等を拒否する行為自体によって生じたものではありません。

よって、同意等を拒否する行為には法的効果がないことになります。これが原則ルールです。

最高裁判例も、都市計画法上の開発許可申請の形式的要件の一つとして公共施設管理者の同意証明書を申請書に添付することが定められていた(同法30条1項、同条2項、32条1項)事案において、「同意が得られなければ、公共施設に影響を与える開発行為を適法に行うことはできないが、これは、法が前記のような要件を満たす場合に限ってこのような開発行為を行うことを認めた結果にほかならないのであって、右の同意を拒否する行為それ自体は、開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえない。」として、公共施設管理者の同意拒否の法効果性を否定しています。

そうすると、条例26条に基づく不選定決定についても、これを受けた者が市道占有許可を受けることができなくなり、その結果として当該区画で屋台営業を適法に継続することができなくなるという効果は、法32条が市道占有を許可制に服せしめるとともに、条例9条1項2号イが条例26条に基づく選定を市道占有許可の要件の1つとして定めているという法及び条例の規定の一般的・抽象的な作用によるものにすぎず、不選定決定それ自体によるものではないことになります。

したがって、不選定決定の処分性は、法効果性がないとして否定されることになります。これが原則的な結論です。

しかし、不選定決定の処分性については、Bから相談を受けた「弁護士Dの指示に応じる弁護士Eの立場に立って」検討する必要があるため、上記の原則ルールを踏まえた上で不選定決定の処分性を肯定することができるよう、さらに検討を続けることになります。

不選定決定の法効果性(ひいては、処分性)を認めるための理論構成としては、2つ挙げられます。

1つ目は、不選定決定が市道占有許可の申請に対する実質的な拒否処分として機能していると考えることにより、不選定決定について、当該区画で屋台営業を適法に継続するという実体上の法的地位に対する影響を内容とする法効果性を認めるという構成です。

これについては、関税定率法21条3項に基づく税関長の輸入禁制品該当通知の処分性を肯定した最高裁判例(最判S59.12.12・百Ⅱ159)が参考になります。

本判決は、関税定率法21条3項に基づく税関長の輸入禁制品該当通知(関税法・関税定率法上、輸入禁制品については税関長による輸入許可を受けることができず、輸入許可を受けていない貨物の輸入が禁止されていることから、輸入禁制品該当通知を受けた貨物については適法に輸入することができなくなる)について、同通知を受けた貨物については輸入許可申請をしても輸入不許可処分がされることはないという確立した実務の取り扱いに着目して、輸入禁制品該当通知は輸入申告に対する行政庁側の最終的な拒否処分の態度の表明であり、実質的な拒否処分として機能しているとして、輸入申告拒否処分の段階に留保されているはずの当該貨物を適法に輸入することができなくなるという法的効果を当該通知の段階まで前倒すことにより、当該通知の法効果性、ひいては処分性を肯定しています。

不選定決定についても、それを受けた者が法33条2項に基づき許可申請をしても拒否処分がされることはないという確立した実務の取扱いがあるのであれば、上記判例と同様に考えることにより、市道占有許可の段階に留保されているはずの当該区画で屋台営業を適法に継続することができなくなるという法的効果(不選定決定の名宛人に対する特定的・具体的な制約としての、当該区画で屋台営業を適法に継続することができなくなるという法的効果)を不選定決定の段階まで前倒すことにより、法効果性、ひいては処分性を肯定することができます。

2つ目は、市道占有許可の申請を適法に行うという手続上の法的地位を認めることにより、不選定決定について、手続上の法的地位に対する影響を内容とする法効果性を認めるという構成です。

これについては、登録免許税還付通知拒絶通知の処分性を肯定した最高裁判例(最判H17.4.14・百Ⅱ161)や公共施設管理者の同意拒否の処分性を否定した最高裁判例の理論を否定する見解(曽和・野呂・北村「事例研究行政法」第3版183~185頁)が参考になります。

登録免許税還付通知拒絶通知の処分性を肯定した最高裁判例は、同通知には還付請求権を否定する法的効果は有しないとして実体法の地位に対する影響を内容とする法的効果を否定する一方で、登記等を受けた者に対して簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用できる法的地位を認めることにより、上記の手続上の地位を否定するという意味での法的効果を認める子により、同通知の処分性を肯定しました。

事例研究行政法第3版183~185頁では、自己所有地で開発行為を行うことは憲法29条1項で保障された財産権の行使であることに着目し、開発行為の適否について実体的判断を受ける機会を保障するべきであるとして、開発行為の許可申請を適法に行う法的地位を認めることにより、そのような法的地位を否定するという意味での法効果性を認めることにより、公共施設管理者の同意拒否の処分性を肯定する見解が紹介されています。

不選定決定についても、屋台営業の継続が憲法22条1項で保障される「職業の自由」という基本的人権であることから、その適否について実体的判断を受ける機会を保障するべきであるとして、法又は条例において市道占有許可の申請を適法に行う手続上の法的地位を認めることにより、そのような法的地位を否定するという意味での法効果性を認めることで、処分性を肯定することも可能であると考えられます。

ただし、選定決定を受けていることは、市道占有許可における形式的要件ではなく実体的要件であるため、不選定決定を受けていても市道占有許可の申請を適法に行うことができますから、厳密には、「市道占有許可の申請を適法に行う手続上の法的地位」という表現は不正確であると思います。細かいことですが、一応、補足させて頂きました。

〇処分性を検討する際の構成2(「申請」権アプローチ)

本問では、不選定決定の処分性について、「申請」権アプローチによって検討することが求められています

会議録51~52行目では、「弁護士E:…屋台営業候補者の選定が申請に対する処分に当たるか、したがって、本件不選定決定が申請拒否処分に当たるかを検討すればいいでしょうか。」「弁護士D:基本的な方針はそれでいいと思いますが…」とありますから、本件不選定決定の処分性については「申請に対する拒否処分に当たるか」という観点から論じることになります。

この段階では、論述の仕方としては、2つあります。

1つ目は、上記の構成1の通り、「公権力性+直接具体的な法的効果」という講学上の要件を前提として、関税定率法21条3項に基づく税関長の輸入禁制品該当通知の処分性を肯定した最高裁判例(最判S59.12.12・百Ⅱ159)のように、不選定決定を受けた者が法32条2項に基づき許可申請をしても拒否処分がされることはないという確立した実務の取扱いを認めることにより、本件不選定決定の法効果性を認める、というものです。これを、解説の便宜上、法効果性アプローチを呼びます。

2つ目は、処分性についての昭和39年最高裁判例の定式や「公権力性+直接具体的な法的効果」という講学上の要件を用いないで、規則18条1号に基づく申請書の提出が「申請」(行手法2条3号)に当たるのであれば、これに対する諾否の応答である条例26条に基づく不選定決定は申請に対する拒否処分として「処分」に当たる、と説明するものです。これを、解説の便宜上、「申請」権アプローチと呼びます。

会議録50~51行目では、本件不選定決定が申請に対する拒否処分に該当するかについて「本件条例及び本件条例施行規則の仕組みに即して」検討するようにと指示があるところ、1つ目の法効果性アプローチだと、上記の確立した実務の取扱いの存否の検討過程で「本件条例及び本件条例施行規則の仕組み」に言及することができません。また、会議録50行目における「Bさんは、屋台営業候補者の公募に応募して、本件不選定決定を受けたので、…本件不選定決定が申請拒否処分に当たるかを検討すればいいでしょうか。」という記述、及び会議録53~54行目における「Bさんが屋台営業候補者の公募に応募したのは、…」という記述からしても、本件不選定決定がBによる公募への応募に対してなされたことに着目して論じることが求められていることが分かります。

したがって、本件不選定決定の処分性については、令和2年司法試験設問1(1)で出題された農地転用許可のために必要とされる農用地利用計画の変更を求める本件申出に対する拒絶通知と同様、2つ目の「申請」権アプローチに従って検討することになるはずです。

なお、令和2年司法試験の採点実感では、2つ目の「申請」権アプローチに従って処分性を検討することが求められていた本件申出拒絶に関して、「設問1(1)について、会議録において、計画自体の法的性格(処分性)と計画変更の処分性とを別個に検討するよう、解答のための手順が示されているにもかかわらず、多くの答案は、それを無視し、処分の定義をいくつかの要素に分類した上で(例えば「公権力性」と「直接的法効果性」など)、それに当てはめて処分性の有無を判断するにとどまっていた。一口に処分性の問題といっても、例えば、行政規範や行政計画の処分性の有無が問われる場面と申請に対する処分かどうかが問われる場面とでは、検討すべき事項が異なるはずである。」(採点実感)、「申出の拒絶に処分性が認められるかどうかを検討する際には、申出がどのような性質を持つのかという点を考えるべきであるが、かなりの答案が、申出の拒絶自体について、判例の処分性判断の定式に照らして処分性があるかどうかを検討していた。そうした答案は、問題の意図を十分に理解していないと思う。」(採点実感)とあります。したがって、本問でも、2つ目の「申請」権アプローチで答案を書く際には、昭和39年最高裁判例の処分性の定式は使わないと思います。

2つ目の「申請」権アプローチでは、申請書の提出が「申請」に当たるかどうかについて、①申請書の提出が「法令に基づ」くといえることと、②申請書の提出が自己に対して「許認可等」の「処分」を求める行為であることの2要件から判断することになります。

条例9条は審査基準という行政規則ですが、条例上の規定うち9条以外は審査基準ではなく法規命令たる自主条例ですから、条例25条4項からの委任を受けた規則18条によって条例26条に基づく選定決定を求めるための手続として定められている申請書の提出は、「法令に基づ」くものであるといえます(①)。問題は、②です。

会議録52~54行目では、「弁護士E:…本件不選定決定が申請拒否処分に当たるかを検討すればいいでしょうか。弁護士D:基本的な方針はそれでいいと思いますが、Bさんが屋台営業候補者の公募に応募したのは、飽くまでも市道占用許可を受けるためなので、市道占用許可との関係にも注意してください。」とあります。

「申請」は自己に対する「許認可等」の「処分」を求める行為ですから、申請書の提出が「申請」であるといえるためには、「許認可等」を求めるものである必要があります。

申請書提出者は、法33条1項に基づく市道占有許可を受けるための前提要件を満たすことを目的として、選定決定を求めて申請書を提出しています。そうすると、選定決定は、それ自体には当該区画で屋台営業を適法に行うことができるという法的効果がないとして、「許認可等」に当たらないのではないか、という点が問題となります。

法33条1項が許可基準についてある程度抽象的に定めているのは、市道占有許可の判断を市長等に委ねる趣旨によるものですから、市道占有許可について市長等の要件裁量が認められます。そうすると、条例9条は市道占有許可の裁量基準に位置づけられます。

裁量基準は、法の委任に基づかない行政規則ですから、原則として法的拘束力を有しません。しかし、裁量基準が存在する場合には裁量権の行使における公正・平等な取扱いの要請があるとともに、公表されている裁量基準の内容には相手方の信頼保護の要請もありますから、公表されている裁量基準は、外部規範である平等原則(憲法14条)や信義則を媒介として国民に対する関係でも行政庁を拘束することとなり、裁量基準と異なる取扱いを相当と認めるべき特段の事情がない限り、裁量基準を考慮しないことは裁量権の逸脱又は濫用に当たると解されています(最判H27.3.3・百Ⅱ175)。

条例9条は、条例という名称のものである以上、当然、公表されています。そうすると、条例9条には上記意味での法的拘束力が認められますから、申請書提出者が市道占有許可を受けることができるか否かは、特段の事情のない限り選定決定を受けているかにより決まることになります。したがって、選定決定を「許認可等」である道路占用許可と同視することができます。こう考えると、申請書の提出は自己に対して「許認可等」の「処分」を求める行為として「申請」に当たるといえます。

したがって、申請書提出に対する不選定決定は、「許認可等」を求める「申請」に対する拒否処分という意味で「処分」に当たることになります。


設問1(2)の解説

設問1(2)では、Bを原告とする本件不選定決定の取消訴訟における訴えの利益について、競願関係に関する最高裁判例(最判S43.12.24・百Ⅱ173)を参考にしながら論じることになります。

Bに訴えの利益が認められるためには、本件不選定決定の取消判決によりBが「屋台営業候補者に選定されるはずである」というBの目的が実現される可能性が必要です。

条例26条2項によると、同条に基づく選定決定を受けることができるのは営業希望場所1つにつき1名だけですから、選定を受けるための複数人による各申請は競願関係にあるとえます。

そして、Bに対する本件不選定決定の取消判決によって、Cに対する本件選定決定が当然に失効するという形成力(行訴法32条)や本件選定決定を当然に取り消すべきとする拘束力(行訴法33条)が生じるわけではありません。

そうすると、Cに対してすでに本件選定決定がなされている以上、Bは、本件不選定決定の取消判決が確定しても、自己に対する選定決定を受けることができないとして、訴えの利益が否定されるとも思えます。

しかし、最高裁判例は、放送局の開設免許における競願関係の事案について、Bに対する免許拒否処分とCに対する免許付与処分とは競願関係を根拠として表裏の関係にあり、Bに対する免許拒否処分が取り消された場合、処分行政庁は取消判決の趣旨に従い改めてBとCの各申請とを比較してその優劣を審査することになり(行訴訟33条2項)、この再審査の結果、Cに対する免許付与処分を取り消して、 Bに対して免許付与処分をするということもあり得るとして、取消判決が当然にCに対する免許付与処分の取り消しを招来するものでないことを理由にBが自己に対する免許拒否処分の取り消しを求める利益を否定するべきではないと述べ、Bを原告とするBに対する免許拒否処分の取消訴訟における訴えの利益を肯定しました。

そして、BとCによる各申請も1つの営業希望場所に関する1つの選定決定をめぐる競願関係にあるため、Bに対する本件不選定決定とCに対する本件選定決定とは表裏の関係にあります。

そうすると、上記の最高裁判例の射程が及び、Bに対する本件不選定決定が取り消された場合、市長が取消判決の趣旨に従い改めて双方の申請を比較してその優劣を審査することにより(行訴法33条2項)、その再審査の結果、Cに対する本件選定決定を取り消した上でBに対して選定決定をする可能性もあるといえます。

したがって、Bには、本件不選定決定の取消判決によって自己に対する選定決定を受けられる可能性があるとして、本件不選定決定の取消しを求める訴えの利益が認められます。

設問2

設問2では、本件不選定決定の取消訴訟において原告Bがどうような違法事由を主張するべきかについて、想定されるA市の反論を踏まえながら論じることが求められています。

〇会議録により違法事由の単位・個数とともに、違法事由の中身を確認する

まず初めに、行政裁量や条文解釈による規範定立といった法律構成レベルのことを考える前に、会議録を読んで、検討が求められている違法事由の単位・個数とともに、違法事由の中身を確認します。

第1に、会議録68~71行目における「新しい条例を施行する場合には経過措置を設けるのが通例で、そうすることが法的に要請される場合もありますが、本件条例の施行に際して、Bさんのように従前から他人の名義を借りて屋台営業を行っていた者(以下「他人名義営業者」という。)の地位への配慮はなかったのですか。」及び会議録83~84行目における「まずは、Bさんの地位に対する配慮に欠けるところがなかったか検討して下さい」との記述から、本件不選定決定の際に他人名義営業者Bの既得の地位に対する配慮を欠いたことを理由とする違法事由について論じることが求められていることが分かります。

会議録78~79行目における「弁護士E:他人の名義を借りた屋台営業はそもそも道路法上無許可営業に当たり、法的な保護に値しないということでしょうか。」との記述から、他人名義営業者の既得の地位は違法営業に係るものであり要保護性がないからこれに配慮する必要はないのではないか?といった観点から第1の違法事由について検討することが分かります。

そして、会議録80~82行目における「弁護士D:しかし、本件条例制定に至るまでの経緯や関係法令の規定等に照らして、屋台営業において他人の名義を借りることは、営業の実績が全て法的な保護に値しなくなるほど悪質な行為と評価できるのでしょうか。」との記述から、第1の違法事由について、Bの主張「他人名義営業者の既得の地位に対する配慮を欠くから違法である」→A市の反論「他人名義営業者の既得の地位は違法営業に係るものであり要保護性がないからこれに配慮する必要はない」→Bの再反論「他人名義営業者の営業の中には要保護性があるものがあり、Bの営業にも要保護性が認められるから、Bの既得の地位に対する配慮を欠いたことは違法である」という構成で答案を展開することが分かります。

第2に、会議録83~84行目における誘導が「まずは、…」で始まっていることと、会議録85行における「弁護士E:承知しました」との記述からここで第1の違法事由に関する会話が終了していることが窺われること、及び会議録86行目以降における誘導が「それから、…」で始まっていることから、会議録68~85行目が第1の違法事由に関する誘導であり、会議録86行目から第2の違法事由に関する誘導がスタートすることが分かます。

会議録86~105行目における記述から、第2の違法事由については、市長が自己の公約を実現することを理由として、Bを屋台営業候補者に選定するべきである旨の諮問委員会の推薦を覆したことに着目して検討することが分かります。

会議録108~110行目における「屋台営業の実績を考慮して審査を行うという委員会の申合せが合理的であったかという問題を検討する必要があります。委員会の申合せが不合理であれば、市長がこれに基づく推薦を覆すのは当然ということになりますから。」との記述から、市長が諮問委員会の推薦を覆したことの違法・適法が、諮問委員会の推薦(申合せ)の合理性の有無によって決せられることが分かります。

そして、会議録110~114行目における「具体的には、委員会の申合せが本件条例施行規則第19条各号の選定基準に照らして是認することができるか、また、新規に屋台営業を始めようとして公募に応募した者の利益を不当に侵害することにならないか検討してください。」との記述、及び諮問委員会がBの営業実績を理由として条例施行規則19条各号の審査において5点ずつ加点していたことを示す会議録88~97行目の記述から、諮問委員会の推薦(申合せ)の合理性については、㋐他人名義営業者Bの営業実績を条例施行規則19条各号との関係で考慮することができるのか(他人名義営業者Bの営業実績は条例施行規則19条1号ないし4号のどれかに関連するものか)と、㋑条例施行規則19条各号の審査において他人名義営業者Bの営業実績を考慮して加点することは、営業実績を有しない新規営業希望者の利益を不当に侵害することにならないかという2点から検討することが分かります。

会議録116~118行目における「これらの検討を踏まえて、本件不選定決定の取消訴訟における違法事由の主張として、市長の選定に係る判断の内容に瑕疵があったと主張することができないか検討してください。」との記述から、第1の違法事由及び第2の違法事由については、「市長の選定に係る判断の内容に瑕疵があった」ことを基礎づけるものとして、実体上の瑕疵として論じることが分かります。

第3に、会議録118~119行目における「さらに、市長が委員会の推薦を覆して選定したこと自体に瑕疵があったと主張することも考えられます。」との記述から、「市長が委員会の推薦を覆して選定したこと自体」について、実体上の瑕疵に属する第1の違法事由及び第2の違法事由とは別の第3の違法事由として、手続上の瑕疵として論じることが分かります。

そして、会議録119~123行目における「その際には、行政庁である当時の運輸大臣の処分と諮問機関である運輸審議会の決定との関係について一般論を述べた判例(最高裁判所昭和50年5月29日第一小法廷判決・民集29巻5号663頁)がありますので、この判例を参考に、諮問機関の機能等を踏まえて本件不選定決定が違法であると主張することができないか、検討することにしましょう。」との記述から、第3の違法事由について、上記最高裁判を参考にして諮問機関の機能等を論証の理由付けとして言及して規範を定立した上で、市長が諮問委員会の推薦を覆したこと自体が違法であることを論じることが分かります。

このように、会議録の誘導を整理するだけで、違法事由の単位・個数と、違法事由ごとに何をどう論じるべきかが分かりますから、行政裁量や条文解釈による規範定立といった法律構成、判例・学説といったことはおまけにすぎません。

会議録の誘導を整理することにより違法事由の単位・個数と違法事由ごとの論述の観点を正確に把握することができるかどうかで、合否及び上位水準に入れるかどうかがほぼ決まります。

設問2で一番大事なことは、会議録の誘導を正確に整理することです。

こうしたことを、私の解説から学んで頂きたいと思います。

〇実体上の違法事由に関する法律構成

実体上の違法事由(第1及び第2の違法事由)について、行政裁量と条文解釈による規範定立のいずれの法律構成で論じるべきかが問題となります。これについても、係争行為に関する個別法の仕組みを含む問題文から判断します。

不選定決定・不選定決定の根拠規定である条例26条は、選定の実体的要件について、1項において、「市長は、前条第1項の規定による公募を行った場合は、…屋台営業候補者を選定するものとする。」と定めるだけであり、具体的に定めていません。これでは、処分の実体的要件について、条文解釈による規範定立をすることは極めて困難です。ここから、処分要件の定めの抽象性に着目して要件裁量を認めるという解答筋が窺われます。

しかも、会議録における第1の違法事由と第2の違法事由は、いずれも、市長の判断過程に着目したものです。ここから、実体的要件について要件裁量を認めた上で判断過程審査をすることにより第1の違法事由及び第2の違法事由について検討するという解答筋が強く窺われます。

したがって、選定の実体的要件について要件裁量を認めた上で判断過程審査をすることにより、第1の違法事由及び第2の違法事由について検討することになります。

第1の違法事由については、他人名義営業者Bの既得の既得の地位に要保護性が認められるのであれば選定・不選定の判断の過程においてBの既得の地位に配慮することが必要であり、仮に必要とされる配慮を欠いたのであれば考慮不尽による裁量権の逸脱濫用に当たるという理論構成を前提として、Bの主張「他人名義営業者の既得の地位に対する配慮を欠くから違法である」→A市の反論「他人名義営業者の既得の地位は違法営業に係るものであり要保護性がないからこれに配慮する必要はない」→Bの再反論「他人名義営業者の営業の中には要保護性があるものがあり、Bの営業にも要保護性が認められるから、Bの既得の地位に対する配慮を欠いたことは違法である」という流れで論じることになります。

第2の違法事由については、諮問委員会の推薦に合理性があるのであれば選定・不選定の判断の過程において諮問委員会の推薦の内容を参考にする必要があるから、市長が自己の公約を実現することを理由として諮問委員会の推薦を覆したことには、諮問委員会の推薦を参考にしなかったという点で考慮不尽が認められるとともに、自己の公約の実現による有権者の支持の獲得という考慮するべきでないことを考慮したとして他事考慮も認められることになるという理論構成を前提として、諮問委員会の推薦が合理的であったことを基礎づける主張を論じることになります。

その際、諮問委員会の推薦(申合せ)の合理性については、㋐他人名義営業者Bの営業実績を条例施行規則19条各号との関係で考慮することができるのか(他人名義営業者Bの営業実績は条例施行規則19条1号ないし4号のいずれかに関連するものか)と、㋑条例施行規則19条各号の審査において他人名義営業者Bの営業実績を考慮して加点することは、営業実績を有しない新規営業希望者の利益を不当に侵害することにならないかという2点から検討します。

〇手続上の違法事由に関する法律構成

第3の違法事由については、条例26条1項が市長が屋台営業候補者の選定・不選定を判断する際には諮問委員会に諮問することを要求しているという仕組みを前提として、「行政庁である当時の運輸大臣の処分と諮問機関である運輸審議会の決定との関係について一般論を述べた」最高裁判例(最判S50.5.29・百Ⅰ118)を参考にして諮問機関の機能等を論証の理由付けとして言及して規範を定立した上で、市長が諮問委員会の推薦を覆したこと自体が違法であることを論じます。

最高裁判例は、「法は、運輸大臣が運輸審議会の決定を尊重すべきことを要求するにとどまり、その決定が運輸大臣を拘束するものとはしていないから、運輸審議会は、ひつきよう、運輸大臣の諮問機関としての地位と権限を有するにすぎないものというべきであるが、しかしこのことは、運輸審議会の決定が全体としての免許の許否の決定過程において有する意義と重要性、したがつてまた、運輸審議会の審理手続のもつ意義と重要性を軽視すべき理由となるものではない。一般に、行政庁が行政処分をするにあたつて、諮問機関に諮問し、その決定を尊重して処分をしなければならない旨を法が定めているのは、処分行政庁が、諮問機関の決定(答申)を慎重に検討し、これに十分な考慮を払い、特段の合理的な理由のないかぎりこれに反する処分をしないように要求することにより、当該行政処分の客観的な適正妥当と公正を担保することを法が所期しているためであると考えられるから、かかる場合における諮問機関に対する諮問の経由は、極めて重大な意義を有するものというべく、したがつて、行政処分が諮問を経ないでなされた場合はもちろん、これを経た場合においても、当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどにより、その決定(答申)自体に法が右諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵があるときは、これを経てなされた処分も違法として取消をまぬがれないこととなるものと解するのが相当である。」と判示しています。

答案では、上記の最高裁判例を参考にして、Bの主張「市長が諮問委員会の推薦を覆したことは、諮問手続を要求している条例26条1項に反し違法である」→A市の反論「諮問委員会の推薦は処分行政庁である市長の判断を法的拘束するものではないから、市長が諮問委員会の推薦を覆したことは条例26条1項に反せず適法である」→Bの再反論「諮問機関の機能等→上記最高裁判例を参考にした規範定立→当てはめ→条例26条1項に違反し違法である」という流れで論じることになります。

なお、上記の最高裁判例を知らない又は記憶していないという場合であっても、法令が何のために処分行政庁が判断過程で諮問機関に諮問することを要求しているのかを自力で考えることにより、諮問手続の機能を導き出すことは可能です。不利益処分の理由の提示(行手法14条)の趣旨に関する知識も参考にすることで、「処分行政庁の判断を慎重ならしめることにより処分の客観的公正を担保する」くらいのことは、諮問手続の機能として導き出すことができます。

なので、上記の最高裁判例に関する知識があったかどうかよりも、他の知識も参考にすることで諮問手続の機能を導き出すことができるかという、基礎知識の応用可能性(定着度)と現場での頭の使い方に重点を置いた自己分析をして頂きたいと思います。

 以上が令和3年司法試験行政法の解答速報となります。

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