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令和3年司法試験解答速報-刑事訴訟法-

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講師作成の参考答案

解説

設問1 差押え①

差押え①は、「甲が、乙及び氏名不詳者と共謀の上、本件住居侵入強盗に及んだ」という被疑事実の捜査として、丙組若頭丁と印刷された丙組の幹部丁の名刺1枚(以下「本件名刺」とする)を差し押えたものです。

これは、暴力団O連合O組若頭補佐Xが暴力団であることを背景としてVを恐喝したという被疑事実の捜査として、本件恐喝被疑事件の背景事情や情状との関係で、O組の性格、Xとの関係及び事件の組織的背景などを解明するために必要な証拠として、賭博メモを差し押さえたことの適法性が問題となった最高裁判例(最判S53.11.18・百21)を参考にしたものです。

最高裁判例の事案では、(1)捜索差押許可状記載の「本件に関係のある、1.暴力団を標章する…メモ等」の具体的内容を解釈により明らかにした上で本件賭博メモがこれに該当することを肯定した上で、(2)別件差押えについても検討し、本件賭博メモがO連合名入りの腕章・ハッピ・組員名簿等という恐喝事件との関連性が強い他の証拠と一緒に差押えられていることに着目して、別件差押えに該当しないと判断しています。

差押え①についても、(1)捜索差押許可状記載の差押目的物該当性と(2)別件差押え該当性の2点が問題となります。

もっとも、(1)と(2)のいずれにおいても、本件名刺は本件住居侵入強盗の情状に関する証拠ではなく、丙組の組員が本件住居侵入強盗に共犯者として関与していることを示す証拠であるという、最高裁判例の事案との違いに注意する必要があります。

なお、差押え①に関する2つの論点は、いずれも去年の総まくり2021でAランクに位置づけた上で、当てはめの仕方についてまで紹介していたので、総まくり講座との相性が非常に良かったと思います(去年の総まくりテキストの該当はこちら)。

 

設問1 差押え②

〇出題の概要

差押え②は、USBメモリ2本について、その内容をその場で確認することなく差し押さえるものです。

これは、パソコン・フロッピーディスク等についてその内容をその場で確認することなく差し押さえたことの適法性が問題となった最高裁判例(最決H10.5.1・百22)を元ネタにした出題です。また、古江頼隆「事例演習刑事訴訟法」第2版[8]も非常に参考になります。

〇USBメモリ2本の差押えに共通する問題点

USBメモリ2本の差押えに共通することとして、電磁的記録媒体の内容をその場で確認することなく差し押さえることの適法性が問題となります。この論点は、問題文55~56行目における「USBメモリの中身を調べずに全部持っていくのですか。…この場で確認してください。」との乙の申出からも窺われます。

差押対象物は「証拠物…と思料するもの」に限られるため(222条1項・99条1項本文)、差押えに先立ち被疑事件と関連性があると判断できる電磁的記録媒体についてのみ、「証拠物…と思料するもの」として差し押さえることができます。だからこそ、電磁的記録媒体の内容を確認することなく差押えることについては、関連性を欠くのではないかという形で、その適法性が問題となるわけです。なお、問題の核心は、包括的差押えが認められるか否かではなく、その数を問わず、電磁的記録媒体につき、その内容を確認しないで差押えをすることが許されるかという点にあります(川出敏裕「判例講座Ⅰ」初版143頁)。

最高裁平成10年決定は、㋐「令状により差し押さえようとするパソコン、フロッピーディスク等の中に被疑事実に関する情報が記録されている蓋然性が認められる場合」において、㋑「そのような情報が実際に記録されているかをその場で確認していたのでは記録された情報を損壊される危険があるとき」ということを要件として、内容を確認することなしにパソコン・フロッピーディスク等を差し押さえることを適法であると判断しています。

最高裁平成10年決定の理解の仕方の一つとして、差押えに関する「正当な理由」(憲法35条1項)は規範的な要件であるから、「正当な理由」を基礎づける関連性の程度は令状執行の際の具体的状況によって変動し得るとする関連性変動説があります。

関連性変動説からは、(ア)その場で関連性を判断することの支障となる事情がある場合には、要求される関連性の程度が緩和され、(イ)電磁的記録媒体の中に被疑事実に関連する情報が記録されている蓋然性が認められれば、記録内容を確認することなくこれらを差し押さえることが許されると解する、と説明することができます(古江頼隆「事例演習刑事訴訟法」第2版116頁)。

最高裁平成10年決定が判示している㋑情報損壊の危険については、被押収者らが情報を瞬時に消去するソフトを開発しているとの事前情報があったという当該事案を前提とした例示にすぎないから、情報損壊の危険がない場合に差押えを認めることは判例の趣旨に抵触するものではないと理解されています。

本問では、こうした判例理論について丁寧に論じた上で、具体的事実を踏まえて各要件の充足性を検討することになります。

〇白色USBメモリの差押えについては、関連性の判断基準時が問題となる

白色USBメモリの差押えについては、事後的に、被疑事件に関する情報が記録されていないことが明らかになっていることから、その場で内容を確認することなく差し押えたという点とは別に、関連性の判断基準時が問題となります。

関連性の判断基準時を差押後と理解するのであれば、白色USBメモリの差押えは、関連性を欠くとして、違法になります。しかし、関連性の判断基準時は差押え時であると解されていますから、差押え時の事情から白色USBメモリに被疑事件に関する情報が記録されていると合理的に判断することができたのであれば、関連性が認められることになります。

差押えの関連性の判断基準時については、平成25年司法試験設問2でも出題されています。

論じ方としては、電磁的記録媒体の内容をその場で確認することなく差し押さえることの適法性の検討過程で(イ)の要件として論じる方法と、電磁的記録媒体の内容をその場で確認することなく差し押さえることの適法性とは別の論点として論じる方法とがあります。

 

設問2の1

〇問題の所在

ここでは、本件メモ1が伝聞証拠に当たるかどうかが問われています。平成27年司法試験設問2との関連性が非常に強いです。

本件メモ1が伝聞証拠に当たるかを判断するためには、本件メモの直接の立証事項という意味での要証事実を明らかにする必要があります(※私の解説・答案では、要証事実=主要事実ではなく、要証事実=直接の立証事項という理解に立っています)。

直接の立証事項という意味での要証事実とは、証拠から最終的な立証命題(争点である主要事実)の証明に至るまでの推認過程において、証拠から最も近い事実というイメージです。例えば、証拠A→間接事実B→間接事実C→主要事実Dという推認過程になるのであれば、証拠Aの要証事実は間接事実Bであり、間接事実Bを証明するために証拠Aにおける原供述者の供述内容の真実性が問題となるのであれば、証拠Aは伝聞証拠に当たります(例えば、証拠Aがメモである場合、間接事実Bが原供述者が知覚・記憶してメモに記載することで表現・叙述したものであるならば、メモは伝聞証拠に当たります)。

〇メモの存在・記載自体を要証事実とすることの可否

検察官Qは、「甲乙間において本件住居侵入強盗に関する共謀が存在することを立証するため」に本件メモ1の証拠調べ請求をしているので、本件メモ1によって最終的に立証しようとしている主要事実(最終的な立証命題)は甲乙間の共謀です。

まず、本件メモ1(証拠)→メモの存在・記載自体(間接事実)→甲乙間の共謀(主要事実)という推認過程を組むことができるかが問題となります。

このような推認過程を観念することができるだけでは足りず、このような推認過程が経験則に適った合理的なものであるといえる必要があります。不合理な推認過程を前提として非伝聞になるような要証事実を設定することは、伝聞法則の潜脱して許されないからです。つまり、要証事実を設定する際の前提となる推認過程を組む際には、証拠→事実という推認過程のうち不合理なものを禁止するという伝聞法則の趣旨が、事実→事実という推認過程にも拡張されているわけです(古江頼隆「事例演習刑事訴訟法」第2版341頁参照)。

本件メモ1(証拠)→メモの存在・記載(間接事実)→甲乙間の共謀(主要事実)という推認過程が合理的なものであるといえるためには、㋐本件メモが何者かによって本件住居侵入強盗に関する犯行計画メモとして作成されたものである事実(本件メモと本件住居侵入強盗との結びつき)と、㋑本件メモが甲乙間で作成・授受された事実(本件メモと甲乙との結びつき)が認められる必要があります。

㋐が認められるためには、本件住居侵入強盗に関する客観的状況と本件メモ1の記載内容とが偶然とはいえないほど細部にわたって一致していることが必要です。そうでないと、本件メモ1が本件住居侵入強盗とは別の事件に関する犯行計画メモとして作成された可能性が残るからです。㋐については、事例1おける本件住居侵入強盗に関する客観的状況とメモ1の記載内容を比較することにより肯定することができます。

㋑については、「本件メモ1が乙作成のものであること」については認められる一方で、「甲が乙から本件メモ1を受け取ったこと」については、客観的証拠がない上、甲の供述調書もないから、認定することができません。

したがって、㋑が認められないため、本件メモ1(証拠)→メモの存在・記載自体(間接事実)→甲乙間の共謀(主要事実)という推認過程を前提として要証事実をメモの存在・記載自体(間接事実)と捉えることで、本件メモ1を非伝聞であるとすることはできません。

〇メモ作成者乙の意思計画を要証事実とすることの可否

メモ作成者乙の意思計画を要証事実とする場合にも、本件メモ1は非伝聞となります。

心理状態の供述を供述者の供述当時の心理状態を要証事実として用いる場合、知覚・記憶の正確性は問題とならないし、問題となる表現・叙述の正確性は伝聞証拠に固有の問題ではないため、表現・叙述の過程における誤謬の危険よりも、当時の心理状態を述べた供述が供述当時の心理状態の証拠として最良のものであるという証拠価値を優先するべきだからです(「刑事訴訟法の争点」184頁[大澤裕])。

もっとも、甲乙間の共謀を立証する際に、乙の意思計画だけを立証しても意味がありませんから、甲が乙と同じ意思計画を共有していた事実まで認められて初めて、本件メモ1(証拠)→乙の意思計画(間接事実)→甲乙間の共謀(主要事実)という推認過程が合理的なものとして許容されます。

そして、乙の関与を認める旨の甲の供述調書がない上、甲が乙の公判における証人尋問において乙の関与について一切の証言を拒絶していることから、甲が乙と同じ意思計画を共有していた事実は認められません。

そうすると、本件メモ1(証拠)→乙の意思計画(間接事実)→甲乙間の共謀(主要事実)という推認過程を前提として要証事実を乙の意思計画(間接事実)と捉えることで、本件メモ1を非伝聞であるとすることはできません。

〇本件メモ1は伝聞証拠である

本件メモ1の要証事実は、乙が甲に対してメモ記載通りの犯行計画を指示した事実となります。この要証事実との関係では、乙の公判廷外供述の内容の真実性が問題となるため、本件メモ1は乙を原供述者とする伝聞証拠に当たります。

本件メモ2については、問題文99~100行目における「乙の公判の証拠調べ手続において、…Qが、…本件メモ2の証拠調べ請求をした」とあることから、乙の公判における証拠能力しか問われていないことが分かります。

本件メモ1については、本件メモ2ほどはっきりとした指示はありませんが、「不同意ないし取調べに異議あり。」との証拠意見を述べているのが乙の弁護人だけであることから、本件メモ1についても乙の公判における証拠能力しか問われていないと思われます。

そうすると、本件メモ1については、乙の公判における証拠として322条1項が適用されるだけであり、共犯者の供述に関する伝聞例外の規定の適用態様は問題となりません(甲の公判で証拠として用いる場合における321条1項3号の要件充足性、ひいては証拠能力までは問われていません)。

 

設問2の2

〇本件メモ2が伝聞証拠に当たること

本件メモ2についても、甲乙間の共謀を立証するための証拠として取調べ請求がされていますから、その最終的な立証命題は甲乙間の共謀です。

まず、本件メモ2(証拠)→メモの存在・記載(間接事実)→甲乙間の共謀(主要事実)という推認過程については、上記㋐を満たす一方で、他の証拠によって乙の本件メモ2との結びつきを認定することができないため、上記㋑を欠くとの理由から、合理的なものであるといえません。したがって、本件メモ2の要証事実をメモの存在・記載自体(間接事実)であると捉えることによって本件メモ2が非伝聞であるとすることはできません。

次に、本件メモ2(証拠)→甲の意思計画(間接事実)→甲乙間の共謀(主要事実)という推認過程については、他の証拠によって甲と乙が同じ意思計画を共有していた事実を認めることができないことから、合理的なものであるとはいえません。したがって、本件メモ2の要証事実をメモ作成時における甲の意思計画と捉えることによって本件メモ2が非伝聞であるとすることもできません。

そうすると、本件メモ2の要証事実は、本件メモ1と同様、乙が甲に対してメモ記載通りの犯行計画を指示した事実となります。この要証事実との関係では、甲の公判廷外供述の内容の真実性が問題となるため、本件メモ2は甲を原供述者とする伝聞証拠に当たります。

〇伝聞例外

前記の通り、本件メモ2についても、乙の公判における証拠能力しか問われていません。そうすると、本件メモ2については、「被告人以外の者が作成した供述書」として321条1項3号が適用されることになります。

同条項3号の要件のうち、供述書に関するものは、供述不能、不可欠性及び絶対的特信情況の3つです。

一番大きな配点があるのは、供述不能です。3号の原因が例示列挙であることと、事実上の証言拒絶が供述不能を満たす場合があることについて論証した上で、甲の事実上の証言拒絶が供述不能に至っているのかについて、問題文の事実に即して丁寧に論じることになります。ここも、平成27年司法試験と非常に似ています。

不可欠性については、「本件メモ1及びその記載と同一内容のデータのいずれもが発見され」なかったという状況設定を前提として、簡潔に論じます。

絶対的特信情況については、甲の証人尋問における態度等を考慮していいのかが難しいです。私の答案は、絶対的特信情況と相対的特信情況の区別ができていないと判断される危険を回避するために、敢えて、絶対的特信情況のところでは甲の証人尋問における態度等について言及していません。そして、本来であれば、知覚・記憶・表現・叙述の正確性を担保する外部的付随事情そのもの→それを推認する一資料としての供述内容(本問では、メモ記載内容と犯行態様の一致)という流れで論じるのですが、紙面が足りないこともあり、私の答案では、いきなりメモ記載内容と犯行態様の一致について言及しています。

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