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法科大学院と予備試験はどちらが良い?メリット・デメリットと両立する選択肢を解説

司法試験を受けるにあたっては法科大学院を修了するか、もしくは予備試験に合格する必要があります。社会人で働きながら受験を目指す場合は予備試験が最も現実的な選択肢ですが、法科大学院への通学が検討できる場合、法科大学院を修了して司法試験を受けるか予備試験合格に向けて対策をするか迷われる方も多いと思います。

そこで本記事では、法科大学院ルート・予備試験ルートそれぞれのメリット・デメリットを比較した上で両立させるような選択肢についても制度変更も踏まえて解説していきます。

法科大学院のメリット・デメリット

法科大学院のメリットとデメリットについて解説します。

法科大学院のメリット

  1. 修了すれば自動的に司法試験の受験資格が得られる
  2. 学習のカリキュラムが整っている
  3. 学生・講師とのつながりができる

法科大学院を修了することで、自動的に司法試験の受験資格が獲得できます。この点は合格率4%前後の非常に狭き門である予備試験と比較し、ハードルが低いと言えるでしょう。

もちろん修了するまでには相当の学習を行う必要はありますが、専門家が司法試験合格やその先に法曹界で活躍することを見据えて作成したカリキュラムを消化すること自体が試験対策となるのも効率的です。

また、同じく法曹の道を志す学生や専門分野で活躍する講師陣とのつながりが自然と作れるのも、モチベーション管理や実務に携わることになった際のアドバンテージとして有利に働きます。

法科大学院のデメリット

  1. 学費が高額
  2. カリキュラムの負担
  3. 受験資格を得るまでに期間がかかる
  4. 予備試験ルートほど合格率が高くない

法科大学院は入学金10~30万円、年間の授業料が60~100万円と、国立の既修コース(2年間)であっても200万円程度、私立の未修コース(3年間)であれば高いところでは450万円程度の学費が発生します。さらに自主学習の教材や予備校に通う場合はさらに金額がかかり、金銭的な負担は決して低いものではありません

また、カリキュラムは効率的に設計されているものの、カリキュラム消化のために時間が割かれるため、独自に苦手科目の重点強化を行いたい際に負担が大きい可能性があります。

出願にあたり大学卒、もしくは卒業見込みであることが原則必須な上、所定のカリキュラムを修了した上で翌年度から司法試験を受験するため受験資格を得るまでに時間がかかる点も、早期受験を志す場合はデメリットとなりえます。

最後に、法科大学院修了に伴い受験資格を得た受験生の司法試験合格率は予備試験ルートで資格を得た受験生と比べ低いのが現実です(予備試験ルートが80%を超えるのに対し、法科大学院ルートは既修者コースの法学部卒で40%程度、未修者コースの場合は15%程度)。

制度改革により、法科大学院在学中の受験も

2023(令和5)年度の制度改革により、所定の条件を満たすことで法科大学院修了見込みの段階から司法試験受験が可能になります。そのため、学習の進度によっては従来法科大学院ルートで必ずかかっていた年数を1年間短縮することが可能になりました。

現時点では実際にどの程度の学生が制度を利用できるのか、制度を利用することで試験に合格し「飛び級」で司法試験に合格する学生がどの程度でるのかは未知数ですが、法科大学院という選択肢のハードルが下がる可能性も考えられます。

当校でも制度改革について情報がわかりしだい、更新を行います。

 

予備試験のメリット・デメリット

次に、法科大学院との比較という観点から予備試験のメリットとデメリットを解説します。

予備試験のメリット

  1. 費用が抑えられる
  2. 自分のペースでの学習計画が立てられる
  3. 予備試験対策が司法試験対策に直結する
  4. 就職活動で有利

まず、金銭的なメリットとして法科大学院に通うコストがかからないことが挙げられます。完全に独学で進めるのであれば数万円程度から、予備校を利用する場合であっても数十万円程度には抑えることが可能です。

また、予備試験は受験の制限等が一切ないため、早期合格を目指す場合予備試験ルートであれば大学卒業見込みに達する前から司法試験の受験ができます。逆に社会人が働きながら数年の期間をかけて目指す場合にも、確保できる学習時間から逆算した無理のないペースでの学習も可能です。

予備試験合格者は多くの年度で80%以上、高い年は90%以上が司法試験に合格しています。予備試験の試験内容が司法試験対策に直結しており、予備試験に合格できた段階で司法試験に合格するのに十分な実力が養われていると言えるでしょう。

最後に、上記のように予備試験合格者は司法試験受験者の中でも優秀であり、司法試験の合格見込みも高いことから大手法律事務所を含め早期の囲い込みが行われることもあるため、弁護士志望での就職活動に有利とも言われています。

予備試験のデメリット

  1. 難易度が高い
  2. 自己管理が求められる

予備試験は合格率4%程度と文系の資格の中でも最高峰といわれる試験。その難易度は合格率2~3%程度であった旧司法試験に近いレベルであり、合格者が新司法試験に高確率で合格できるのは必然といえるでしょう。司法試験受験にあたり、その資格を得る段階で司法試験よりもレベルの高い試験に合格する必要がある点は、修了すれば資格が得られる法科大学院ルートと比較し、求められる水準が高いことは事実です。

また、法科大学院のように体系的に確立されたカリキュラムがないため、自主学習のスケジュールを組む必要があります。また、学生や講師との関係をつくるにあたっても積極的に動く必要があります。

予備試験のデメリットの一部は予備校に通うなどの方法で解消することも可能ですが、完全に独学にするのか、予備校を活用するのか、活用するのであればオンラインなのか通学なのか、と自分での意思決定が必要です。

法科大学院に通いながら予備試験も受験する選択肢も

法科大学院か予備試験かは必ずしもどちらかを選択しなければならないわけではなく、法科大学院に通いながら予備試験を受験する選択も可能です。

つまり、在学中に予備試験を受験し合格すれば最短ルートで司法試験を受験する、予備試験に合格できなれば法科大学院修了に伴い得られる受験資格で司法試験を受験する、といった選択が取りえます。予備試験への合格率が高くなくとも試験を受けることで司法試験合格に必要な実力とのギャップが可視化できるため、力試しに受けるような選択も可能です。

 

まとめ

司法試験の受験資格を得るための選択肢として存在する法科大学院ルートと予備試験ルートは、それぞれにメリット・デメリットがあるため一概にどちらが良いとは言えません。

  • 法科大学院はカリキュラムがしっかりしている一方でコストや期間面での負担がある
  • 予備試験は自主性が求められるが費用が節約でき、個々の状況に合わせた計画が可能
  • 法科大学院ルートは修了すれば受験資格が得られるが、予備試験ルートほど合格率は高くない
  • 予備試験に合格すると司法試験も高い確率で合格できるが、予備試験に合格する難易度が非常に高い

両立させるような選択肢も視野にいれつつ、両者を比較しご自身に最適な方針で司法試験合格までの目標設定を行ってみてください。