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ロースクールの未修者コースに進学するべきか?

2025年06月29日

ロースクールの未修者コースに進学するべきか?

結論から申し上げますと、未修者コースに進学するのであれば、1年間の学習期間を設けて既修者コースに進学するべきです。

未修者コースに進学したとしても、進級や司法試験合格の保証がないからです。

今は、私が学生だった頃とは異なり、ロースクールの留年率は非常に高く、文部科学省が公表している令和5年度における未修1年次の留年率は全体で38%です。

都内の上位校であっても、未修1年次の留年率は決して低くありません。

東京大学   32.4%
一橋大学   10.0%
慶應義塾大学 37.5%
早稲田大学    3.8% 
中央大学   36.4%

出典:令和5年度留年率

そして、何よりも問題なのが、未修者の司法試験の合格率の低さです。

令和6年司法試験の合格率は、次の通りです。

全体  42.1%
既修者 42.8%
未修者 16.7%

しかも、この未修者受験者の母集団は、あくまでも司法試験の受験資格を得ることができた人だけです。上記の通り、未修者の留年率は非常に高いとともに、留年を契機として退学する人も少なくありませんから、未修者コースに進学してストレートで司法試験に合格する人は、ごく僅かであり、10%もいません。

例えば、基礎固めが出来ていない状態で未修者コースに進学し、1度留年し、司法試験でも浪人したとします。それぐらいなら、1年の学習期間を設けて、上位の既修者コースに入った方がいいです。そのほうが遥かに確実なやり方だといえます。

都内の私立のロースクールであれば、慶應・中央・早稲田です。特に、慶應の既修在学中受験者の合格率は78.8%と圧倒的に高いので、慶應の既修者コースに進学すれば司法試験合格はもう目前であるといっても過言ではありません。

慶應義塾大学 78.8%(98人/126人)
早稲田大学  68.1%(79人/116人)
中央大学   64.8%(46人/71人)

何のためにロースクールに進学するのか?

進級して司法試験に合格するためです。

そうであれば、変に焦ることなく、1年の学習期間を設けて、予備校を使ってしっかりと基礎固めをして、上位校の既修者コースに進学するべきです。

未修者コースに進学しても、最初の1年間でちゃんと基礎固めができるのではないかと思う人もいるかもしれません。

しかし、それが出来ていないから、未修者の合格率が16%台にとどまっているわけです。

未修者と既修者の本質的な違いは、能力的なことではありません。法律学習における基礎固めを終えているか否かです。

法律学習で一番大事なことは何か?

司法試験の過去問でも、ロースクールにおける高度な授業でもありません。

基礎講座レベルの一番最初の入り口レベルの勉強が最も重要です。

基礎固めができていないと、その後に発展的な勉強をしても成長しません。ザルに水を注いでるのと同じです。土台がしっかりとしてないからです。

仮に予備校を使わないのであれば、科目ごとに薄めの基本書を1、2冊使って、体系的な勉強をやってください。なお且つ、記憶もちゃんとやりましょう。理解だけではダメです。

例えば、慶應の既修者がどのレベルかというと、ロースクール入試の時点で予備校の基礎講座レベルのことは当然に身についていますし、人によっては加藤ゼミナールの中上級者向けのインプット講座である総まくり講座の3分の1くらいは消化できています。

このレベルの学生が、ロースクール進学までの約半年間で、司法試験過去問を数年分やったり、手薄になっていた科目を補強するなど、司法試験対策としての勉強をさらに進めてくるわけです。

慶應の既修1年生は、それくらいレベルが高いです。

なので、仮に未修者コースの1年間で予備校の基礎講座レベルのことを終えても不十分です。未修2年次に合流する既修1年生は、予備校の基礎講座レベル+αの状態でロースクールに進学するからです。

仮に未修者コースに進学するのであれば、ロースクールに入学するまでの間に、予備校の基礎講座レベルのことは終えておきましょう。既にロースクールの未修者コースに在学している人は、直ぐに予備校を利用するなどして、基礎講座レベルのことを完成させるとともに、論文演習も進めましょう。

繰り返しになりますが、既修者と未修者の本質的違いは、法律学習の入り口部分、基礎講座レベルのことの習得度です。ここでもう圧倒的な差がついます。なので、そこを埋めていかなければいけません。ロースクールでアカデミックなことを勉強するだとか、司法試験過去問をやるだとか、そういう次元のことではありません。

距離の埋め方を間違えないようにしましょう。難しいことで距離を埋めるのではなく、基礎固めレベルのことでの差を埋める必要があります。

逆に、そこを埋めることができれば、既修者と対等な立場になれます。既修者コースの人たちと。

未修者コースへの進学を予定している人、既に未修者コースに在籍している人には、今回の記事を踏まえて、司法試験対策としての勉強をしっかりとやり、司法試験に合格して、法曹になる夢を実現していただきたいと思います。


<ロースクールの未修者コースに進学するべきか?>

 

執筆者

加藤 喬

加藤ゼミナール代表・弁護士

青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院 修了
総合39位・労働法1位で司法試験合格
基本7科目・労働法・実務基礎科目の9科目を担当