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今年6月24日、日本経済新聞において、法務省が2026年の司法試験から受験方法を筆記からパソコン利用に変更する方針である旨の記事が発表されましたが、本日、yahoo!ニュースをはじめとする各種メディアにおいて、この点についてより詳細な情報が発表されました。
2023年10月7日付のyahoo!ニュースの記事はこちらからご覧いただけます。
「司法試験、26年からデジタル化 筆記からパソコン方式へ 受験者・採点者の負担軽減・法務省」
各種メディアの記事からすると、2026年の司法試験と予備試験から受験方法がCBT方式に変更される可能性が非常に高いといえます。
論文試験が筆記からCBT方式(コンピュータを利用して実施する試験方式)に切り替わることに伴い、次の5つの点に留意する必要があると考えます。
筆記に比べて、タイピングの方が受験生間で速度の違いが生じやすいです。
タイピングが苦手な人と得意な人とでは、速度が数倍違うと思います。
こうした差をできるだけ埋めるために、タイピングが苦手な人はタイピング講座等でちゃんと訓練をする必要があります。
どのみち実務でも使いますし、タイピングの速度は仕事の速度に直結しますから、合格後も見据えた投資という意味で、ちゃんと訓練しておきましょう。
筆記に比べて、タイピングの方が、脳内処理速度が答案作成の速度に反映されやすいので、受験者間において脳内処理速度による差が開きやすくなります。
だからこそ、元々の脳内処理速度が遅い人は、司法試験における問題処理の速度を高めるために、処理手順も含めて記憶するべきことはしっかり記憶して考える時間を極力減らす工夫をする必要です。
筆記からパソコン利用に切り替わることに伴い、問題の傾向がこれまで以上に記憶よりも理解を重視するものに変わる可能性もあります。これに伴い、問題の形式も変わる可能性があります。
また、時間内に処理できる情報量が増えることに伴い、問題文のボリュームが増える可能性もあります。
こうした変化に伴い、受験生の試験対策の在り方、さらには予備校の講義・教材のあり方も変わるかもしれません。
タイピングは早い人は本当に早いですから、CBT方式を導入して枚数制限や字数制限を設けない場合、タイピング速度の速い受験生による物量戦法型の答案が一定数出てきて、質が低いのに配点項目をそれなりに拾っているから合格水準を満たしてしまいという事態が生じかねません。
法務省がこうしたタイプの受験生を合格させたいと思うわけがありませんから、物量戦法では合格できないようにするための対策を講じる可能性があります。
1つ目は、問題又は設問ごとに枚数制限や字数制限を設定するという方法です。もともと、司法研修所の二回試験でも民事裁判など一部の科目では設問ごとに枚数制限が設定されていますし、予備試験の民事実務基礎科目における準備書面問題でも枚数制限(答案用紙1頁程度)があります。
2つ目は、採点方式を変更して減点方式が導入される可能性です。現行の論文試験では、加点方式が原則とされており、論理矛盾も含めて間違ったことを書いても加点されないだけであり、それを超えて積極的に減点されるという事態は極めて稀です。しかし、CBT方式導入後は、物量戦法対策の一環として、加点方式と並行して減点方式も導入される可能性があります。
2026年以降の受験を予定されている方は、答案練習の際にパソコンを利用することになりますが、その際、単語登録機能を使わない答案練習もしておきましょう。
CBT方式の具体的詳細が発表されていないので、断定することはできませんが、CBT方式で答案を作成する場合、単語登録機能を使用できない可能性が高いです。試験開始前に各自で単語登録をする時間が設けられる可能性もゼロではありませんが、不正防止の観点からも、あまり現実的ではありません。
仮に単語登録機能を使用できないと、単語登録機能を頻繁に使用している人にとっては、文字の入力方法がだいぶ変わってきますから、この点に注意する必要があります。
また、予測変換もうまく機能しないため、例えば「さいけん→再建」「さがい→佐賀井」などのように、変更候補の1番目に普段使用している正しい法律用語が出てこない可能性もありますから、この意味においても、普段利用しているパソコンによる答案作成に比べて文章入力時の負担が増えると考えられます。
さらに、筆記に比べてパソコン入力では誤字脱字が発生しやすいので、答案作成後に誤字脱字をチェックする時間を設ける必要もあります。
以上が、司法試験・予備試験におけるCBT方式導入に関する私の考えです。
新たに情報が発表されましたら、改めて皆様に共有させて頂きます。
加藤ゼミナール代表 弁護士・加藤喬