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法科大学院の既修者コースと未修者コースの違いは?募集者・入試の差異や合格率を比較

法科大学院には「既修者コース」「未修者コース」の2つのコースがあります。双方のコースは募集している人材の層が異なり、伴ってカリキュラムや入試内容にも差異があります。

本記事ではそれぞれのコースについて、違いを解説した上で実際の司法試験の合格率についても比較します。

ご自身の受験資格の区分を確認したい方、どちらのコースに出願するか迷っている方はぜひご一読ください。

 

既修者コースと未修者コースの大きな違いを解説

法科大学院制度は2004(平成16)年度に開始。従来のように元々法曹界への志望度の高い層だけでなく、別の分野に注力していた人材も幅広く集め、質の高い法曹人材を養成することが制度の目的とされています。

既修者コースとは

既修者コースは既に一定以上のレベルの法学へ知見のある学生の教育を行うコースです。すでに基礎部分は完成していることを前提としたカリキュラムが組まれ、2年間で修了できるよう設計されています。

受験資格は大学の法学部を卒業している(もしくはそれに相当するレベルである)ことが求められ、入学試験においても重視されるのは法律科目。単に法学部を卒業していれば合格できるといったものではなく、学部で求められる法学を高い水準で理解していることが求められます。

未修者コースとは

未修者コースは法学に関する知識がない状態から修了までに司法試験に合格できる水準の学力を身に着けることを目指し設置されているコースです。法律に関しては1からの教育を行うカリキュラムが組まれるため、修了までの期間は3年間で設計されています。

受験資格は法学部であるかを問わず大卒以上、もしくは大学卒業見込みであること。該当しない場合は何らかの認定試験に合格することで受験資格を得られる場合もあります(法科大学院により異なります)。法学の知識がないことを前提にカリキュラムが組まれるため、入学試験においては法律科目ではなく、小論文や面接試験などでの論理的思考能力・文章構成能力・コミュニケーション能力などが重視されます。

なお、法学部卒が未修コースを出願することは可能ですが、法科大学院によっては既修コースとの併願ができない場合もあるため、いずれのコースで出願するか迷っている場合は注意が必要です。

法学部卒の未修者コース選択についてはこちらの記事をご参照ください。

制度改革により1年の「飛び級」が可能に

従来の制度設計では司法試験の受験資格を得られるのは法科大学院を修了した次の年。したがって法科大学院に入学してから司法試験に合格するまで、最短で一発合格した場合でも既修コースで3年、未修コースの場合は4年を要していました。

2023(令和5)年度の制度改革により、所定の条件を満たした場合法科大学院在学中、卒業見込みの年に司法試験の受験が可能となります。そのため、既修コースで2年、未修コースで3年と司法試験合格までの最短期間が1年間短縮されます。

制度改革についてはこちらの記事で詳しく考察を加えています。

既修・未修  / 法学部・非法学部の合格者数・合格率を比較

法務省が毎年発表している司法試験に関する受験情報には、法科大学院修了により受験資格を得た受験者の中で既修・未修、法学部卒・非法学部卒それぞれの受験者数、合格者数を公表しています。

3年分の数字を比較した表が以下です。

 

令和4年度試験
区分 受験者数 合格者数 合格率
既修・法学部卒 1,605 732 45.6%
既修・非法学部卒 169 58 34.3%
未修・法学部卒 808 146 18.1%
未修・非法学部卒 347 72 20.7%

 

令和3年度試験
区分 受験者数 合格者数 合格率
既修・法学部卒 1,762 763 43.3%
既修・非法学部卒 189 66 35%
未修・法学部卒 972 152 15.6%
未修・非法学部卒 398 66 16.5%

 

令和2年度試験
区分 受験者数 合格者数 合格率
既修・法学部卒 1,855 769 41.5%
既修・非法学部卒 202 59 29.2%
未修・法学部卒 1,140 186 16.3%
未修・非法学部卒 469 58 12.3%

 

年度により差異はありますが、法学部卒の既修者は40%を超える高い合格率であることがわかります。

既修者の非法学部は30~35%前後。そもそもの母数が少ないのは非法学部が既修者コースに入学するハードルの高さが理由であることが推測できますが、法学部卒の既修者とは合格率で一定の差がありました。一方で、未修者コースを選択した法学部卒よりも高い水準を維持しており、既修者コース入学者の入学時点での学力が一定のアドバンテージになっていることがうかがえます。

未修者コースにおける法学部卒・非法学部卒の合格率は年度により差がありますが、未修コースであっても法学部卒の占める割合が多いことも読み取れます。

総じて既修者コース選択者の合格率が高いことがわかる一方で、未修者コースからも着実に合格者は輩出されており、入学後カリキュラムをしっかりと消化していれば未修者コースから出の合格も可能であることがわかります。

 

まとめ

法科大学院には既修コースと未修コースがあり、カリキュラム内容や募集する層などの差異があります。

既修コース・未修コースの比較
既修コース 未修コース
期間 2年 3年
募集する学生 原則法学部卒者 学部問わず大卒者
卒業見込者
入試内容 法学中心 小論文・面接中心

入試時点で既に高い法学の知識を有している既修コースからの合格率が高いですが、初学者からの未修コースでも十分に合格は可能です。

現在のレベルや受験戦略に合った法科大学院・コースを選択し、学習を重ねてみてください。