予備試験過去問ランキングを令和7予備試験向けに更新しました。また、過去14年分の出題事項一覧も公開しています。
ランキングも出題事項一覧も、加藤ゼミナール代表の加藤喬講師が作成しております。
こちらの動画では、予備試験過去問ランキングと過去の出題事項一覧を使って、予備試験の傾向と対策について徹底解説しています。
予備試験過去問をやる意味には、3つあります。
①「自分と本試験の距離及び最新の出題傾向(難易・範囲・角度・形式)を把握する」 ⇒ 「自分が目指すべき理想の答案像を把握する」 ⇒ 「自分が目指すべき理想の答案像を書くために必要な勉強内容を把握する」
②分野・論点単位での再度の出題可能性に備える(分野論点単位での書き方の習得も含む)、科目単位での書き方を身につける
③問題文から検討事項を抽出するコツを掴む(本試験特有の問題文の読み方に慣れる)、現場思考問題・分からない問題に対処するための読解・思考・書き方のコツを掴む、文章力を鍛える、情報処理に慣れる、途中答案対策等
①は、今後の勉強の方向性を明らかにする(又は修正する)ためのものです。まず初めに、①のために、令和5年・6年の予備試験過去問をやります。
①を終えたら、②のために、年度が古い順に、予備試験過去問をやります。
③は、①・②の際の答案練習を通じて徐々に鍛えていくものです。
下記の過去問ランキングは、②に重点を置きつつ、①及び③も適切に考慮して作成しています。
なお、予備試験論文の合格水準は高いですし、予備試験論文過去問1問あたりの演習・分析の負担はさほど大きくないので、原則として、全問やるべきです。その上で、Aランクは少なくとも2周以上、Bランクは少なくとも1周以上、Cランクは軽く答案構成を1周といった感じで、過去問ごとの重要度に応じたメリハリ付けをするのが望ましいです。
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憲 法
憲法では、まずは、違憲審査の基本的な枠組み(保障→制約→違憲審査基準の定立→目的手段審査による当てはめ)が妥当する問題における答案の書き方(=違憲審査の基本的な枠組みを正しく使いこなす力)を身に付けることが重要であり、そのために特に有益なのが令和2年・令和3年の2問です。
また、憲法では、人権選択から目的手段審査による当てはめに至るまで、何についてどう論じるべきかについて問題文のヒントで誘導される傾向が強いので、こうした誘導に従って何をどう論じるべきかを判断できる ” 問題文の読み方 ” を身に付けることも非常に重要です。こうした ” 問題文 ” の読み方を身に付ける上でも令和2年・令和3年の2問は大変有益です。
他方で、近年の予備試験の憲法では、特定の判例知識を正面から出題する問題も多く、いわゆる“人権処理パターンと表面的な受験技術だけでは受からせない”という試験委員の強い意思を献じます。
例えば、令和1年(私立中学校における信仰を理由とする水泳授業の免除の可否)及び令和4年(私鉄労働者の争議行為の禁止等)は、違憲審査の基本的な枠組みによって論じることができますが、参考判例(エホバの証人剣道実技受講拒否事件、全農林警職法事件・都教組事件等)に関する知識がなければ問題の切り口が分からず、答案を書くことができません。
また、令和5年(フリージャーナリストによる取材源についての証言拒絶)及び令和6年(町内会による祭事挙行費の支出及び徴収)は、違憲審査の基本的な枠組みが妥当しないため、参考判例(NHK記者証言拒絶事件、三菱樹脂事件・南九州税理士会事件等)に関する正確な知識がなければ、判断枠組レベルのことで間違えることになります。
このような近年の出題傾向を踏まえると、特定の判例知識を正面から問う出題にも対応できるように、判例知識を身に付けるとともに、判例知識を答案で使うことも訓練する必要性が高いです。後者の訓練のために有益な問題が、令和1年、令和4年、令和5年及び令和6年です。
加えて、平等権(平成23年)、職業の自由(平成26年)、消極的表現の自由(平成28年)、財産権規制(平成29年)のように、分野・論点単位での過去問からの再度の出題可能性にも備える必要もあります。
こうした複数の観点から、ランク付けをしています。
なお、統治メインの問題は全体的に重要度が下がります。
Aランク | H23 H26 H28 H29 R1 R2 R3 R6 |
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Bランク | H25 H28 R1 R4 R5 |
Cランク | H24 H27 H30 |
行政法
行政法では、出題分野が狭い分、過去問から再度出題される可能性が高いので、ランク付けによる重要度に応じて濃淡をつけながらも、なるべくCランク過去問も含めて全問やったほういいです。
その上で、分野ごとの重要度について言及しますが、予備試験の行政法では、司法試験と同様、行政裁量・処分性・原告適格という三大頻出分野からの出題が多いです。したがって、まずは過去問を通じて三大頻出分野における答案の書き方をマスターする必要があります。
他方で、予備試験では、司法試験に比べて、出題範囲の偏りがあまりなく、三大頻出分野以外からも出題される可能性が高いので、過去問で出題された分野・論点は勿論のこと、過去問で出題されていない分野・論点も含めて対策をしておく必要があります。
そして、行政法では、民法・商法・刑法などと異なり、インプットとアウトプットとの間のギャップが大きく、知識があるだけでは評価される答案を書くことは難しい分野・論点が多いため、なるべく手広く過去問演習をするのが望ましいです。
なお、3年連続で処分性が出題されていないことから、令和7年予備試験では処分性が正面から問われる可能性が高いです。
Aランク | H23 H25 H27 H30 R5 |
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Bランク | H24 H28 R1 R3 R4 R6 |
Cランク | H26 H29 R2 |
民 法
予備試験の民法では、典型的な分野・論点が典型事例を捻った事例を通じて出題されることが多いので、多くの過去問の演習を通じて、問題の捻りに対応する力を身に付けることが大事であると考えます。過去問から再度出題されることもありますが、それよりも、問題の捻りに対応する力を身に付けることを意識しましょう。
また、民法では、論点よりも、法律要件を事実と条文の番号・文言を結び付けながら1つひとつ認定する過程が重視されることが多いです。 債権者代位権、詐害行為取消権、契約不適合責任、不当利得、不法行為責任、相続による権利承継などでは、特にそうです。こうした出題では、文章力、条文操作を含め真の実力が問われますから、要件認定の作法を身に付けることも意識しましょう。
さらに、例えば、「Aは、錯誤による意思表示の取消し(95条1項)により甲土地の売買契約が遡及的に無効になる(121条)と主張して、これにより発生する原状回復請求権(121条の2第1項)を行使して代金1000万円の返還を請求する。」というように、答案冒頭における訴訟物と主張の骨子の指摘でも差が付きます。
このように、民法では、分野・論点単位での再度の出題可能性に備えることよりも、問題の捻りに対応する” 応用力 “や、要件認定の作法や答案冒頭における書き出しといった ” 答案の書き方 “ を身に付けることに重点を置く必要があります。
加えて、予備試験の民法では、条文の類推適用や判例理論の応用を問う出題も多いため、過去問演習を通じてこうした応用問題の対処法(思考と論述のコツ)を確立ことも重要です。
民法は、出題範囲が非常に広く、分野・論点単位での再度の出題可能性に重点を置いて勉強すると確実に知識と演習の穴が生じるので、分野・論点ごとの重要度に応じて濃淡を付けながらも満遍なく勉強する必要があります。
こうしたことを踏まえ、民法では、分野・論点単位での出題可能性だけでなく、民法全般に共通する書き方や対処法を確立する上での有益性も考慮してランク付けをしています。
Aランク | H26 H28 R2 R4 |
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Bランク | H23 H25 H27 H29 H30 R1 R5 R6 |
Cランク | H24 R3 |
商 法
商法では、過去問の蓄積に伴い、徐々に過去問から再度出題される可能性が高まっているので、再度の出題可能性に備えるために過去問をやるという意味合いが強いです。
特殊な問題分析や書き方が要求されない分、1問当たりの分析はさほど重くないことを踏まえても、なるべく全問やるのが望ましいです。
なお、予備試験の商法では法改正が正面から出題される傾向にあるので、詐害的会社分割における残存債権者の直接請求権(759条の4項、764条4項)や株式交付(774条の2以下)からの出題にも備えておくべきです。
Aランク | H23 H24 H25 H26 H27 H28 H30 |
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Bランク | H29 R1 R2 R5 R6 |
Cランク | R3 R4 |
民事訴訟法
民事訴訟法では、特殊な答案の書き方が求められる分野・論点は少ないので、主として、再度の出題可能性に備えることと、捻りの効いた問題に対応する力を身に付けるために過去問をやることになります。
Aランク | H25 H26 H28 H30 R4 |
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Bランク | H23 H24 H27 H29 R1 R2 R3 |
Cランク | R5 R6 |
刑 法
刑法では、主として、再度の出題可能性に備えるために過去問をやることになります。また、刑法全般に共通する答案の書き方を身に付けることも大事です。
特殊な問題分析や書き方が要求されない分、1問当たりの分析はさほど重くないことを踏まえても、なるべく全問やるのが望ましいです。
なお、予備試験の刑法では、放火罪における抽象的事実の錯誤(平成23年、平成28年)、間接正犯(平成27年、平成29年、令和4年)、不能犯と実行の着手の組合せ問題(平成25年、平成29年)、遅すぎた構成要件の実現(令和1年、令和5年)が頻出なので、必ず確認しておきましょう。
Aランク | H23 H24 H25 H26 H28 H29 R1 |
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Bランク | H30 R2 R4 R5 R6 |
Cランク | H27 R3 |
刑事訴訟法
刑事訴訟法では、行政法と同様、出題分野が狭い分、過去問から再度出題される可能性が高いので、ランク付けによる重要度に応じて濃淡をつけながらも、なるべくCランク過去問も含めて全問やるべきです。
司法試験と異なり、「強制処分→任意処分の限界」及び「伝聞法則」の出題頻度がさほど高くない(伝聞法則については、刑事実務基礎科目でも出題できるからだと思われる。)、逮捕・勾留からの出題が圧倒的に多いです(平成28年、平成29年、令和1年、令和3年、令和5年)。
なお、予備試験の刑事訴訟法では、検察官の釈明内容と異なる事実認定(平成25年、平成29年)という問題意識が頻出であり、令和4年司法試験でも出題されていますから、再度の出題可能性に備えて必ずおさえておきましょう。
Aランク | H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30 |
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Bランク | R1 R3 R4 |
Cランク | R2 R5 R6 |
法律実務基礎科目
法律実務基礎科目では、過去問だけでほとんどの出題範囲を網羅できること、過去問以外の演習問題がないこと及び過去問中心の勉強をすることが望ましいことの3点から、敢えてランクは設けておりません。
直近2~3年分の過去問を張って近年の試験傾向を把握した上で、サンプル問題まで遡り、全問題を分析することをお薦めいたします。