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令和3年司法試験解答速報-民事訴訟法-

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講師作成の参考答案

解説

設問1[課題1]

問題の所在

本問では、土地賃貸人Xが、土地賃借人Y(地上建物所有者)に対して、「Yは、Xから1000万円の支払を受けるのと引換えに、Xに対し、本件建物を収去して本件土地を明け渡せ。」との判決を求めて、土地賃貸借契約の終了に基づく建物収去土地明渡請求訴訟(以下「本件訴訟」とする)を提起した事案において、「Xの申出額と格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決…をすることの許否」が問われています。これは、質的一部認容判決の問題です。

民事訴訟法246条は、申立事項に関する処分権主義として、「裁判所は、当事者が申し出ていない事項について、判決をすることができない」と定めることにより、「原告の申立事項を質的に離れて判決すること」と、「原告の申立事項を量的に超えて判決すること」を禁止しています。他方で、「申立事項の枠の中で一部のみを認める一部認容判決をすること」は当然には禁止されません(高橋宏志「重点講義・下」第2版補訂版244頁)。

原告が一定額の立退料の支払と引換えに明渡しを求めている場合において、裁判所が原告の申出額から増額した立退料の支払との引換給付判決をすることは、原告の申出額による立退料の負担付きの明渡請求権を立退料を増額することにより一部縮減するものという意味で、質的一部認容判決に位置づけられます(伊藤眞「民事訴訟法」第6版223頁)。

処分権主義との関係における質的一部認容判決の可否については、通常の原告の合理的意思と、被告に対する不意打ちの観点から判断されると解されています。処分権主義の根拠は当事者意思の尊重にあり、その機能は不意打ち防止にあるからです。

最高裁昭和46年判決(最判S46.11.25・百75)は、原告が申出額と格段の相違のない範囲内で増額した立退料を支払う意思を表明していた場合において、裁判所が原告の申出額と格段の相違のない範囲内で増額した立退料の支払との引換給付判決をすることについて、許容しています。このような判決は通常の原告の合理的意思に反しないと考えているわけです。

会話文では、「Xの申出額と格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決…をすることの許否」について、①「引換給付判決をすることができないとすると、その場合にすべきことになる判決はどのようなものとなるのかを示し」、②「その判決を、Xの申出額と格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決と対比した上で」、検討することが求められています。

そして、その際、③「最判昭和46年は、格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決の許否について直接判断したものではありません。」ということと、「格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決を拒否するというのがXの意思であるとは直ちにはいえないように思います。」ということを踏まえるようにとも誘導もあります。

ここからも分かる通り、「Xの申出額と格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決…をすることの許否」を判断する際に、被告に対する不意打ちについてまで言及することが求められていることを窺わせるヒントはありません。

したがって、上記引換給付判決が処分権主義に違反するかについては、「通常の原告の合理的意思」との関係でのみ論じることになると考えられます。このように、会話文の誘導により、質的一部認容判決の処分権主義違反について「通常の原告の合理的意思」との関係においてのみ論じるという出題は、平成27年司法試験設問1でもなされています。

論述の流れ

まず、引換給付判決をすることができないとすると、裁判所としては、請求全部棄却判決を下すことになることを指摘します(①)。

次に、請求全部棄却判決を下すよりも、Xの申出額と格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決を下した方が、Xの合理的意思に適うのではないかということについて、口頭弁論期日においてXが「1000万円という額に強いこだわりはありません。この額は、早期解決の趣旨で若干多めに提示したものですので、早期解決の目がなくなった以上、より少ない額が適切であると思っておりますが、本件土地を明け渡してもらうのが一番大事ですから、裁判所がより多額の立退料の支払が必要であると考えるならば、検討する用意があります。」と陳述したことも踏まえて、論じることになります(②)。

その際、(ⅰ)「最判昭和46年は、格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決の許否について直接判断したものでは」ないことに着目し、格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決も認められる余地があると解することの可否について検討します。そして、(ⅱ)そのように解釈することができるのであれば、「格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決を拒否するというのがXの意思であるとは…いえない」のであれば上記引換給付判決は通常の原告の合理的意思に反しないということになりますから、「格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決を拒否するというのがXの意思であるとは…いえない」のではないかについて検討することになります。

なお、原告が無条件での明渡しを求めている場合に裁判所が立退料の支払との引換給付判決をすることについては、「立退料の負担のない明渡請求権と立退料の負担付明渡請求権とでは、その内容の同一性が認められないので、一部認容とはみなされない」との理由から処分権主義違反であると説明されています(伊藤眞「民事訴訟法」第6版223頁・100))。本問で問われている「Xの申出額と格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決…をすることの許否」についても、上記と同様に考えるのであれば、処分権主義違反については、質的一部認容判決の限界としてではなく、そもそも質的一部認容判決に当たるのかという問題点として論じることになります。もっとも、Xの意思を問題にしている会話文からすると、そのような論じ方は求められておらず、質的一部認容判決の限界として論じることが求められていると思われます

 

設問1[課題2]

本問では、「Xの申出額よりも少額の立退料の支払との引換給付判決をすること」が処分権主義に違反するかどうかが問われています。

仮に、Xが、立退料を支払うこととその額が1000万円であることを最低条件としているのであれば、「Xの申出額よりも少額の立退料の支払との引換給付判決をすること」は、「原告の申立事項を質的に離れて判決すること」又は「原告の申立事項を量的に超えて判決すること」として絶対的に禁止されますから、原告の通常の合理的意思や被告に対する不意打ちについて検討するまでもなく処分権主義に違反します。

もっとも、口頭弁論期日においてXが「1000万円という額に強いこだわりはありません。この額は、早期解決の趣旨で若干多めに提示したものですので、早期解決の目がなくなった以上、より少ない額が適切であると思っております…。」とも陳述していることに着目して、Xは、第一次的には、1000万円よりも低い金額の立退料の支払と引き換えに本件土地の明渡しを求めていると考える余地もあります。

そうなると、「Xの申出額よりも少額の立退料の支払との引換給付判決をすること」は、「原告の申立事項を質的に離れて判決すること」にも「原告の申立事項を量的に超えて判決すること」にも当たりませんから、処分権主義違反とならず許容される余地があります。

そこで、本問では、口頭弁論期日におけるXの発言も踏まえながら、Xの申立事項が第一次的には1000万円よりも低い金額の立退料の支払と引き換えに本件土地の明渡しを求めるものであるとはいえないかという点について、検討することになります。

 

設問2

賃貸人Xの土地賃借人Yに対する請求における訴訟物は賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての建物収去土地明渡請求権という債権的請求権であるのに対し、賃貸人Xの地上建物賃借人Zに対する請求における訴訟物は、土地所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権という物権的請求権です。

新訴訟物理論からは両請求の訴訟物は同一となりますが、旧訴訟物理論からは両請求の訴訟物は異なるものになります。

そうすると、引受承継における「承継」について「訴訟物である義務の承継を指す」と理解するのであれば、旧訴訟物理論からは、「承継」という要件を満たさないことになります。

もっとも、引受承継における「承継」については、訴訟状態の継続利用という訴訟承継制度の趣旨から、究極的には従来の訴訟状態を利用すべきかどうかという観点から決すべきものです。具体的には、引受承継におけ「承継」とは紛争主体たる地位の移転を意味し、これに該当するかは、①新請求と旧請求とが主要な争点(攻撃防御方法)を共通にし、②承継人の紛争が旧当事者間の紛争から派生ないし発展したものと社会通念上見られる場合(承継を主張する側からいえば、訴えないし請求棄却の申立ての実質的目的が承継の前後を通じて変わりない場合)であるかにより判断するべきであると解されています(高橋宏志「重点講義・下」第2版補訂版580~584頁)。

このように解すると、賃貸人Xの土地賃借人Yに対する請求における訴訟物と賃貸人Xの地上建物賃借人Zに対する請求における訴訟物との同一性は「承継」の判断において絶対的な意味を持ちませんから、訴訟物が同一でない事案においても「承継」が認められる余地があります。

最高裁昭和41年判決(S41.3.22・百109)は、設問2と同種の事案において、引受承継における「承継」を肯定しています。

本問では、上記の通り引受承継における「承継」について論証した上で、最高裁昭和41年判決も参考にしながら、「承継」に関する当てはめをすることになります。

 

設問3[課題1]

Xの主張の骨子は、①Y自身が最終期日に本件新主張をしたとしたら、時機に後れたものとして157条により却下されるべきである、②そうである以上、Yの訴訟状態を引き継ぐZによる本件新主張も157条により却下されるべきであるというものです。

②は、訴訟引受による訴訟状態帰属効を根拠とするものであり、その前提として、ZがYから引き継ぐ訴訟状態の内容として①も検討することが求められています。

①については、「まず、Xの立場から、①について、その結論を得るための理由を説明してください。」とあるため、「Y自身が最終期日に本件新主張をしたとしたら、時機に遅れたものとして却下される」との結論を導くために、157条の要件を充足することを説明します。結論の方向性まで指示されていることに注意する必要があります。

157条の要件は、㋐攻撃防御方法が「時機に後れて提出」されたこと、㋑時機に後れて提出された攻撃防御方法についての審理「により訴訟の完成が遅延させることとなる」こと、及び㋒「当事者の故意又は重大な過失」の3つです。

そのうち、㋑については、当該攻撃防御方法について審理を行う場合と行わない場合とにおける訴訟完結の時点を比較して、当該攻撃防御方法の審理がなければ直ちに弁論を終結し得るのに、さらに期日を開かなければならない場合を意味し、(ⅰ)攻撃防御方法の提出により新たな要証事実が発生するか、(ⅱ)発生するとして、(ⅰ)の要証事実に関する審理のために、予定されていたものとは別に新たな証拠調べを要するか(それとも、予定されていた証拠調べにより(ⅰ)の要証事実を審理することができるか)、又は更なる証拠調べをするために新たに期日を設ける必要があるかという2点により判断されます。

会話文における「以後予想されるXとY双方の主張立証活動」は、㋑との関係で言及することになります。

会話文における「却下決定を得るのを容易にするためにXがYに対してすることができる訴訟法上の行為にも言及してください。」という部分は、おそらく、Xが権利金の趣旨を争うための主張をし、その主張に係る事実を立証するために、Aの証人尋問の申出をすることで、㋑が充足しやすくなるということを論じさせるものであると思われます。本来であれば、書証の申出あるのですから、文書の成立の真正を争うことにもなるはずですが、預金通帳の成立の真正を争うすることには無理があると思うため、預金通帳の成立の真正を争うということについては言及しない方がいいと思います。

 

設問3[課題2]

訴訟承継の主眼が訴訟状態の引継ぎにあることと(必要性)、承継人(引受人)と相手方当事者には被承継人による訴訟追行又は被承継人との間での訴訟追行を通じてそれぞれ手続保障があったといえること(許容性)から、原則として、承継人は被承継人の承継時における訴訟上の地位をそのまま承継すると解されています(訴訟状態帰属効・訴訟状態承認義務、上田徹一郎「民事訴訟法」第5版560~561頁、高橋宏志「重点講義・下」第2版補訂版584~585頁、三木浩一ほか「リーガルクエスト民事訴訟法」第3版592~593頁)。

そうすると、Yが157条の適用により本件新主張をすることができないという訴訟状態がZに引き継がれるため、Zが本件新主張をしても157条により却下されることになります。これが原則論であり、Xが主張するべきことです。

これに対し、Zは、「本件訴訟の前にも本件通帳の中身を見てBからAへの振込みも把握していましたが、本件訴訟においてそれほど重要なものとは思っていませんでした。」とのYの回答も踏まえて、本件新主張についてはYによる訴訟追行を通じてた手続保障の代行がなかったとして、被承継人による訴訟追行を通じた手続保障の代行を正当化根拠とする訴訟状態帰属効は本件新主張に係る157条の却下には及ばないと反論することが想定されます。

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