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司法試験の合格点は?短答式、論文式各試験の足切りのラインも解説

司法試験について

司法試験の合格を目指すにあたり、どの分野でどの程度の得点を取るかといったシミュレーションを行うことは学習計画を立てるにあたっても重要です。

そこで、今回は司法試験の合格点について、出題される科目について配点や合格するにあたっての最低点、そして試験の中で採用されている「足切り」の制度やその影響について、実際の受験者のデータ参照しながら解説します。

司法試験の配点と採点方法

まず、司法試験の試験方式や配点、採点方法などの概要を説明します。

司法試験の試験形式やスケジュール

司法試験は マークシート式の「短答式試験」3科目と記述式の「論文式試験」8科目の2種類の試験 で構成されています。

試験は例年、5月に4日間の日程で実施されますが、先に短答式試験が採点され、6月には短答式試験の合格発表および成績通知が行われます。短答式試験の合格者のみ論文式試験の答案が採点され、9月に合格発表が行われます。

司法試験の配点と採点形式

司法試験は科目ごとに以下のような配点で実施されます。

 

短答式試験

科目 配点 試験時間
民法 75点 75分
憲法 50点 50分
刑法 50点 50分

論文式試験

科目 配点 試験時間
選択科目 100点 180分
公法系科目第1問(憲法) 100点 120分
公法系科目第2問(行政法) 100点 120分
民事系科目第1問(民法) 100点 120分
民事系科目第2問(商法) 100点 120分
民事系科目第3問(民事訴訟) 100点 120分
刑事系科目第1問(刑法) 100点 120分
刑事系科目第2問(刑事訴訟法) 100点 120分

実際の合否判定はこれらの点数の単純な加算で行われるわけではなく、論文式試験の点数に14/8倍(×1.75倍)と短答式試験の点数の合計点で決まります。

短答式試験、論文式試験で課される「足切り」

司法試験の合否は基本的には総合点で評価されます。従って、苦手な科目や当日多少出来が悪かった科目があっても、その他の科目で高得点を取れば逆転できる可能性があります。

ただし、司法試験では各科目に 「足切り」のラインが設けられておりその条件を下回る科目が1科目でもあった場合は他の科目の得点に関わらず不合格 となります。

司法試験の足切りライン
短答式試験の足切りライン:各科目の40%
論文式試験の足きりライン:各科目の25%

司法試験の合格ライン

司法試験の合格ラインについて、法務省が公式に発表しているデータを元に、受験者が意識すべき基準点を考察していきます。

短答式試験の合格ライン

まず短答式試験について、合格率や合格点、平均点、足切りラインなどのデータをまとめていきます。

年度 受験者数 合格者数 合格率 合格点※ 全体平均
令和3年度 3,424 2,672 78.0% 99 117.3
令和2年度 3,703 2,793 75.4% 93 109.1
令和元年度 4,466 3,287 73.3% 108 119.3
平成30年度 5,238 3,669 70.0% 108 116.8
平成29年度 5,967 3,937 66.0% 108 113.8

※合格点を満たし、かつ足きりの条件に抵触していない受験者が合格者とされる

年度ごとの足切りラインを下回った人数

年度 民法 憲法 刑法
令和3年度 189 75 147
令和2年度 435 47 376
令和元年度 82 180 368
平成30年度 375 94 156
平成29年度 303 222 193

短答式試験は受験者の70%~80%前後が通過しています。得点率としては55%~60%前後程度が合格最低点に設定されています。

直近の傾向で言うと受験者全体の平均点が合格最低ラインを上回っており、 受験者の中で平均的な実力があれば短答式試験は通過できそうです。 

足きりは試験の難易度に関わらず点数で線引きがされるため、年度・科目によって足切りの対象なる人数は大きく異なりますが、場合によっては受験者の1割以上が1科目の足切りの対象となっているようなケースもあります。

最終合格ライン

短答式試験を通過し、最終的な合否判定の対象となる受験者に関わるデータです。

年度 短答式試験
通過者数
合格者数 合格率 合格点 全体平均
令和3年度 2,672 1,421 53.0% 755 794.07
令和2年度 2,793 1,450 52.0% 780 807.56
令和元年度 3,287 1,502 45.7% 810 810.44
平成30年度 3,669 1,525 41.6% 805 790.17
平成29年度 3,937 1,543 39.2% 800 780.74

※合格点を満たし、かつ足切りの条件に抵触していない受験者が合格者とされる

年度ごとの足切りラインを下回った人数

年度 公法系科目 民事系科目 刑事系科目 選択科目
令和3年度 47 178 61 54
令和2年度 58 91 29 81
令和元年度 135 52 115 52
平成30年度 82 65 33 85
平成29年度 46 149 128 174

短答式を通過した受験者の最終的な合格率は40%~50%前後です。論文式試験の点数を14/8倍した最終的な1,575点満点で換算すると、合格最低点は例年50%前後で推移しています。

合格最低点と受験者平均点は拮抗しており、論文式試験採点対象者の中で平均的な得点だと合格できないケースもでてきます。

論文式試験単体での成績公表はされていませんが、 概ね6割以上の得点ができていれば安心と言えるでしょう 

足切りの対象者は短答式試験と比較すると少ない傾向にありますが、1科目で受験者の5%以上が対象となっているケースもあります。

司法試験の得点の取り方の方針

上記のデータを踏まえて、司法試験の得点の取り方やそのための学習の仕方の一つの方針を紹介するので、参考程度にご活用ください。

短答式試験は比較的通過率の高い試験であり、受験者の平均点程度を得点することができれば十分に通過することができます。

一方で、合格最低ラインが55%程度と比較的低い年度もありながら、1科目でも40%を切ると無条件で不合格となる運用は変わりません。

まず 全体として70%程度を超えること目標としつつ、どのような分野から出題があっても足切りラインには抵触しない程度に苦手分野を作らず、満遍なく学習すること が望ましいと言えるでしょう。

そして、実際に合否を大きく分けるのは配点の高い論文式試験です。論文式試験の足切りは短答式試験と比べて非常にラインが低く、実際に下回る受験者の数も多くはありません。論文式試験は足切りラインを強く意識するよりも、得意な科目で手堅く得点し、苦手な科目でも受験者平均程度は得点できるよう対策していくのが一つの指針です。

まとめ

司法試験は短答式試験、論文式試験と段階的に採点され、総合評価で合否が決まります。また、論文式試験に特に比重を置かれて採点がされるため対策がより重要です。一方で、短答式試験は足切りの基準点が比較的高いこともあり、決して軽視することはできません。

こういったポイントを抑えながら本番で多少の失敗があっても合格水準を下回らない程度の得点ができるよう学習を行うことが重要です。