司法試験の受験科目の中には「選択科目」と呼ばれる受験者自らがいずれを回答するか選択する科目が存在します。
科目選択に悩む場合、「どの科目が合格しやすいのか」も一つの判断指標となりえます。
そこで、今回は選択科目別の合格率について、実際のデータを掲載しながらまとめ、解説していきます。
司法試験の選択科目について
司法試験はマークシート形式の「選択式試験」と、筆記式の「論文式試験」の2つの総合評価で合否が決まります。
このうち、 論文式試験の中の一つとして「選択科目」が出題されます。 。
論文試験の選択科目
選択科目は論文式試験の内、共通して行われる7科目に加えて受験者がどの科目を回答するか選択する科目です。
配点は他の7科目と同じ100点満点ですが、他の科目の時間配分が120分なのに対し、選択科目は180分と多くの時間が割り当てられています。
選択科目は以下の8科目の中から一つを選択します。(2021年現在)
なお、科目は出願時に選択する必要があり、出願後や試験時に選択を変更することはできません。
(参考)予備試験でも選択科目が導入
予備試験では従来行われていた論文式試験の「一般教養」が2022年度(令和4年度)より廃止となり、選択科目の試験が導入されます。選択できる科目は司法試験で出題される8科目と同様です。
択一式試験で実施されている一般教養科目については従来通り実施されます。
司法試験の選択科目別の合格率
司法試験受験者の科目別の受験者数・合格者数は法務省により公表されています。
令和3年度
科目 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
倒産法 | 437 | 202 | 46.2% |
租税法 | 277 | 109 | 39.4% |
経済法 | 639 | 277 | 43.3% |
知的財産法 | 486 | 193 | 39.7% |
労働法 | 1,009 | 455 | 45.1% |
環境法 | 143 | 44 | 30.8% |
国際関係法(公法) | 46 | 19 | 41.3% |
国際関係法(私法) | 365 | 122 | 33.4% |
令和2年度
科目 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
倒産法 | 452 | 204 | 45.1% |
租税法 | 288 | 97 | 33.7% |
経済法 | 683 | 269 | 39.4% |
知的財産法 | 525 | 200 | 38.1% |
労働法 | 1,104 | 481 | 43.6% |
環境法 | 161 | 46 | 28.6% |
国際関係法(公法) | 48 | 13 | 27.1% |
国際関係法(私法) | 403 | 140 | 34.7% |
令和元年度
科目 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
倒産法 | 608 | 230 | 37.8% |
租税法 | 329 | 97 | 29.5% |
経済法 | 789 | 273 | 34.6% |
知的財産法 | 597 | 194 | 32.5% |
労働法 | 1,299 | 482 | 37.1% |
環境法 | 256 | 72 | 28.1% |
国際関係法(公法) | 59 | 13 | 22.0% |
国際関係法(私法) | 492 | 141 | 28.7% |
平成30年度
科目 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
倒産法 | 758 | 240 | 31.7% |
租税法 | 358 | 101 | 28.2% |
経済法 | 848 | 265 | 31.3% |
知的財産法 | 714 | 192 | 26.9% |
労働法 | 1,481 | 466 | 31.5% |
環境法 | 305 | 67 | 22.0% |
国際関係法(公法) | 64 | 9 | 14.1% |
国際関係法(私法) | 672 | 185 | 27.5% |
平成29年度
科目 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
倒産法 | 906 | 270 | 29.8% |
租税法 | 412 | 94 | 22.8% |
経済法 | 867 | 220 | 25.4% |
知的財産法 | 803 | 201 | 25.0% |
労働法 | 1,738 | 480 | 27.6% |
環境法 | 353 | 73 | 20.7% |
国際関係法(公法) | 81 | 16 | 19.8% |
国際関係法(私法) | 769 | 189 | 24.6% |
年度により数字の差異はありますが、 例年相対的に合格率が高いのは「倒産法」と「労働法」の2科目、次いで「経済法」 の選択者が比較的高い合格率を出していることが分かります。
とりわけ労働法は例年受験者の人数も多く、司法試験受験生にとって積極的に選択されています。
選択科目を選ぶ考え方
選択科目でどの科目を選ぶか迷っている方や、選び方の方針を決め兼ねている方は以下のような視点があることを参考までにご確認いただければと思います。
- 自分が将来法曹として関わりたい分野に関連する科目
- 自分が興味をもって学習に取り組める科目
- 科目別合格率が高い科目
- 出題範囲が比較的狭く、少ない学習時間で網羅できそうな科目
まとめ
司法試験の選択科目における受験者数、合格者数を5年分のデータを元にまとめました。「合格しやすさ」はあくまで一つの判断指標ですが、 倒産法、労働法、経済法などは例年受験者の合格率が高い傾向 にあります。
将来携わりたい分野や興味がある分野なども合わせながら、選択する科目を検討してみてください。