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私が労働法を選択した理由 ~選択科目の選び方~

合格者の試験対策(労働法上位合格 相田さん)

司法試験だけでなく、2022年度からは予備試験でも新たに選択科目が課せられるようになりました。選択科目は8科目もあり、何を選択すべきか迷う人も多いのではないでしょうか。そこで、今回は、令和3年司法試験の労働法で上位合格することができた私がなぜ労働法を選択した理由について紹介します。

1暗記力

労働法の試験では、判例ベースに答案を書かなければ高得点をとることができません。基本7科目であれば、規範を忘れても条文の趣旨から考えて規範を導き問題文の事情を使ってあてはめれば高得点をとることができますが、労働法ではいくら現場で自分なりに考えたとしても判例を無視すれば高い点数がつきません。この点が大きく基本7科目と異なる点です。そのため、 試験対策としては、判例の規範を正確に覚えることはもちろんのこと、考慮事情やあてはめで用いられた事情についても頭にいれておく必要があります。 そのため、 大量の判例を暗記する力 が求められます。このように、労働法は8科目の選択科目の中でもトップレベルに勉強量が多いですが、私はもともと暗記する能力には自信がありましたので、労働法を選択しました。

2得点の安定性

先ほど、労働法は大量の判例を覚えなければならないと述べましたが、逆に、判例をしっかり頭に叩き込んでいれば、得点を確実に積み上げることができるため、得点がぶれにくいというメリットもあります。そういった意味で、 勉強量と比例して成績も伸びていく科目 といえ、努力が裏切らない科目といえます。

3他の選択科目との比較

(1)倒産法

私は、ロースクールの講義で労働法と同時に倒産法も受講していたため、司法試験の選択科目を倒産法にすることも検討していました。倒産法は、民法・民事訴訟法と関連が深いため、倒産法を勉強することにより相乗的に民事系の力は高まると思います。たとえば、倒産法の学習により、手薄になりがちな担保物件についての理解は格段に深まりました。他方で、倒産法は、民事系を得意とする各ロースクールの上位層が選択しており、他の科目と比較しても受験者層のレベルは高いと思います。そのため、 民事系科目に比較的自信がなければ高得点は望めない科目 ともいえます。私は、民事系に得意意識をもっているわけではなかったため、相対的に高得点は望めないと感じ、最終的に労働法を選択しました。

(2)知的財産法

労働法や倒産法に次いで勉強量が多い科目と言われています。また、労働法同様に判例の学習が非常に重要な科目です。他方、法改正が頻繫に行われるため、アンテナを常にはって最新情報をとりこぼさないようにしておく必要があります。個人的には、 労働法のほうが知的財産法よりも判例をストレートに聞いてくるため、勉強した分だけ得点が上がりやすい と感じ、知的財産法は選択しませんでした。

(3)経済法

経済法は、独占禁止法が主な出題内容ということもあり、刑法によく似た科目といえます。刑法では、各犯罪の構成要件の意義を正確に示し、あてはめをする姿勢が重要視されていますが、経済法でも同様の姿勢が求められます。また、勉強量については、労働法や倒産法と比較しても少ない勉強量で合格レベルに達します。そのため、刑法に苦手意識がない方であれば短時間の勉強で対策が可能なおいしい科目といえます。他方で、 経済法はあてはめで勝負が分かれる科目 でもあります。そのため、得点が安定しないというデメリットがあると感じたため、私は、選択しませんでした。

(4)国際私法

国際私法は、経済法同様に少ない勉強量で合格レベルに達することができます。他方で、勉強量が少なくてすむからこそ、 司法試験まで時間がない予備試験合格者の多くが国際私法を選択 しています。ロースクール出身であった私は、ポテンシャルの高い予備試験合格者と戦うことはしたくないと思い、選択しませんでした。

(5)税法、環境法、国際公法

これらの科目は、 受験者数が少ない ことから、ロースクールの講義や予備校教材も十分なものが用意されていません。そのため、勉強しづらいと感じ、選択しませんでした。

4迷っているのなら選択科目は受験戦略的に考えるべき!

選択にあたっては 自分の特性や置かれている状況を考慮して自分にあった科目が何か考えることが重要 です。選択科目の勉強に費やすことのできる時間、暗記の得意・不得意、目指すべき得点は合格点レベルかそれとも高得点か、など個々の事情によって選ぶべき科目も変わってきます。例えば、暗記が得意で、かつ、選択科目に時間をかけられるのであれば労働法はおすすめです。

選択科目は論文の1科目目に行われるため、私は勉強量がしっかり得点に結びつく労働法を選択して、最初の科目で躓かないようにしました。受験を振り返ってみれば、得点の安定する労働法を選択したことは、論文試験を乗り切るために重要な決断であったと思います。

執筆者情報
相田光輝さん
大阪大学法科大学院(既修者コース)卒業
令和3年司法試験合格者(2回目合格、労働法上位7%)
不合格から900番upでの2回目逆転合格