司法試験に落ちたら…誰にも聞けない進路の話

合格者の試験対策(実務家Sさん)

一度は考える「不合格」のその後

「不合格だったらどうしよう」
私は合格まで時間がかかっており,常にこの不安を持っていました。また,実際に進路に悩んだこともありました。

万が一司法試験に不合格だった場合には,どのような進路があるのでしょうか。司法試験の勉強を続けていくのか,別の進路に行くのかという観点も踏まえて,説明していきます。

アルバイト・パート

受験勉強との両立はしやすいが…

来年度の合格を目指し,勉強と仕事を両立するのであれば,アルバイトやパートで働きながら,勉強を続けていくという方法があります。この方法の良いところとして,短時間労働で勉強時間を確保できることや,司法試験受験時(直前期含む)に休みを取りやすいことが挙げられます。

他方,時給制であることが多いので,給料は安く,生活費を稼ぎながら勉強をするとなると,金銭的にはかなり厳しいと思います。また,短時間だけ働くことが出来るといっても,実際に短時間の仕事を見つけるのは難しいですし,勉強との両立にはそれなりの覚悟が必要です。

法律事務所でのアルバイトという選択肢

法律事務所でのアルバイトであれば,上司(弁護士)は司法試験経験者です。司法試験に理解があるため,勉強との兼ね合いで仕事量を調節してもらうことも可能です。

また,今後司法分野で働くのであれば,実務の経験は必ず生かすことができます(実務の内容が司法試験に役立つとは限りませんが…)。

私も司法試験合格時には,法律事務所でアルバイトをしていました。

フリーランス

最近は,インターネット上でフリーランスとして仕事を受けることも可能です。例えば,Webライターや文字の書きおこし,文章校閲などの仕事があります。

フリーランスであれば,仕事の時間を好きに選ぶことができるため,勉強との両立がしやすいと思います。

もっとも,家で出来る仕事は際限がないため,ともすれば,仕事ばかりに集中してしまいがちです。フリーランスの仕事では,オンとオフの切り替えが課題になります。

民間企業への就職

就職は可能か

私のロースクールの同期には,就職をした友人もいます。就職先は,法務部から金融,IT系まで様々です。いわゆる大企業に入った友人もいます。

また,社会人経験→法科大学院入学→司法試験不合格であったとしても,再就職は可能です。

試験勉強との両立は難しい

司法試験との両立という観点からは,非常に厳しいと言わざるを得ません。平日はほとんど勉強時間が取れないため,貴重な休みを勉強時間に費やす必要があります。司法試験受験時には,新入社員でありながら有給休暇を取得するというハードルもあります。

社会人をしながら司法試験に合格したという方を1名だけ知っていますが,ものすごく努力されていました。反対に,司法試験を受験するつもりだったが,仕事が忙しく,受験を断念した知人もいます。

収入面でやむを得ないこともあると思いますが,社会人をしながら司法試験合格を目指すのは生半可な気持ちではできないでしょう。

公務員

学んだことを生かしやすい

公務員試験を受けて,公務員になるという道もあります。裁判所事務官や法制局職員など,法律に直接触れる仕事も多く,これまで学んだことを生かすことができます。また,筆記試験の出題科目に法律が含まれていれば,通常の受験生より,アドバンテージもあります。

他方で,就職した場合と同じ理由から,司法試験の勉強を続けていくのは困難なものといえます。

出願時期と年齢制限に注意

公務員試験の中には,司法試験直前期が出願時期となっているものがあります(労働基準監督官採用試験など)。勉強で忙しい時期だと思いますが,公務員試験も受けるのであれば,出願を忘れないように注意しましょう。

司法試験と並行して公務員試験の勉強をする場合

私の友人は,法科大学院在学中に予備試験を受けていたこともあり,一般教養も勉強済の状態でした。そのため,司法試験までは特に公務員試験に特化した勉強はせず,司法試験が終わってから,公務員試験の勉強をしていました。友人曰く「試験内容の確認を行う程度」だったとのことです。

結果として,友人は司法試験にも公務員試験にも合格しましたが,やはり司法試験に合格できるだけの正確な法律知識があってこその合格だと思います。

私は公務員試験を受けていませんが,一から公務員試験(特に一般教養)の対策を行う必要がある場合,司法試験と公務員試験の勉強を並行して行うのは個人的におすすめできません。二兎を追う者は一兎をも得ず,です。

他士業(司法書士,行政書士)

司法試験と両立できるのか

司法試験に落ちた場合,他士業への転向もひとつの選択肢です。

行政書士試験に関しては,司法試験の勉強で法律科目をカバーできるため,資格取得という意味でおすすめできます。

司法書士試験に関しては,不動産登記法及び商業登記法等の記述式問題や口述試験があるため,司法試験の受験科目とは異なる勉強が必要になります。そのため,短期間での資格取得という意味では,司法書士試験に転向するのは難しいと思います。

他士業に転向した人はいたのか

私の周りでは,在学中に行政書士の資格を取っている人はいましたが,司法試験不合格を機に他士業に転向した人はいませんでした。

私の体験談

私は司法試験に落ちた後,失権するまでは司法試験を受けようと思っていました。そのため,最初から就職や公務員試験は選択肢にありませんでした。

大学時代から,飲食店や塾講師,掃除業務,データ入力,Webライター…とあらゆる仕事をしてきましたが,司法試験合格時にしていたのは「法律事務所でのアルバイト」でした。結果論ではありますが,出勤が必要なためオンとオフの切り替えがしやすいこと,司法試験直前期には長期休みを頂けたこと,すでに弁護士になっている「司法試験合格者」からアドバイスがもらえたことが,司法試験合格に大きく影響したと思います。

司法試験不合格後の進路を「いつ」考えるのか

事前に進路を考える

司法試験が不合格となったときの進路について,受験前から考えているという人もいます。

司法試験受験前の3~4月は公務員試験の出願時期なので,「司法試験は1回しか受けないと決めているから,公務員も併願している」という話は度々聞きました。

不合格だった時

司法試験の結果が不合格だった場合,次の司法試験を受けるのかも含め,今後の進路を決定する必要があります。もし,次年度も司法試験を受けるのであれば,決断は早くすること。合格発表から次の試験日まで時間はありません。

大切なこと

司法試験が不合格であっても,様々な選択肢を取ることができるので,過度に悲観することはありません。
しかし, 「司法試験が不合格だったら,●●(就活,公務員試験受験等)すればいいや」この考えだけは良くないです。 

次の司法試験で絶対に受かる,この気持ちが大切です。

執筆者情報
実務家弁護士S
私大法科大学院卒業・新司法試験合格・実務経験2年以上
加藤ゼミの受講により勉強法を変えたことで司法試験に合格したことから、その経験を後輩に伝えたいと思い記事を執筆。
受験生時代の得意科目は刑法、苦手科目は行政法。