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はじめに
司法試験の受験にあたり、ロースクールに通っている方(又はこれから進学される方)が気になるのは「司法試験対策のため、予備校に通ったほうがいいのか」という点だと思います。
そこで、この記事では、司法試験合格という観点からみたロースクールと予備校の違いや、私の実体験について触れたいと思います。
ロースクールの授業は試験対策として有用か
担当教員の方向性にもよりますが、私の通っていたロースクールでは、司法試験を意識した講義をして下さる先生が多かったです。例えば、直近の司法試験の傾向や、司法試験出題との関係での論点の重要性について、授業中に話してくれることがありました。
もっとも、ロースクールの授業は、司法試験合格だけを目標としているわけではありません。そのため、司法試験の解き方だったり、論文の書き方について、直接的な指導を受ける機会は限定されます。また、授業を通じて、司法試験の出題傾向や頻出論点について網羅的に学ぶ機会はほとんど無いと思われます。司法試験対策は、自主ゼミや、過去問を自習するなど、授業外で行うことになります。
ロースクールと予備校の違い(予備校のメリット)
司法試験合格にむけたロースクールと予備校の違いは、下記の点にあります。
1 司法試験の対策、点の取り方について学ぶ機会の有無
2 司法試験に必要な事項に特化した学習ができるか
1 司法試験の対策、点の取り方について学ぶ機会の有無
予備校の授業は、司法試験合格を目標としていますから、「どうしたら受かるか、試験で高得点をとれるか」という観点から授業がなされます。そのため、司法試験の出題傾向や、何を書いたら点数が伸びるかということを学ぶことができます。
例えば、司法試験の憲法では、審査基準に対してどのような要素を拾うかを体得することが重要ですが、ロースクールの授業ではそこまで触れることはありません。個々の判例をベースに、どのような審査基準が用いられたか、判断のポイントは何だったかという解説はなされるかもしれませんが、そこからどのように答案に反映するかは、各自の学習に委ねられます。予備校の授業であれば、裁判例を読んで自分の答案に落とし込む方法(あるいは、答案を書くことを想定して、裁判例のどこを読むべきか)をより直截的に学ぶことが可能です。
2 司法試験に必要な事項に特化した学習ができるか
ロースクールは、基礎的な法知識や実務的な要素についても学ぶため、司法試験合格に直結する知識が得られるとは限りません。例えば、「民事系」という形で、民法・民訴・会社法がミックスした事案に取り組む、模擬裁判に取り組む、といったカリキュラムが設けられています(実務にとっては非常に有益なことで、この授業を受けることにロースクールの意義があると、私は考えています。あくまで、「司法試験合格の最短ルート」として考えた場合の有用性の問題です。)。
他方、予備校の授業であれば、司法試験における重要性を意識して学習を進めることができます。司法試験合格のためには、膨大な情報をめりはりをつけて覚えることが必要ですので、効率的に学習を進めることができます。
予備校のデメリット
ここまでを読むと、予備校はいいことばかりのようですが、皆さんが悩む通り、予備校に通うことのデメリットもあります。
- 講義に時間を取られる
予備校の講義を受けることで、自学自習の時間が減ります。予備校に通ったとしても、一定の自学時間がなければ合格はできませんので、特にロースクールに通いながら予備校の授業も受けるとなると、負担は非常に大きいです。 - 費用がかかる
ロースクールの高額な授業料に加え、予備校の費用も支払うことになるため、金銭的に厳しい、と感じる方も多いでしょう(私もそうでした)。 - 自分に必要かつ合う授業でないと意味がない
膨大な予備校の授業の中から、自分の不得意分野を伸ばし、かつ、相性のよい講師(授業がわかりやすい等)の授業を探す必要があります。これが見極められないと、①時間も②お金も無駄になってしまいます。
予備校不要派の私が合格するまで
私は、当初、司法試験の合格に予備校は不要だと思っていました。しかし、結果的に、予備校(加藤ゼミ)のおかげで合格することができました。
予備校に懐疑的だった時代
ロースクール在学中は、正直、予備校は不要だと考えていました。ロースクールの成績が比較的良かったこと(今考えると、過信しすぎでとても恥ずかしいのですが…)、答練も含め、金銭的に予備校の授業を受けるのは難しいと考えていたことが理由です。
結果的に、司法試験には不合格となり、「司法試験に合格するためには、試験自体の戦略が必要」であると気づいたのでした。
いざ加藤ゼミへ―合格できた理由
加藤先生の教えは数知れませんが、「この学びがあったから、司法試験に合格した」と思う具体例をいくつか列挙します。
・憲法の裁判例は「答案にする」ことを念頭に覚える
審査基準にあてはめることを念頭に、各裁判例のポイントを抑えるようにしました。裁判例の理解が飛躍的にあがり、かつ、一定程度の答案がかけるようになりました。
・行政法の裁判例は、似た事案を比較して抑える
行政法は最後まで苦手だったのですが、加藤ゼミでは、行政法の類似裁判例を、抑えるべきポイント付きで解説してくれました。そのため、裁判例を答案に反映させやすくなりました。
・上を目指さない
加藤ゼミでは、高得点ではなく、中間水準の答案も参考答案として挙げられていました。苦手科目については、高得点を狙わず、中間水準の答案と同程度まで書ければ良し、とし、合格までに自分が覚えるべきこと、書けるようになることを絞りました。
細かくは書ききれませんが、論証の書き方や審査基準の使い方、裁判例の読み方まで、司法試験のあらゆるエッセンスを加藤ゼミで学んでいます。
予備校のデメリットを克服する
予備校のデメリットについては前述のとおりですが、実務家になった今は、デメリットについてもう少し考えるべきだったと思っています。
予備校の授業は、全教科取らなければならないわけではありません。苦手意識を持っている科目だけに限って受講すれば、時間や費用を節約することができます。
また、当時は答練の効果に疑問があったのですが(アウトプットなら自主ゼミでもできると考えていました)、的確な指導を受けることができれば、自分の考え方や答案全体の癖を見直すことができ、試験本番の不安を軽減することができます。
金銭的な負担については、なんとも言い難い部分がありますが、ロースクール在学中の自分自身をふりかえると、司法試験に合格できることと天秤にかけたら、何とか費用を捻出するべくバイトを頑張ればよかったと思います。
受験生の皆さんへ
予備校に行かなくとも、司法試験に合格した方はいますし、「周りが予備校に行ってるから」という理由で予備校に行くのは本末転倒だと思います。
しかし、少しでも勉強に不安がある人は、予備校に行くことも前向きに検討してみてください。司法試験合格への大きな一歩になるかもしれないです。
実務家弁護士S
私大法科大学院卒業・新司法試験合格・実務経験2年以上
加藤ゼミの受講により勉強法を変えたことで司法試験に合格したことから、その経験を後輩に伝えたいと思い記事を執筆。
受験生時代の得意科目は刑法、苦手科目は行政法。