河野 秀維 様
早稲田大学政治経済学部政治学科 卒業
東京大学法科大学院(未修) 修了
令和4年司法試験 合格
令和3年(不合格)
総合 668.20点 2001位
論文 307.54点 2091位
令和4年(合格)
総合 912.55点 516位
論文 448.31点 492位
公法系 101.92点(B、A)
民事系 189.90点(A、A、A)
刑事系 98.04点(B、A)
選択科目 58.43点
いわゆる純粋未修でロースクールに入学し、基本書をベースに勉強していました。修了後初めての司法試験に不合格となった後、経済産業省に入省し1年ほど勤務していました。2年目は受験ができなかったため、職場を退職し、専業受験生となりました。3年目2回目の受験も、予備校教材をほとんど使用せずに受験しました。しかし、1年のブランクのために知識の抜けがひどく、散々たる結果となりました。
令和2年司法試験はコロナ禍により、合格発表日が1月であったため、次の令和3年司法試験までに時間がなく、抜本的に勉強の仕方を変えようと予備校教材の使用を決意しました。そこで、一通りのカリキュラムを終えている複数回受験者向けの教材を探しました。すると、加藤先生の「総まくり講座」「過去問講座」を見つけたため、迷わず受講を決めました。
ともかく、受験までに時間がなかったため、1.25倍速から1.5倍速で「総まくり講座」を聞きました。講義動画の冒頭で示された手順に従い、テキストにマーカーを引いて講義を受講しました。このときは、3月のTKC司法試験全国統一模試に間に合うよう、学習を進めていました。3月中旬の模試の後は、本番の問題形式に慣れるため「過去問講座」に着手しました。このとき、本番まで残り約2ヶ月。論文式試験については、もはや全年度についてフルスケールでの答案を書く時間はないと考え、時間を決めて設問を読み、答案構成を行って、解説・参考答案を読むという勉強法を行いました。短答式試験は、TKC短答式過去問題演習トレーニングを通じて対策しました。
9月の合格発表を経て、合格者1421人、総合2001位という結果であったため、学習法を見直しました。また、短答式試験は130点、1056位であったため、論文に問題があることは明白でした。学習法を振り返り、平成23年度以降の過去問について、全科目フルスケールで起案し、それを、そして「過去問講座」の参考答案をみながら自己添削するという学習を行いました。添削を終えた後は、出題趣旨・採点実感を踏まえ、表現方法の見直しをしました。また、それでも適用条文・論点の指摘や法解釈・法適用にかかる表現が気になる箇所は、合格者の友人に相談し、添削をお願いしていました。
起案は、時間節約のためパソコンでタイピングして作成しました。これは、一度紙で起案し筆力を計算し、実際に書くことのできる文字数が把握できれば、わざわざ紙で起案する必要はないと考えたためです。私が現実に書くことができる文字数が3,000文字程度であったため、これを標準として、最大4,000文字に収まるよう答案を添削していました。
Googleスプレッドシートを使って進捗を管理し、平成23年度以降の全科目の過去問について、少なくとも1回は、見直しまでの過程を一通り済ませました。苦手意識のあった民事系科目は、2周目で答案構成だけを行い、押さえるべき論点を抑えられているかだけをチェックしていました。
法律文書では、①設問の事実から問題となる条文を特定する、②解釈が必要な要件を抽出する、③事実を引用し、法解釈・法適用を行う、という3段階のプロセスを示すことが必要です。
そして、司法試験では、③をどのように表現するかが合否を分けます。
「総まくり講座」のテキストでは、法解釈の前提となる判例・重要な裁判例がしっかりと引用されている他、新司法試験や旧司法試験の設問を題材として、具体的な法適用の過程が示されています。そのため、インプットの過程で知識をどのように使うかを意識することができたため、地に足をつけて学習を進めることができました。
論文式試験では、限られた時間の中で設問に対し、必要かつ十分な量で答案を作成する必要があります。そのためには、何よりも試験の現場で活用できる形で、知識を記憶することが重要です。
法律学習の王道は、条文から出発し、判例、通説、多数説、有力説を確認することですが、深入りするときりがありません。そのため、基本書などから仕入れた知識を整理し、オリジナルの論証集として集約することは、大幅なタイムロスになります。
しかし、「総まくり論証集」は、総合講義にあたる「総まくり講座」を暗記用に圧縮した冊子になっていますので、講義で理解した内容を別の言葉で置き換える必要もなく、そのまま覚えれば、論文試験について必要にして十分な知識を身につけることができます。このように、インプットとアウトプットが連続していることから、時間がない中でも、学習から演習までのコストを大幅に圧縮することができ、効率的な学習を行うことができました。
「過去問講座」の冒頭では、総論として、答案作成上の作法や出題傾向などの答案作成にあたってのポイントが簡潔に記載されており、学習の方向性を見定めることができる点で非常に有用です。
さらに、過去問について、出題形式が変わってしまったものについても、現在の出題形式に揃えた形で2種類の参考答案が用意されています。一つは8ページほどの模範答案、もう一つは5ページほどの中位答案です。これらを出題趣旨や採点実感と対比させることで、同一、類似の問題が出た場合について、答案作成の指針を明らかにすることができました。また、筆力によって記述量は大きく変わります。そのため、2つの答案は、筆力がない場合であっても、どの論点を優先し、どのような表現で、どの程度記述すれば、合格ラインに乗ることができるかを見極めるのに大変役立ちました。
また、当時加藤先生が掲載していた「司法試験合格に向けた理想的な学習スケジュール」の記事中に、「これだけは必ずやり込んでおきたい最重要過去問35選」が紹介されていたため、そこで優先すべき過去問を確認し、それらを重点的に復習しました。
どれだけ沢山の知識を詰め込んでも、設問に答えていなければ点数はつきません。また、答案の文章がわかりにくければ、点数は伸びません。司法試験は、相対評価の試験であるため、よく「書き負けないように」することが重要であるといわれます。すると、私たちは、他の受験生に勝つため、しばしば理想の答案を追い求めるようになります。しかし、そうなると逆に合格は遠ざかります。なぜなら、試験時間は2時間であり、多くの受験生にとって、現場で理想の答案を書き切ることは不可能だからです。
したがって、私が令和4年司法試験で重視したのは、「自分の筆力に見合った、問に答えるに必要十分な記述をする」ことでした。良い答案構成ができても、書き切らなければ意味がありません。書くべきものだけを書き、それ以外を「削ぎ落とす」ことに注力しました。私の場合、文字は小さめでしたが、ほとんどの答案は最大5枚程度に収まっています。
不合格を繰り返せば、繰り返すほど、理想の答案を追い求めがちになります。しかし、大事なことは知識に逃げないことです。そして、事実と条文とを照らし合わせ、法を直接適用できない場合に、どのようにして適用するかという論理をしっかりと考え、悩みを示し、それを記述することです。
辛い道のりであるとは思いますが、諦めなければ乗り越えられない壁ではありません。頑張ってください。応援しています。