2004(平成16)年度より、海外のロースクールをモデルに導入された法科大学院制度は従来の司法試験のハードルを下げ、法曹界の門戸を広く開きました。
一方で必ずしも制度のすべてがうまくいったわけではなく、2023(令和5)年現在、法科大学院は最盛期の半分以下しか残っていません。
本記事では募集停止した法科大学院について情報をまとめるとともに、多くの法科大学院が募集停止に至った背景についても考察します。
今後の法科大学院、司法試験の受験戦略を立てる上の参考にご一読ください。
Contents
募集停止の法科大学院一覧
募集を停止した、ないしは募集停止が決定している法科大学院は下記の通りです(募集停止年度順)。
- 姫路獨協大学大学院
- 明治学院大学大学院
- 大宮法科大学院大学
- 神戸学院大学大学院
- 駿河台大学大学院
- 東北学院大学大学院
- 大阪学院大学大学院
- 島根大学大学院
- 信州大学大学院
- 新潟大学大学院
- 香川大学大学院
- 鹿児島大学大学院
- 東海大学大学院
- 大東文化大学大学院
- 関東学院大学大学院
- 龍谷大学大学院
- 久留米大学大学院
- 広島修道大学大学院
- 獨協大学大学院
- 白鷗大学大学院
- 静岡大学大学院
- 熊本大学大学院
- 東洋大学大学院
- 愛知学院大学大学院
- 京都産業大学大学院
- 山梨学院大学大学院
- 神奈川大学大学院
- 國學院大学大学院
- 中京大学大学院
- 成蹊大学大学院
- 名城大学大学院
- 北海学園大学大学院
- 立教大学大学院
- 桐蔭横浜大学大学院
- 青山学院大学大学院
- 横浜国立大学大学院
- 近畿大学大学院
- 西南学院大学大学院
- 甲南大学大学院
- 駒澤大学大学院
大学入試においては人気の高い大学私立大学、国公立大学の法科大学院であっても募集停止しているケースも複数見られ、法科大学院の運営が容易でないことがわかります。
法科大学院が募集停止に至る背景
多くの法科大学院が募集停止に至ってしまった背景には複合的な事情がありますが、代表的なものを解説します。
法曹志望者数の減少
司法試験の受験者数の推移をみると、受験者数は長期的に減少傾向です。
そもそもの志望者数が減少する中で法科大学院同士で学生の奪い合い状態となってしまい、定員割れが起きる院も存在しています。
法科大学院運営の資金面での負担
高度な法曹教育を実施する法科大学院には専門的なスタッフの人件費をはじめとする運営コストがかかります。
この運営コストが大学の経営上高い負担となり(特に定員割れの場合)、新規での募集停止を余儀なくされるケースも少なくありません。
法科大学院ルートでの司法試験合格率
法科大学院制度は当初修了者の7~8割程度が司法試験に合格することを想定して制度設計されていました。
しかし、現実には法科大学院を修了して司法試験を受験した受験者は既修コースの法学部卒で40%前後、未修コース選択者にいたっては15%程度と当初の想定を大きく下回っています。
この状況が法科大学院離れに繋がり、志望者の減少・定員割れの原因の一つとなったと考えられます。
予備試験制度の導入
制度導入当初は「法科大学院」のみが新司法試験を受験できるルートでしたが、2011(平成23)年度より予備試験制度が導入され、予備試験に合格した場合は司法試験の受験資格が得られるようになりました。
合格率は4%前後と非常に低い狭き門でありながらも、予備試験合格者の司法試験合格率は90%を超える年度もあり、予備試験合格が実質的に司法試験合格と同義に近いとも言われています。
元々は法科大学院への入学が時間的、もしくは金銭的に難しい場合の特例としての位置づけでしたが、年齢制限、回数制限等一切の制限のない予備試験は金銭的な負担の低さや、社会人が無理のないペースで受験戦略を立てられることからも近年人気を伸ばしています。
制度改革により法科大学院人気は盛り返す?
2023(令和5)年度より法科大学院の制度改革が行われ、所定の条件を満たすことで法科大学院修了見込みの段階から司法試験の受験が可能になります。それに伴い法科大学院ルートを使う場合であっても、1年間の期間を削減することが可能です。
2022(令和4)年度現在、この所定の条件がどの程度のハードルであるのか、実際に制度を利用できる学生がどの程度いるのか、制度を利用することで「飛び級」が可能になるのか詳細なデータが存在しないため具体的な考察ができませんが、比率によっては今後法科大学院の選択肢が再び注目される可能性も十分に考えられます。
当校でも最新の情報が手に入り次第、分析・考察を行います。
まとめ
法科大学院は従来非常に狭き門であった旧司法試験の門戸を広げることに貢献しましたが、制度すべてが想定通りになったわけではなく募集を停止した法科大学院も少なくないのが事実です。
2023(令和5)年度の制度改革のように、実情に沿った制度変更が今後も加えられる可能性があり、それに伴い法科大学院がより有力な選択肢になる可能性もあります。
法科大学院受験を検討されている方はぜひこういった背景も抑えながら今後の動向についても着目してみてください。