法科大学院ルートで新司法試験受験を検討している場合、まず受験資格を得るためにはどこかの法科大学院に入学する必要がある一方、実際の司法試験まで見定めると合格者数・合格率が上位の院に入学できるにこしたことはなく、志望・出願する院の選択に悩まれる方も多いのではないでしょうか。
本記事では法科大学院ごとの倍率などのデータや法科大学院全体の受験者の推移をもとに、各法科大学院の難易度について考察します。
これから法科大学院を検討される方、志望・出願する院を迷われている方はぜひ参考にご一読ください。
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法科大学院全体の志望者数は大幅な減少傾向
文部科学省が公表しているデータによると、法科大学院全体の志願者数は長期にわたり減少傾向であることがわかります。一方で入学定員数は下げ止まり傾向にあり、入学定員充足率は平成26年を底とし、回復基調です。
なお志願者数は延べ人数でカウントされるため、一人の学生が多くの院に出願した場合大幅に増える傾向があります。
定員数の減少、入学定員充足率の減少と比較しても志願者数の減少幅は明らかに大きいことから、単純な志望者数の減少に加えて受験者一人あたりの併願数が減っていることが推測可能です。
こういった結果の背景として志望者数自体が減少傾向にある一方で、法科大学院全体の数がピークの約半数となり伴い定員数も半減する中で入学定員充足率は相対的に上がっていることが推測できます。
制度改革により法科大学院の需要が高まる可能性も
2023(令和5)年度より法科大学院制度が改革され、所定の条件を満たすことで法科大学院在学中、修了見込みの段階で司法試験の受験が可能となります。つまり、法科大学院における学習期間を1年間短縮できる可能性があります。従来より予備試験に合格すれば短縮は可能でしたが、予備試験の難易度は高いためより多くの学生が機会を手にできる可能性があります。
所定の条件がどういったものであるか、どの程度の学生が条件を満たせるのか、実際に卒業見込み段階で受験した学生がどの程度合格できるのかなどの情報は判明次第当校でも分析・考察を行います。
令和4年度の法科大学院の入試倍率
文部科学省が公表している入学者選抜実施状況等を確認することで、各法科大学院の定員や出願数、合格者数・入学者数や競争倍率がわかります。
順位 | 法科大学院名 | 受験者数 | 合格者数 | 倍率 |
---|---|---|---|---|
1 | 一橋大学 | 480 | 92 | 5.22 |
2 | 筑波大学 | 179 | 40 | 4.48 |
3 | 専修大学 | 194 | 44 | 4.41 |
4 | 日本大学 | 250 | 59 | 4.24 |
5 | 上智大学 | 138 | 41 | 3.37 |
6 | 東京都立大学 | 121 | 41 | 3.37 |
7 | 琉球大学 | 49 | 17 | 2.88 |
8 | 慶應義塾大学 | 1065 | 382 | 2.79 |
9 | 神戸大学 | 418 | 161 | 2.6 |
10 | 東京大学 | 626 | 244 | 2.57 |
11 | 早稲田大学 | 951 | 373 | 2.55 |
12 | 愛知大学 | 38 | 15 | 2.53 |
13 | 九州大学 | 141 | 58 | 2.43 |
14 | 関西大学 | 194 | 80 | 2.43 |
15 | 明治大学 | 357 | 148 | 2.41 |
出典:法務省 各法科大学院の入学選抜状況等(https://www.mext.go.jp/content/20220428-mxt_senmon02-000022267_3.pdf)
倍率を確認すると、司法試験合格率の高いいわゆる上位校の倍率が特段に高いわけではないことが読み取れます(詳細は後述)。
倍率は入試の難易度を図るバロメータの一つではありますが、より重要なのはどういった層が受験しているのか。優秀が受験生が多い場合は倍率が低くとも熾烈な争いになる可能性が高く、逆に倍率が高くても受験生の平均レベルが高くなければ見た目の数字ほどの難易度ではない可能性もあります。
司法試験の合格実績も法科大学院の難易度の指標として考える
法科大学院入試においては、大学受験の「偏差値」のように難易度を数字で可視化した指標は存在しません。そのため、複数の視点から考えることが望ましいですが、倍率のほかに難易度を図る指標として合格実績が挙げられます(合格者数および合格率)。
合格実績は法科大学院におけるカリキュラムの充実度や学習環境などの入学後の要素によっても左右するため確定的な指標ではありませんが、やはりそもそも入学を志望するのが実力の高い層であることは容易に推測ができます。
法曹の道を志望するにあたり重要な通過点である司法試験の合格率を高める観点からも可能であれば合格者数・合格率の高い上位校に入学できるにこしたことはありませんが、やはり上位校の入学難易度は相応に高いものであると言えるでしょう。
順位 | 法科大学院名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
1 | 京都大学法科大学院 | 175 | 119 | 68.0% |
2 | 東京大法科大学院 | 192 | 117 | 60.94% |
3 | 慶應義塾大法科大学院 | 181 | 104 | 57.46% |
4 | 早稲田大法科大学院 | 232 | 104 | 44.83% |
5 | 一橋大法科大学院 | 110 | 66 | 60.00% |
順位 | 法科大学院名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
1 | 京都大法科大学院 | 175 | 119 | 68.00% |
2 | 東京大法科大学院 | 192 | 117 | 60.94% |
3 | 一橋大法科大学院 | 110 | 66 | 60.00% |
4 | 慶應義塾大法科大学院 | 181 | 104 | 57.46% |
5 | 東北大法科大学院 | 48 | 27 | 56.25% |
合格率・合格者数などから見る上位校についてはこちらの記事もご参照ください。
まとめ
法曹志望者の数が減っていることもあり、法科大学院の受験者も減少していますが、法科大学院の募集停止などの事情もあり入学定員充足率は回復しています。倍率の高い法科大学院は3倍~5倍程度の競争率であり、依然として人気の法科大学院に楽には入れる状態ではありません。
また、倍率は必ずしも入学の難易度とは比例しません。法科大学院には偏差値のような指標がないため複合的な指標で判断する必要があり、実績の高い上位校はやはり難易度が高いと考えられます。
出願する法科大学院選びの参考にご活用ください。