大学3年次合格者が作成した関西学院大学法科大学院の参考答案と傾向対策を公開しております。
2022年度入試 A日程
2023年度入試 A日程
2024年度入試 A日程
関西学院大学法科大学院 入学者選抜
https://www.kwansei.ac.jp/lawschool/admissions/kakomon/
※1.2022年度入試は2022年入学者選抜試験、2023年度入試は2023年度入学者選抜試験、2024年度入試は2024年度入学者選抜試験を指します。
※2.コメントにおける「基礎問」は加藤ゼミナールで販売されている基礎問題演習講座及びそのテキストを、「論証集」は加藤ゼミナールで販売されている総まくり論証集を指します。
【入試概要】
試験科目
1限目:民法・商法(合わせて120分)
2限目:憲法(80分)
3限目:刑法(80分)
答案用紙の特徴
不明
気をつけること
【各科目の出題概要・対策】
憲 法
2020年度 | 思想・良心の自由 |
2021年度 | 知る自由(天皇コラージュ事件、泉佐野市民会館事件) |
2022年度 | 政治活動の自由(寺西裁判官事件) |
2023年度 | 語句説明問題、政教分離原則(津地鎮祭事件) |
2024年度 | 語句説明問題、信教の自由(オウム真理教解散命令事件) |
憲法は2023年度から語句について2つの中から1つ選択して説明させる問題が出てきており、その内容も難しいので、普段から1つ1つの語句を単に覚えるだけでなく、他の語句や制度との関係を意識しながら学習する必要があります。この流れだと2025年度入試でも出題される可能性が高いので、必要最低限でも対策はしたほうが良いと思います。まだ2年度分しか出題がないので出題分野の傾向を掴むのは難しいですが、2023年度は付随的違憲審査制と国家単独立法、2024年度は政党と八月革命説の出題だったので、これからも統治分野からの出題になるのではないかと思います。
設問2の事例問題についても、結構難しいなという印象です。ただ、出題分野を見ると思想・良心の自由、知る自由、政治活動の自由、政教分離、信教の自由というようにある程度の偏りはあるかと思います。2年連続で宗教系(信教の自由に関係する分野といったほうが適切かもしれないです)が出題されているので、さすがに次回は出題されないのではないかと思います。ただ、いずれの分野も重要分野からの出題なので、絶対におさえておきたいです。
2024年度の問題については基礎問でかなり近い問題が取り扱われていたので、答案作成がしやすかったです。他の年度も判例に近い問題が多いので、そういった意味でも基礎問との相性は良いかと思います。総まくり講座や論証集と併用すればほとんどの問題で合格答案が書けるようになるので、大変おすすめできます。
民 法
2020年度 | 売買と賃貸借、177条の「第三者」、無断譲渡・転貸解除 |
2021年度 | 錯誤と詐欺、代表権濫用 |
2022年度 | 債権者代位権、中間省略登記、契約交渉段階での信義則 |
2023年度 | 賃貸人たる地位の移転、信頼関係破壊の法理、受領遅滞 |
2024年度 | 即時取得、書面によらない贈与、強迫取消し |
民法は単論点ではなく、色々な分野が問題になる出題が多い印象です。問題の難易度はそこまで高くないですが、その分だけ答案のクオリティが要求されるので、ご自身が使用されている問題集をしっかりやり込むのが良いと思います。加藤ゼミナール受講生であれば基礎問と論証集を使いながら、基礎問では答案のクオリティを磨き、論証集で知識の穴をなくすという使い方で民法では高得点を狙いましょう。
また、誘導があまりしっかりされずに「XはYに対して〜の引渡しを請求できるか」というような聞き方がされることが多いので、普段から請求はなんなのか、その請求が認められるためにはどのような要件が必要なのか、相手方からの反論にはどのようなものがあるのかというように当事者の立場になって考えるということを意識すると良いと思います。
商法との時間配分については、年度により異なりますが、私が答案を作成した際には民法80分で商法40分という時間を1つの目安としました。もちろん商法が難しい場合には商法に50分使うことも考えられるので、ご自身で過去問を解いてみて配分を決めるのが良いです。
刑 法
2020年度 | 語句説明問題、ひったくり行為の強盗致傷罪 |
2021年度 | 語句説明問題、殺人罪、強盗罪と中止犯 |
2022年度 | 語句説明問題、共犯と違法性阻却事由、間接正犯 |
2023年度 | 語句説明問題、不法利益と2項強盗罪 |
2024年度 | 語句説明問題、遅すぎた構成要件の実現、抽象的事実の錯誤 |
刑法では語句説明問題が毎年出題されているので、今後も出題されるはずです。また、この語句説明問題も憲法とは異なり、2つから1つを選択するようなものではなく、2つ両方答えるものになっているので、憲法以上に穴のない学習が必要です。ただ、2024年度だけは1つしか出題されていないので、今後はどのようになるか読めません。2つ出題されても良いように準備しておきましょう。
出題分野は様々ですが、2022年度は安楽死について問われるというとんでもない出題がありました。刑法を学んでいて安楽死を勉強する機会などないはずなので、何の力を問いたいのか全く謎でした。それで懲りたのか、以降は過失犯における注意義務や「横領」の意義などの刑法で学習する分野に関する出題になりましたが、この対策方法は憲法と同じで大丈夫かと思います。
設問2は全体的に難しいです。2022年度の共犯と違法性阻却事由は、私は論証を覚えていただけで、正直どのような問題なのか理解していなかったので、答案作成時には苦労しました。2023年度では不法な利益でも2校強盗の「利益」にあたるのかを問われましたが、結論ありきで構成すればある程度の答案は書けるかと思います。時間はそこまでシビアではなく、考えながら書けるので、情報処理速度よりは内容の正確性に注力して学習するのが良いと思います。
商 法
2020年度 | 特別利害関係取締役、瑕疵ある取締役会決議の効力 |
2021年度 | 株式と相続、権利行使者の指定、譲渡制限株式と強制買取 |
2022年度 | 表見代表取締役制度の説明、具体的事案への当てはめ |
2023年度 | 重要な財産の処分、取締役会の承認を受けない代表取締役の個々的取引行為 |
2024年度 | 利益相反取引、任務懈怠責任 |
民法と同時に行われますが、時間配分については民法の最後に記述しておきました。
出題分野に偏りがあるわけではないのですが、組織再編については確認できる限り一度も出題がなかったので、株式、機関、任務懈怠責任等、新株発行というような分野についてしっかり学習していれば大丈夫かなと思います。ただ、1つ気になるのが2021年度に出題された株式の強制買取制度です。私はこのような制度や条文があることを知らなかったので、答案作成した年度にこれが出題されなくてよかったと安心してしまいました。それくらいマイナーなところだと思うのですが、ここを対策するべきかどうかは微妙なところです。私であれば、そのような細かいところよりも先ほどあげたような重要分野をしっかりやって、細かいところが出たら仕方ないと割り切ると思います。
問題の難易度自体は標準程度です。いずれも重要分野からの出題ということもあり、比較的書きやすいという印象でした。この対策としては加藤ゼミナール受講生であれば基礎問や論証集、他の教材をお使いになられているのであれば演習系教材を中心にやるのが良いと思います。利益相反絡みの任務懈怠あたりは書き方が難しいので、その辺りを演習教材でしっかり抑えるのが良いと思います。基礎問であればその書き方はしっかり解説されています。