大学3年次合格者が作成した同志社大学法科大学院の参考答案と傾向対策を公開しております。
2022年度入試 前期
2023年度入試 前期
2024年度入試 前期
同志社大学法科大学院 入学者選抜
https://law-school.doshisha.ac.jp/entrance_ex/question/
※1.2022年度入試は2022年入学者選抜試験、2023年度入試は2023年度入学者選抜試験、2024年度入試は2024年度入学者選抜試験を指します。
※2.コメントにおける「基礎問」は加藤ゼミナールで販売されている基礎問題演習講座及びそのテキストを、「論証集」は加藤ゼミナールで販売されている総まくり論証集を指します。
【入試概要】
試験科目
1限目:憲法(60分)
2限目:民法(60分)
3限目:刑法(60分)
4限目以降:民訴法、刑訴法、商法、行政法(それぞれ40分)
2024年4月のお知らせにおいて、上3法の試験時間が60分になること、下4法が40分になることが発表されました。試験科目についても、7法全てを受験し、下4法については上位2科目をピックアップし、合否判定に用いるという仕組みに変更されることが読み取れます。
参考答案は、旧制度(上3法が70分、下4法が2科目合わせて80分)に則って作成しています。
時間割については不明ですが、続報が更新され次第こちらも更新します。
答案用紙の特徴
17行×2×4頁(過去問掲載ページに載っています)
気をつけること
【各科目の出題概要・対策】
憲 法
2020年度 | 記者の証言拒絶・条約及び国会の修正権 |
2021年度 | 委任立法の合憲性・租税立法による基本的人権の制限 |
2022年度 | 国政調査権・財産権・損失補償 |
2023年度 | 人事院の合憲性・抽象的権利に関する1行問題 |
2024年度 | 一部違憲について説明・新しい人権(DNA型の削除請求) |
憲法は、私立ローでは珍しく統治をほとんど毎年聞いてくるという形式になっています。しかも、条文を見ればどうにかなるというものでもなく、しっかりとその制度について知っていないと書けないような出題がされるので、十分な対策が必要です。ただ、同志社を受ける方は京大も受ける方が多いと思うので、京大の対策も兼ねるという意味では特に問題はないと思われます。
ただ、人権分野も少しマイナーというか典型ではないところを聞いてくるので、少し嫌な出題です。そのため、重要分野に絞って学習するというヤマ当てのような勉強ではなく、しっかりと網羅的に穴のない勉強をすることが大切です。これはどの科目にもいえることなので気をつけましょう。
人権分野は判例を意識した記述が大切になる科目ですが、同志社の場合は1行問題の形で出されることもあるので、その中でどのように判例を意識した記述をするのかという観点で判例を学習するのが効果的だと思います。
この対策としては総まくり講座や論証集が役に立ってくれると思います。私も問題を解いていてわからないことがあったときにはその2つのテキストを読めば大体解決できていました。
民 法
2020年度 | 詐欺取消・他人物売買・意思無能力 |
2021年度 | 代理・本人による無権代理人の相続・利益相反行為 |
2022年度 | 即時取得・所有権留保特約・債務不履行解除・解除前の第三者 |
2023年度 | 錯誤・債権者代位権・相殺 |
2024年度 | 保証・代理(無権代理・表見代理)・賃貸借の修繕義務・賃貸人たる地位の移転・土地上の建物の無断譲渡・信頼関係破壊の法理 |
民法は小問が多く、色々な分野を聞いてくるので、少し忙しい科目になります。
問題の難易度自体は特別高いわけではないのですが、2020年度の意思無能力などの短答知識が軽くですが問われることもあるのでそういった場合にどのように対応するのか決めておくと良いと思います。
また、代理の出題が多い印象なので、代理という少し難しい分野の対策は忘れずにしておきたいところです。
そして、これはどのロースクールでも頻出ですが、債権者代位権や賃貸借における信頼関係破壊の法理などの分野はとにかく色々な問題を見て深く理解しておいた方がいいと思います。ここは受験生の多くができるはずなので、できないと相対的にかなり沈んでしまいます。
そのため、お持ちのテキストや問題集をしっかりとやり込んでおくと安心です。
また、民法は解説が非常に丁寧なので、これを見れば簡単に答案が作成できると思います。
刑 法
2020年度 | 恐喝罪・2項強盗殺人罪・正当防衛 |
2021年度 | 不法領得の意思・因果関係・共犯の錯誤 |
2022年度 | 強盗致死罪・複合建造物の一体性・抽象的事実の錯誤・共犯関係からの離脱 |
2023年度 | 実行の着手・事後強盗未遂罪・強盗致傷・共犯の射程・抽象的事実の錯誤 |
2024年度 | 2項詐欺罪・権利行使と恐喝・錯誤・因果関係・不能犯 |
刑法はとにかく書く量が多く、毎回時間ギリギリで書き終えるという印象でした。論点を網羅するだけでもかなり時間がかかるのに、当てはめを充実させようとするとパンクしてしまいます。ですが、刑法は受験生全員がある程度の水準の答案を書ける科目なので、ここで良くない答案を書くと一気に沈んでしまいます。そのため、逆に相対的に浮けるような答案を作れるような準備をするのが良いと思います。
ギリギリでも合格レベルの答案を書くのであれば、まずは主要な論点を落とさないようにすることが最優先です。細かい論点(例えば240条後段に殺人の故意がある者も含むかというもの)は落としても他のところが充実していれば全く問題はないのですが、大きな論点を落とすとそれだけで不合格推定が働いてしまうといっても過言ではないので、問題集を繰り返し解いて論点抽出能力やその論点の処理手順を身につけるのが良いと思います。
民事訴訟法
2020年度 | 訴訟物理論・将来給付の訴えの利益・既判力 |
2021年度 | 訴えの変更・反訴と相殺・既判力 |
2022年度 | 管轄・補助参加の利益・弁論主義 |
2023年度 | 証明責任・弁論主義・申立拘束原則・確認の利益 |
2024年度 | 弁論準備手続・弁論主義・補助参加の利益・参加的効力 |
民訴は刑訴と同時に書かなければならないという都合上、ここも時間がシビアになってきます。また、時間がない割に問題も私立ロー入試では全く見ない管轄・補助参加の利益・参加的効力という分野を聞いてくるので、少し厄介なところです。
また、2024年では弁論準備手続について聞かれました。実際は条文を見つければ簡単に解けるものですが、そもそも弁論準備手続ってなんなの?という方もいらっしゃると思うので、そうなった場合に条文を見つけることも難しくなってくるのかなと思います。
そうすると、民訴では網羅的な学習をするのはもちろんのこと、予備試験の短答を受験してみるのもアリなのかなと思います。
補助参加の利益も参加的効力も深いところまでは聞いてこなかったので、とりあえず書けるようにしておけば問題ありません。
そして、弁論主義は毎年のように出題されているので、絶対におさえておいてください。
ここでは基礎問がとても効果的です。というのも、基礎問は96問もあり、網羅性が高いので、これをやっておけば大丈夫というものになっているからです。
刑事訴訟法
2020年度 | 再逮捕・再勾留禁止原則・伝聞法則 |
2021年度 | X線検査・実況見分調書 |
2022年度 | 強制採尿・自白法則 |
2023年度 | 逮捕勾留されていない被疑者に対する取調べ |
2024年度 | 強制処分(GPS)・違法収集証拠排除法則 |
刑訴は捜査と証拠が1問ずつ出題されることが多いです。2023については捜査1問だけでしたが、他は証拠も出題されているので、証拠を捨てるなんてことがあってはならないです。
実際、私が答案を作成した3年分は、難易度が特別高いわけではなく、基礎問に掲載されている問題をやっていれば十分対応できるレベルなので、お持ちの問題集または基礎問をしっかりやり込むことが大切です。
あまり司法試験の過去問くらいの長くて難しい問題をやる必要はありません。予備試験の過去問くらいならやっても効果はある程度あると思います。
2021の実況見分調書は書くのが難しいので、ここは再度出題されてもおかしくないという意味でしっかりおさえておくと良いと思います。
また、刑訴の出題趣旨は無駄に長いので、あまり深く読む必要はありません。ご自身が気になったところを辞書的に読めば足りると思います。
商 法
2020年度 | 議決権の代理行使・株主総会決議取消の訴え・新株発行・主要目的ルール |
2021年度 | 株主名簿の名義書換請求・株主総会決議取消の訴え・表見代表取締役 |
2022年度 | 会社の承認のない譲渡制限株式の譲渡・新株発行・仮装払込み |
2023年度 | 取締役の報酬の取締役会への一任・355条の義務・株主代表訴訟 |
2024年度 | 機関に関する1行問題・利益相反・全員出席総会 |
商法はスタンダードな問題が多い印象ですが、2024では1行問題も出題されたのですが、1行問題は受験生みんな諦めがちというか、嫌な出題ではあるので、ここでしっかり説明できると高得点が期待できます。
超重要な423条や429条はあまり出ず、株式関係や取締役・取締役会に関する出題が多い印象です。そのため、会社法がどうしても苦手という方は、テキストでいうと前半部分を重点的にやり、後半部分は少し水準を下げるなどの勉強方法も考えられます。ただ、そんなリスクを負うのも嫌なので、結局網羅的にしっかりやりましょうという話になってしまいます。
このタイミングで宣伝を入れるのは大変申し訳ないのですが、加藤ゼミナールの総まくり、基礎問は会社法が苦手な方に効果的だと思います。私も加藤ゼミナールを利用するまでは会社法の論点など知らず、概要だけ知っていたような状態だったのですが、加藤ゼミナールを受講して会社法の面白さに気づけましたし、問題もスラスラ解けるようになりました。
ご自身の肌に合うかどうかはわからないので、無料体験講義を受講してみると良いと思います。
行政法
2020年度 | 行政代執行の要件 |
2021年度 | 行政財産の使用許可の更新不許可処分の違法性・理由提示の程度 |
2022年度 | 法令の限定解釈・行政裁量 |
2023年度 | 行政行為の取消しの可否・限界 |
2024年度 | 行政裁量 |
行政法は、処分性などの行政救済法よりも、行政裁量などの行政法総論をメインに出題される傾向にあります。
問題自体は司法試験や予備試験と比べると量・質ともに落ちますが、40分しか時間がないことや、そもそも試験科目が多いことからすれば、かなり厳しいものだと思います。
試験制度が大きく変わっているので、それに合わせた対策が必要となりますが、行政法は覚える量が他の科目と比べると少ないので、暗記が苦手な方は行政法をしっかりやって得点源にするという戦略もあると思います。
問題の多くが基礎問の類題になっていたので、基礎問をしっかりやることが合格への近道である点においては、他の科目と変わらないです。