民法は、他の法律を理解する上でも基礎となる一番重要な法律であり、民法の学習を通じて、他の法律に共通する様々なことを学ぶことができます。
内田貴先生の民法Ⅰ~Ⅳ(通称「内田民法」)については、内田先生の少数説や有力説をあたかも通説であるかのように説明している箇所があるなどの理由から、受験生や合格者、実務家から批判されることがありますが、こうした箇所はほんのごく一部であり、私は優れた体系書であると考えています。
通読を進めるわけではありませんが、内田民法1を持っている方は、是非、3~6頁の『 [一]民法の学び方 』を読んでみましょう。法律科目を勉強する上で、極めて基本的かつ重要なことが書かれています。
以下では、特に重要な部分を項目ごとに引用させて頂きます。
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民法学習の心構え
” 多くの場合、民法は法学を学ぶ人びとが出会う最初の法律であり、民法の理解は民事訴訟法、商法、行政法、労働法、知的財産権法等、その他の実定法領域の基礎をなしている。したがって、民法の学習が、事実上、実定法への入門としての意味を兼ねざるをえない。 “(内田貴「民法Ⅰ1 総則」第5版(東京大学出版会)3頁)
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暗記か記憶か
” 法学の勉強が外国語の学習にたとえ得るなら、暗記せずに理解せよ、というアドバイスはやや奇異である。外国語の勉強に、暗記せずに理解せよ、などと助言する人はいないだろうからである。
…実際には、法学の学習に「記憶する」という要素は不可欠である。民法の学習だけでも、膨大な量の概念や原則・ルールを記憶しなければならない。優れた法律家の少なくともひとつの要素は、現実の問題に直面したとき、それに関連する法的情報をどれだけ多く的確に記憶しているかにあるとさえいえる。
…ただ、初学者にとって重要なのは、やみくもに何でも覚えればよいというものではなく、何を記憶すべきかを正しく選択しなければならないということである。…(中略)…重要なのは、適切な情報を、その内容を十分理解したうえで、適切な順序で記憶することである、そのためにも、そのような配慮のゆきとどいた教科書が必要である。”(内田貴「民法Ⅰ1 総則」第5版(東京大学出版会)3~4頁)
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条文と判例
” 法律は条文の形で書かれている。どのような理論も、条文が出発点である。…(中略)…したがって、民法の勉強に際しても、条文を常に参照することを怠ってはいけない。 “(内田貴「民法Ⅰ1 総則」第5版(東京大学出版会)4頁)
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学説について
” 確実にいえることは、古代ローマの昔から、いつの時代にも「有力な法学者」がいたことであり、そのような「権威」が法学には常に付きまとっていたということである。そのことを批判するのは容易だが、むしろ、…(中略)…法学の学説は、自然科学のように単に書かれた内容だけの勝負ではなく、対象が人間社会であるだけに、それを説く学者の全人格的な表現という側面を持っているからだとみるべきなのかもしれない(自然科学の天才には奇人・変人も少なくないが「非常識な優れた法学者」はちょっと考えられない)。 “(内田貴「民法Ⅰ1 総則」第5版(東京大学出版会)5頁)
執筆者
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院 修了
総合39位・労働法1位で司法試験合格
基本7科目・労働法・実務基礎科目の9科目を担当