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倒産法ってどんな法律?

2025年07月12日

1. はじめに

本記事では、司法試験の選択科目である倒産法とは何かを解説していきたいと思います。

本記事は、司法試験・予備試験で選択科目をどうしようか悩んでいる方向けに書かせていただきました。

倒産法に興味を持っている方、ぜひ読んでみてください。

 

2.「倒産法」という名称の法律はない!

実は、倒産法という名称の法律はありません。

我が国では、お金を弁済できなくなった経済的にまずい状態、すなわち倒産状態に関連して施行されている法的整理を総称して倒産法と呼んでいるにすぎません。

ここで” 法的整理 “と難しい言葉が出てきてしまいましたが、気にしないでください。

この” 倒産法 “に位置づけられている法律には、破産法、民事再生法、会社更生法及び特別清算法の4つがあります。

なお、司法試験・予備試験で出題されるのは、破産法と民事再生法の2つのみです。

 

3. なぜ倒産法という分野が必要なのか

では、なぜこうした制度が必要なのでしょうか。倒産法という分野がなければ、なにか不都合があるから、このような分野が設けられているわけです。

どういう不都合があるのでしょうか、見ていきましょう。

次のケースを考えてみてください。

債務者Aに対して、200万円の債権を有するBおよび200万円の債権を有するCがおり、債務者Aは全財産をあわせて200万円分の財産しか有していなかった。

民法、民事訴訟法、民事執行法を駆使して考えていきましょう。まず、債権者であるB及びCは、それぞれ有する債権を自由に行使することができます。

では、仮にCだけが権利行使していくことを考えていきましょう。民事保全を置いておくとすると、Cは、Aに対して200万円を請求する訴訟を提起しますよね。そして、Cは、勝訴判決を得る、と。Cは、当該勝訴判決を債務名義として強制執行を行っていきますね(債務名義という言葉が難しければ、勝訴して強制執行していく、というぐらいのイメージで結構です)。その結果、Cは200万円全額の弁済を受けることができる、と。

一方、Bさんのこと考えてみてください。Bさんは、200万円全額について回収できないことになりますよね。債務者Aの財産は200万円しかないから、Cさんが200万円全部弁済受けたら、Aの財産は何もなくなりますものね。

でも考えてみてください。BさんとCさんって、同じ200万円の債権を持っていたわけですよね。なのに、方や200万円全額もらえて、方や1円ももらえないという状況になっているわけです。

 ” これって不公平なんじゃない? ” 

倒産法は、このように考えるわけです。

すなわち、BさんとCさんの個別の権利行使を禁止して、債務者Aさんの財産を平等・公平に100万円ずつ分け合って、双方平等に満足を得ましょう、というのが倒産法が必要となる理由の1つです(難しくいうと、債権者間の公平が倒産法の目的の1つです)。

ほかにも、債務者の再起更生や社会的連鎖反応の防止などが倒産法の目的として挙げられますが、先ほどの債権者間の公平が1番重要といっても過言ではありません。

 

4. 最後に

前記1~3で見てきたとおり、倒産法というのは、民法、民事訴訟法、民事執行法といった一般民事法(難しいワードですが、民法、商法、民事訴訟法、民事執行法及び民事保全法を総称して ” 一般民事法 ” といったりします)をそのまま適用したら、不都合があるために、用意されている法分野です。

そのため、①一般民事法をそのまま適用することには、どのような不都合があるのか、②これを解消するために、倒産法は、一般民事法の規律をどのように修正していくのか、という視点で学習を進めることで、倒産法の規律を深く学ぶことができ、また、一般民事法の原則を正確に学ぶことができます。

この意味で、倒産法は民事系科目と相性がいいとされています。

民法の理解は倒産法の理解につながり、倒産法の理解は民法につながる(こともある。)のです。

私は、民法(特に担保物権と債権総論の部分)が苦手でしたが、倒産法を選択し、倒産法の学習を進めることで、比較的苦手意識を克服できました。

倒産法に興味がある方、ちょっと難しい部分も多いですが、倒産法を選択することも考えていただけると幸いです。

本記事が選択科目の選択の一助になれば幸甚でございます。ご覧いただきありがとうございました。

 

執筆者

深澤 直人

加藤ゼミナール専任講師・弁護士

上智大学法学部 卒業
中央大学法科大学院 修了(主席)
総合200番台で司法試験合格
第77期司法修習修了・弁護士登録
倒産法講座を担当