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【経済法】令和6年度重要判例解説について

2025年10月04日

1.経済法と重要判例解説の付き合い方

まず、試験対策の観点からいえれば、経済法においては、現時点では、重要判例解説の学習はマストではないと考えています。

その理由は、以下の2点です。

①百選が直近で改訂されていること

経済法については、百選が直近(2024年8月)で改訂されており、基本的に2023年(令和5年)までの判例・事例で重要なものについては百選でカバーされており、重判でカバーすべきものは少ないと考えられるからです。

②基本的な事項が問われており、事案を知っていたか否かで差がつくような問題が出題されていないこと

重要判例解説の事案がモデルになった事案が出題されることはありますが、常に問われていることは基本的な事項であり、百選の判旨を知らないと解答が難しいような問題は出題されていません。

比較的直近の問題である令和5年第1問では、活性炭談合事件(東京地判R4.9.15・重判R5.No.4)をベースにした事例が出題されましたが、当該事例における裁判例の判断を記憶していないと回答ができないような問題ではなく、事案を知っていたか否かで差がつくような問題ではありませんでした。

また、直近の問題は百選や重判にも掲載されていない事案をベースにした出題も多く、かかる事案についての知識を受験生に求めていることは考えにくいことから、出題者である司法試験委員としては、事案を作るに当たって実際の事案を一定程度参考にはしているものの、当該事案の知識を求めるような問題にはしないよう意識して作問をしているものと考えられます。

 

2.重要判例解説のランクについて

作問のベースになっている以上重要なものについては確認しておきたい受験生の方もいるかもしれませんので、経済法についても、今後出題のベースになりそうなものについてランクをつけさせていただきます。

Aランクについては出題の題材となる可能性が高いもの、Bランクについては出題の題材となる可能性があるもの、Cランクについては出題題材となる可能性が低いものの、Dランクについてはおよそ出題の題材となる可能性がないものになります。

No. 事件名 ランク 分野
1 Google(Yahoo)広告事件

(確約認定)

A 取引拒絶、取引妨害、私的独占
2 リニア談合排除措置命令取消請求事件 B 談合
3 大韓航空によるアシアナ航空の株式取得 B 企業結合
4 熊本漁連・佐賀県有明海漁協事件 A 拘束条件付取引
5 ASP Japan事件 A 抱き合わせ
6 エコリカ・キャノン事件 A 抱き合わせ、取引妨害、差止請求
7 食べログ事件(控訴審) C 優越的地位の濫用
8 学習塾フランチャイジーによる24条差止請求事件 C 優越的地位の濫用、差止請求
9 医療法人社団祐真会事件 D 景表法
10 中国電力事件 D 景表法

 

執筆者

加藤 駿征

加藤ゼミナール専任講師・弁護士

立命館大学法学部 卒業
中央大学法科大学院 修了
総合5位・経済法1位で司法試験合格
ニューヨーク州司法試験合格
大手企業法務系事務所に勤務する実務家弁護士
経済法講座を担当