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【倒産法】東京地裁平成26年4月21日判決 免責手続における非免責債権該当性

2025年11月27日

1. はじめに

今回は、東京地裁平成26年4月21日判決(以下、「本判決」といいます。)を扱います。

近年の司法試験・予備試験倒産法では、頻出分野の細かい知識を問う傾向にあります。本判決では、頻出分野である免責手続における非免責債権該当性(具体的には破253条1項6号の「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権」に該当するか否か)が問題になりました。

解釈論及び当てはめ双方で参考になる裁判例です。

 

2. 本判決の解説

(1)争点

本件の事実関係を簡潔に説明すると、以下の通りです。

すなわち、Yは、破産手続開始の申立てに際し、Xを債権者名簿に記載しなかった。裁判所はYに対して破産手続開始決定をし、その後、Yにつき破産手続廃止及び免責許可の各決定がなされた。Yにつき免責許可決定がなされた後、Xは、Yに対し、貸金残元金及びこれに対する約定遅延損害金の支払を求めた、というのが本件の事実関係です。

本件の争点は、破産者が債権者名簿の記載をしなかったことにつき過失がある場合に「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった」(破253条1項6号)場合に当たるか否かという点です。

(2)判旨

1.法253条1項6号の適用範囲(解釈論・抽象論)
 「法253条1項6号は、『破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権』を、破産免責の効力が及ばない非免責債権とする。
 裁判所は、提出される債権者名簿等の資料に基づいて破産債権者の存在を覚知し、これに対して通知等を行うところ、債権者名簿に不備があると、破産債権者に対して通知等がされず、当該破産債権者が手続関与の機会を奪われることがある。法253条1項6号の趣旨は、破産債権者をかかる不利益から保護する点にあると解される。
 そして、破産免責制度の目的が誠実な破産者の更生にあることに鑑みると、過失により債権者名簿への記載を遺漏した破産者は、手続関与の機会を奪われた破産債権者の利益を犠牲にしてまで保護すべき誠実な破産者には当たらないから、破産者に、債権者名簿への記載を遺漏したことにつき過失がある場合は、『破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった』場合に当たるものと解するのが相当である。」

2.Xに過失が認められるか(当てはめ・具体論)
 「YはXに対して督促の書面を送付しており、少なくともXが転居したとされる平成21年5月までは同書面がXに届いていたものと認められる…。とすれば、Xは、この時点においては、Yが債権者であることを認識していたものと推認できる
 また、YがXに対し、期限の利益を喪失した日の4日後である平成20年9月8日からXが転居するまでの間の9か月間、15回にもわたって督促の書面を送っていることからすると…、Xには本件債権の存在が強く印象付けられていたはずであり、たやすくその存在を失念するとは考えにくい。しかも、Xは、破産手続開始の申立てをするに当たり代理人を選任しているのであるから、代理人から破産手続に関する説明を受けるなどして、債権者名簿に遺漏があった場合に自己に生じ得る不利益を認識する機会もあったものと考えられる。とすれば、Xが転居したとされる平成21年5月から破産手続開始の申立てまで2年以上が経過していることを勘案しても、本件債権の存在を失念することがやむを得ないものとはいえず、Xは、破産手続開始の申立てに際し、提出する債権者名簿の記載に漏れがないか、慎重に確認してしかるべきところである
 かかる事情に加え、XとYとの間の契約では、Xの住所等に変更があった場合、Yに届け出なければならないものとされているところ…、仮に平成21年5月以降、Yからの督促の書面がXに届かなくなっていたとしても、それはXが上記契約の条項に違反し、住所の変更を届け出なかったのが原因であることを考え併せれば、Xが本件債権の存在を失念していたことにつき、過失がないとは認められない」(下線は筆者による)。

3.小括
 「以上のとおりであるから、本件債権は、法253条1項6号にいう『破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権』にあたる」。

(3)解説

まず、本判決の解釈論の論理のイメージをつけていきましょう。大枠としては、免責制度の目的は、誠実な破産者の更生にある、という更生手段説から出発しています。このような目的からすると、過失により債権者名簿の記載が忘れられた場合には破産債権者の手続関与の機会が奪われてしまうところ、このような犠牲を払ってまで破産者の更生を達成させるべきではない。そこで、過失により債権者名簿の記載が忘れられた場合も、「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった」場合に含まれる、という流れです。

また、本判決は、当てはめが事実➡評価の流れになっており、参考になります。どのような事実に着目し、どのような評価がなされているのかを押さえておくとよいかと思います。他の問題や他の科目でも共通することですが、事実には必ず評価を加えましょう。その上で、ご自身が定立した規範に当てはめ、最終的には条文の文言等に戻ってくるようにしましょう。

少し横道にそれましたが、本判決は解釈論及び当てはめのいずれも参考になる裁判例であり、一読しておくと理解が深まるはずです。

 

3. おわりに

免責手続は予備試験では令和6年度に出題されましたが、司法試験では平成29年度を最後に出題されておりません。

出題パターンがある程度固定化している分野ですので、再度の出題に備えて万全な準備をしておきましょう。

 

執筆者

深澤 直人

加藤ゼミナール専任講師・弁護士

上智大学法学部 卒業
中央大学法科大学院 修了(首席)
総合200番台で司法試験合格
第77期司法修習修了・弁護士登録
倒産法講座を担当