加藤 喬
加藤ゼミナール代表・弁護士
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院 修了
総合39位・労働法1位で司法試験合格
基本7科目・労働法・実務基礎科目の9科目を担当
論証パターンとは、論点ごとに事前に用意された論述例みたいなものであり、基本的に、論文試験で用いる自説を導くために「理由→解釈の結論」という構造になっています。
例えば、民法94条2項類推適用の論証例は次の通りです。
試験制度が旧司法試験から新司法試験に移行していた時期には、学者側から論証パターンが頻繁に批判されていました。なかには、事前に論証例を準備して記憶しておくこと自体を批判するものもありました。
しかし、やや極端な言い方をすれば、論証パターンも法律知識の1つであり、条文、定義、要件効果などと同様にしっかりと記憶するべきです。条文、定義、要件効果との違いは、論証パターンの使い方には様々なパターンがあるということです。
論証パターンは、①そのまま答案に張り付けることもあれば、②当該事案では論点が顕在化しない(A説、B説のいずれからも結論が変わらないなど)ために言及しないこともあります。
また、③当該事案における重要度などに応じて敢えて圧縮して書くこともありますし、④射程が及ばないため使わなかったり、⑤事案類型の違いを踏まえて変容させて書くこともあります。
さらに、⑥現場思考における土台として使うこともあります。
こうした事案ごとの論証パターンの使い方を踏まえずに、いかなる場面でも記憶した論証パターンをそのまま答案に張り付ける答案は批判されるべきですが、それは論証パターンが悪いのではなく、論証パターンの使い方が間違っているだけです。
特に①、③、⑤及び⑥では、その前提として、予め論点ごとの論証パターンを理解・記憶しておく必要があります。
論証パターンを事前に記憶しておかないと、その場で論証を組み立てることになり、その結果、不正確な論述をする危険が高くなります。また、論証の導出に時間がかかるため、問題分析、現場思考、答案作成等、本来時間をかけるべきことに十分な時間を使うことができません。
正しい論証を瞬時に導出して使いこなすためには、論証パターンの記憶は必須であると考えます。