弁護士深澤 直人
加藤ゼミナール専任講師
よく、「倒産法は、0.5科目分の科目」との言葉を聞きますが、この言葉が独り歩きしてしまい、初学者の方に誤解を与えているように思います。
そこで、今回は、「倒産法は、0.5科目分の科目である」という言葉の内実について、私見を述べさせていただきたいと思います。
最初に結論が来てしまいますが、倒産法は、初学者の方にとっては紛れもなく「1科目分の科目」です。
倒産法においては、否認権、取戻権、別除権、双方未履行双務契約、破産財団といった倒産法固有の概念が登場します。また、学習範囲も非常に広範囲に渡ります(伊藤眞先生の基本書ですと、1000頁を優に超えます)。
そのため、倒産法をはじめて学習する際は、他の科目と同様に「1科目」分の重さ、強度がある、というのが私の考えです。
もちろん、倒産法を学習するまでに、民法の担保物権や詐害行為取消権、相殺権といった分野をマスターしている方にとっては、倒産法の負担は少ないのかもしれません。ただ、実際にこれらの分野をマスターしている方は決して多くはないのではないでしょうか(むしろ、不得意、苦手意識を持っている方の方が多いのではないでしょうか…)。
先ほど、民法の担保物権や詐害行為取消権、相殺権といった分野をマスターしている方にとっては、倒産法の負担は少ない、と申し上げました。逆にいえば、倒産法において、別除権や否認権、相殺権をマスターすれば、民法の担保物権や詐害行為取消権、相殺権といった分野の理解がしやすくなる、ということです。
倒産法は一般民事法の特別法であるため、倒産法の理解が深まれば深まるほど、一般民事法である民法、商法や民事訴訟法等の理解が加速するという関係にあります。
その結果、民事系科目全体に対する苦手意識が小さくなるものと考えます(少なくとも、私は、倒産法とリンクする詐害行為取消権や相殺、担保物権について苦手意識がなくなり、むしろこれらの分野から出題してほしいとまで考えていました)。
このような形で一般民事法と倒産法とを行き来することによって、お互いの科目の理解が深まり、「倒産法って結局民法とかの延長線上にあるものじゃないか」という感覚になるときが来ます。そうすると、いつの間にか「あれ、倒産法プロパーで学習することって意外と少ないのではないか」と感じるようになります。この感覚を持つ頃には、既に合格レベルに到達しているはずです。
また、倒産法において記憶するべき論証等はそんなに多くはないため、上記のような感覚を持つ頃には、倒産法が「0.5科目分の科目」になっているように感じられる、と思います。
結論としましては、倒産法について合格レベルに到達している頃には、「0.5科目分の科目」であるように感じられる、というのが私の考えです。実際、試験直前期には、倒産法全体を約1時間~1.5時間で総復習できるくらいにはなります。
とはいえ、選択科目をどれにするかで悩んでいるときに、「倒産法は0.5科目っていうから楽なんだろうな」といって倒産法を選んでしまうと、聞いていた話と違う!!!となってしまうおそれがあります。本記事では、その誤解を解くために取り上げさせていただきました。
倒産法は決して容易な科目ではありませんが、その理解を深めることで民事系科目の底上げも図ることができる科目です。選択科目を迷われている方は、ぜひ倒産法も検討してみてください。受験生の皆様のご健闘を心より願っています。