会員ログイン

私が司法試験を目指した理由 谷口陸弁護士

2026年01月31日

弁護士谷口 陸

加藤ゼミナール専任講師

 

皆さん、はじめまして。このたび、ご縁があり加藤ゼミナールで講師を務めさせていただくことになりました弁護士の谷口陸と申します。

今回のコラムでは、私が司法試験を目指した理由について自己紹介も含めお話しした上で、最後に受験生の方々へメッセージを送らせていただきたいと思います。司法試験受験生、予備試験受験生、そしてこれから法律の世界に歩み出そうとしている方にとって、少しでも参考になるところがあれば幸いです。

私は京都府の福知山市という京都の田舎で生まれ育ちました。高校生になって進路や将来の夢を意識し始めた頃、ふと、小学生から毎朝欠かさず見ていた「めざましテレビ」のアナウンサーに強い憧れを抱くようになりました。そこから、私は、いつしか漠然と「フジテレビのアナウンサーになりたい」と思うようになっていきました。

その延長で、アナウンサー出身者が多い早稲田大学と慶應義塾大学を受験し、最終的に慶應義塾大学法学部に進学しました(今思えばなんともミーハーな理由です。)。法学部を選んだ理由も「つぶしが効きそうだから」という非常に平凡なもので、当時の私はまだ、法律家という仕事を具体的に想像したことすらありませんでした。

そんな私の人生が変わる出来事があったのは、大学入学後まもなく参加した、ある法学系サークルの新入生歓迎会でした。友人に誘われるまま軽い気持ちで参加したのですが、そこで偶然、OBとして参加していた弁護士の方と同席することになりました。ふくよかな体格に高級そうなスーツをまとい、どこか余裕のある笑みを浮かべるその姿は、田舎育ちの私にはひどく洗練されて見えました。

その方は「弁護士は儲かるぞ」と冗談めかしながら話しつつ、当時の私には眩しく映る生活ぶりを披露してくれました。都会的で自由で、どこかキラキラした世界。私は純粋に「こんな人生があるのか」と驚き、強く惹かれました。当時の私には「成功者」の象徴のように見えたのだと思います。気づけば、アナウンサーになりたいという夢はどこかに消えてしまい、「弁護士になりたい」という新しい目標が生まれていました。

このように、私が司法試験を目指した理由は決して立派なものではありません。社会正義を実現したいとか、弱者を救いたいといった崇高な理念から出発したわけでもありません。ただ、「かっこよさそう」「自分もあんな風になれるかもしれない」という、極めてシンプルで原始的な感情が出発点でした。しかし、私はむしろ、こうした“人間らしいプリミティブな動機”こそが、人を強く動かすエネルギーになるのではないかと考えています。「好きな異性にモテたいから頑張る」「嫌いなあいつを見返したいから頑張る」、そういった、人間らしい(人には言えないような)プリミティブな欲求は、時に理屈を超えて爆発的な原動力になるものです。

司法試験は長く険しい道のりです。日々の勉強は地味で、努力がすぐに結果として現れるものではありません。模試の結果や周囲との比較に心が折れそうになることもあるでしょう。そんなときに人を支えるのは、立派に飾った理念ではなく、自分の心の奥底に最初に芽生えた「動機の原点」です。私の場合は、何気なく参加した新入生歓迎会で出会った弁護士OBとの出会いがそれでした。「自分もあんな風になりたい」という感情は、時に苦しい勉強を続ける原動力になり続けました。

皆さんにも、司法試験を志した理由が必ずあると思います。それは他人に胸を張って説明できるものでなくても構いません。むしろ、誰にも言いたくないような、心の奥にそっとしまっている動機こそ、最も強い力を持つことがあります。もし受験生活の中で迷いや不安に押しつぶされそうになったときは、ぜひ最初の“プリミティブな動機”を思い出してください。それはあなたの背中を押してくれるはずですし、再び前に進む勇気を与えてくれるはずです。

司法試験という険しい道を歩む皆さんが、自分だけの動機を大切にしながら、一歩ずつ着実に前へ進まれることを心から願っています。そして、いつか「司法試験を目指してよかった」と心から思える日が訪れることを、心より応援しています。

 

谷口 陸

加藤ゼミナール専任講師・弁護士

慶應義塾大学法学部 卒業
予備試験合格
東京大学法科大学院 修了
総合200位台で司法試験合格
都内企業法務系事務所に勤務する実務家弁護士
法律実務基礎科目講座を担当