弁護士谷口 陸
加藤ゼミナール専任講師
加藤ゼミナール専属講師の谷口陸です。
これから連載形式で、私が司法試験の学習を開始した日から、合格を勝ち取った当日のことまでをおおよそ時系列に沿う形で執筆させていただきます。
第1回目は、多くの初学者が陥りやすく、そして私自身もかつてどっぷりと浸かってしまった「学習開始初期、具体的には基礎講座(インプット講座+論文アウトプット講座)の誤った受講法」について、お話しします。
私が司法試験の勉強を始めたのは、大学入学後、友人に勧められるがまま、当時合格者の大半を占めていた大手予備校の門を叩いたことがきっかけでした。
当時、予備校から提示されたカリキュラムは、最初の1年で基本7科目の「基礎講座(インプット)」をじっくり受講し、次の1年で「論文講座(アウトプット)」に取り組むという、2年計画の王道コースでした。当時の論文講座は、旧司法試験の過去問を用いた短文事例問題や一行問題がメインでした。
「まずは1年かけて、基礎講座を学んで完璧な基礎を作ろう」、当時、私は講師からそのような指導を受けていました。
当時、私が受講していた予備校のコースでは、オフラインで週に3回、1日3コマの講義が行われており、これに出席できない受講生用にオンラインの講義が配信されていました。1年目の私は、(通学も面倒だったので)オフラインで行われた講義を、主にオンラインで週に9コマ(約9時間)視聴していました。当時の講師からは「インプット講座のテキストを徹底的に反復し、頭に焼き付けることが重要だ」と指導されていたため、私はそれを愚直に実行しました。
当時の私の学習ルーティンは概ね以下のとおりです。
しかし、この「完璧主義」に近い復習の方法は今振り返ると、完全に誤っていたように思います。これは、1年かけて基礎講座を学び終わった後、2年目になり、論文講座を学習したタイミングで気付いたことでした。論文講座の「憲法」の講座を受講した際、1年目の最初に学んだ「憲法」の知識が、1年という歳月を経て、もはや影も形も残っていなかったのです。
1年目のインプット講座を終えた後の、2年目の論文講座の指導法も私の遠回りな勉強法に追い打ちをかけました。当時の講師の指示は、「講義を受講する前に、講義で扱う事例問題(旧司法試験の事例問題)を解き、自分なりの回答を作成してくるように」というものでした。
論文講座に入って、インプット講座の学習から約1年の時間が経ち、完全にその知識が抜け落ちていた私は、論文講座で扱う論文の事例問題を1問解くために、1年目の基礎講座のテキストを引っ張り出し、再度インプットするところから始めました。今思えば、これこそが極めて非効率なロスタイムでした。
苦労して数時間かけて作成した答案も、講師の解説を聞けば目も当てられないほどボロボロで「基礎を完璧にしたはずなのに、なぜ書けないのか?」と絶望しましたが、今なら分かります。「インプット講座でただ漫然と読んで覚えた気になった知識」と「論文で使える知識」は、全くの別物なのです。
インプット講座のテキストを何度読んでも、それだけでは真に論文で使える力をつけることは容易ではありません。インプット講座で出てきた論点や論証が「どのような場面で、どのように使われるのか」「答案に書く際の優先順位(メリハリ)はどうすべきか」は、実際に論文問題に触れて初めて理解できるものだからです。
もし私が今、知識ゼロの初学者に戻れるなら、間違いなく以下の「アウトプット併用型」の勉強法を採用すると思います。
① インプットは「理解6割」でいい。まずは1周を早く回すことを目指す。
まず、インプットの基礎講座については、(できれば1年もかけずに)基本7科目を素早く1周することが重要だと思います。講義の過程で理解できない論点に出くわすこともあるかもしれませんが、これに不必要に固執して立ち止まってはいけません。また、この段階で論証や定義を完璧に暗記しようとするのも得策ではありません(もちろん、最低限の理解は前提です。)。
② インプットとアウトプットを「同時並行」させる
インプットとアウトプットは可能な限り並行して行った方が遠回りなようで、長い目で見ると効率が良いです。例えば、インプットの基礎講座で民法の「時効」の論点を学んだら、その日のうちに、回答解説に目を通すだけでもいいので、時効に関する論文の問題を検討してみるのです。この、過程を経るだけでもインプットでの過程ただ眺めているだけでは身につかない、「論文で活かせる知識」(当該論点がどのような場面で顕在化し、どの程度、論証は答案に反映すべきなのか等)が身につき、スムーズに論文の学習に入ることができると思います。
③ 論文納座の予習で「悩む時間」を最小化する
論文講座の予習についてですが、これはある程度の時間をかけて検討して分からなければ、すぐに解答・解説を見てしまってよいように思います。インプット講座を学習してすぐの段階で重要なのは、「解答解説という正解の型や論点抽出の思考過程を、いち早く自分のものにする」プロセスだからです。
司法試験の範囲は膨大です。今振り返ると通学コースで1年かけてじっくり予備校側のペースに合わせる必要性は、低かったように思います。
オンラインの利点を最大限に活かし、インプットは短期間で終わらせ、一刻も早く「論文」という実戦の場に飛び込むこと。これこそが、多くの受験生にとって最も効率的な、合格への最短距離であると確信しています。