加藤 喬
加藤ゼミナール代表・弁護士
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院 修了
総合39位・労働法1位で司法試験合格
基本7科目・労働法・実務基礎科目の9科目を担当
主要な違憲審査基準には、次の3つがあります(便宜上、明白の原則などは取り上げません。)
厳格審査の基準 | ①目的が必要不可欠な利益の保護にあり、かつ、②手段が目的を達成するために必要最小限度のものでなければ、違憲である。 . ※目的・手段の双方につき、立法事実を根拠とした心証形成が必要。 |
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中間審査の基準 | ①目的が重要であり、かつ、②手段が目的との間で実質的関連性を有するものでない限り、違憲である。 . ※目的・手段の双方につき、立法事実を根拠とした心証形成が必要。 |
合理的関連性の基準 | ①目的が正当な利益の保護にあり、かつ、②手段が目的との間で合理的関連性を有するなら、合憲である。 . ※目的・手段の双方につき、立法事実を根拠とした心証形成は不要。 |
厳格審査の基準、中間審査の基準、合理的関連性の基準のうち、違憲・合憲いずれの結論もあり得るのは中間審査の基準だけです。
合理的関連性の基準では、理論上は違憲の結論もあり得ますが、立法目的が反憲法的である、観念上の想定としても目的促進が認められない、却って逆効果であるなど、かなり特殊な事案であるため、論文試験で出題される可能性はゼロに近いです。
厳格審査の基準では、手段必要性をクリアできません。ここでは、手段必要性とは、立法目的を達成できる唯一の手段であることを意味するため、より制限的でない他の選び得る手段による目的達成の度合いが法令上の手段に劣る場合であっても、手段必要性が否定されるからです。
他方で、中間審査の基準では、より制限的でない他の選び得る手段については、法令上の手段と同程度以上に立法目的を達成できることが要求されるため、実は、手段必要性を否定するのはそう簡単なことではありません。
法令上の手段による目的達成の度合いが5である場合、より制限的でない他の選び得る手段による目的達成の度合いが5未満であれば手段必要性が肯定され、5以上であれば手段必要性が否定されるわけです。
論文試験では、こうしたことを前提として、結論に合わせて違憲審査基準を選択せざるを得ません(あるいは、選択した違憲審査基準から導き得る結論に向かって当てはめをすることになります)。
もっとも、厳格審査の基準又は合理的関連性の基準を選択した場合であっても、当てはめを充実させるために、違憲・合憲どちらの結論もあり得る体で当てはめをすることになります。例えば、合理的関連性の基準や明白の原則を採用したと理解されている最高裁判例(猿払事件、小売市場事件など)でも、丁寧な当てはめを経て、合憲との結論が導かれています。
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