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【経済法】司法試験と相談事例集

2025年08月26日

 

1.はじめに

令和7年6月25日に公正取引委員会が、「独占禁止法に関する相談事例集(令和6年度)について」を発表しました。

受験生の方の中には、相談事例とは何かを知らない方もおられると思いますので、今回は相談事例とは何かをご紹介したいと思います。

 

2.相談事例とは

公正取引委員会は、独占禁止法の運用にあたり、独占禁止法違反行為の未然防止と事業者及び事業者団体(以下「事業者等」といいます。)の適切な事業活動に役立てるため、事業者等が実施しようとする具体的な行為に関して個別の相談に対応しており、相談者以外にも参考になると考えられる主要な相談の概要を取りまとめて毎年、相談事例集として公表しています。

当局の具体的な事例における考え方を示したものとして、実務的には極めて重要であり、私も独占禁止法の相談を受けた場合には、まずは相談事例において類似の事例がないか否かを検討しています。

 

3.百選と相談事例

相談事例は、百選では事業提携の分野でNo.36(建築資材メーカーの相互的OEM供給の事例)及びNo.37(資材購入のための電子商取引サイトの設立事例)が採用されており、両事例とも事業提携における公取委の考え方を理解するうえで極めて重要な事例になります。

 

4.司法試験と相談事例

相談事例は司法試験の題材とされることも多く、直近の令和6年予備試験も相談事例H25.No.4相談事例をベースにした問題と考えられます。

他方で、相談事例を題材にした問題であっても、相談事例を知らなければ解けないような問題として出題されているわけではなく、あくまでも原理・原則を確認するような問題として出題されていますので、相談事例については事細かに学習する必要はないと考えています。

相談事例は数が膨大であり、相談事例を幅広く勉強することは難しいと考えられますので、最低限、百選掲載のものについてはおさえるようにしておけば試験対策としては十分です。

相談事例に限らず、司法試験における経済法では細かな事例(知識)を知っているかどうかについては重点がおかれておらず、常に、法の原理原則を理解しているかという点が問われていますので、その点を意識しながら学習をすすめるとよいのではないかと思います。

 

執筆者

加藤 駿征

加藤ゼミナール専任講師・弁護士

立命館大学法学部 卒業
中央大学法科大学院 修了
総合5位・経済法1位で司法試験合格
ニューヨーク州司法試験合格
大手企業法務系事務所に勤務する実務家弁護士
経済法講座を担当