加藤 駿征
加藤ゼミナール専任講師・弁護士
立命館大学法学部 卒業
中央大学法科大学院 修了
総合5位・経済法1位で司法試験合格
ニューヨーク州司法試験合格
大手企業法務系事務所に勤務する実務家弁護士
経済法講座を担当
1.はじめに
予備試験の短答試験に合格された皆様おめでとうございます。
今回は予備試験の論文直前になりますので、直前にやっておくとよい過去問をお伝えしたいと思います。
2.出題予想
別の記事でもご紹介しましたが、予備試験の経済法の出題状況は以下のとおりです。
令和4年 | 企業結合(水平型・破綻企業の理論) |
令和5年 | 事業者団体(非ハードコアカルテル的な問題) |
令和6年 | 不公正な取引方法 |
司法試験における頻出分野であるハードコアカルテル(談合:6回、カルテル:4回)の分野での出題がありません。
また、直近で行われた令和7年の司法試験においても、ハードコアカルテル(談合、カルテル)を正面から問う出題はありませんでした。
したがって、令和7年の予備試験でハードコアカルテルからの出題がなされる可能性は非常に高いと考えられます。
3.取り組んでよくといい過去問
直近の令和6年の予備試験においては、基本的な問題が出題されており、令和7年においても基本的な問題が出題される可能性が高いと考えています。
談合及びカルテルについては、「黙示の意思連絡」の論点及び「離脱」の論点が頻出ですので、各論点を復習しておくとよいと考えます。
(1)黙示の意思連絡
カルテルの場合と談合の場合で推認の方法が異なります。
カルテルについては、東芝ケミカル事件(東京高判H7.9.25・百21)の規範を確認するととともに、平成30年第1問を解いておくことをお勧めします。
談合については、個別調整から意思連絡の対象である基本合意を推認するという推認方法のプロセスを確認するとともに、平成26年第2問の問題に取り組んでおくといいでしょう。
(2)離脱
離脱については、岡崎管工事件(東京高判H15.3.7・百33)の規範をおさえる必要があります。
また、不当な取引制限は、合意の時点で成立しますので、合意後の離脱が不当な取引制限の成否自体に影響を及ぼすことはない点についても受験生が勘違いしやすいところになります。
「離脱が成立するので、不当な取引制限は成立しない」等の記載をすると減点のおそれもありますので注意しましょう。
令和3年第1問で離脱の論点が比較的回答しやすいかたちで出題されていますので、どのように出題がされているのか、どのような事実を用いるべきなのかについて確認しておくといいと思います。
なお、平成30年第1問と平静26年第2問は全体を解くことをお勧めしますが、直前期で時間もないと思いますので、令和3年第1問については、離脱の論点の確認だけ行えば、全体を解く必要まではないと考えています。
(3)課徴金制度
課徴金制度については、司法試験においては条文操作ができれば回答できるような問題しか出題されておらず、予備試験でも同様の問題が付随的に出題される可能性があります。
上記で解くことをお勧めした平成30年第1問において課徴金制度(課徴金減免制度も含む。)が問われていますので、条文程度は現場で引けるように確認しておくといいと思います。
4.受験にあたっての心構え
予備試験の受験生は選択科目については準備をする時間が少ないため、受験生のレベルは決して高くありません。
仮に現場で難しい問題が出題されて、わからない場合パニックになってしまうかもしれませんが、他の受験生も同じ状態だと思いますので、焦らず、最後まで諦めずに取り組んでください。
それでは、あと論文試験まであと少しですが、合格に向けて頑張ってください。