会員ログイン

【経済法】司法試験と企業結合事例集

2025年12月09日

1. はじめに

令和7年6月18日に公取委が、令和6年度における主要な企業結合事例についてを発表しました。

受験生の方の中には、企業結合事例集とは何かを知らない方もいると思いますので、今回は企業結合事例集とは何かをご紹介したいと思います。

 

2. 企業結合事例集とは

公正取引委員会は、企業結合審査の透明性を確保し、予見可能性の向上を図る観点から、企業結合ガイドラインを策定・公表するとともに、各年度における主要な企業結合事例の審査結果を取りまとめ、公表しており、このとりまとめについて、「企業結合事例集」等と呼ばれています。

企業結合ガイドラインは、企業結合の考え方を示した重要なものですので、司法試験でも重要性が高いものになりますが、企業結合事例集は、公正取引委員会が実際の事例においてガイドラインの考え方をあてはめたものを毎年公表しているものと考えていただければわかりやすいのではないかと思います。

企業結合事例集は、公正取引委員会の具体的な事例における考え方を示したものとして、実務的には極めて重要であり、私も、企業結合に関する相談があった際には、まず、企業結合事例集において、類似の業界の事案を探し、公正取引員会が類似業界の市場等に関してどのような考え方をしているのかを確認・検討するようにしています

 

3. 司法試験と企業結合事例集

受験生に毎年改訂される企業結合事例集における事案を学習させることはあまりに酷ですので、企業結合事例を知らなければ解けないような問題が出題されることは考えにくく、企業結合事例集については事細かに学習する必要はないと考えています。

司法試験との関係では、まずは、百選に掲載されているもの(No.48~56)をおさえれば十分なのではないかと考えております。

他方で、「市場」の認定や「競争の実質的制限」の認定において、公正取引委員会が実際の事案において、どのような事情をみているのかについては一読の価値があると思いますので、自分が興味のある事例がありましたら、その事例だけでも数個読んでみると司法試験の回答を作成する上でどのような事情に着目すればいいのかの視点も深まると考えられます。

企業結合事例集に限らず、司法試験における経済法では細かな事例(知識)を知っているかどうかについては重点がおかれておらず、常に、法の原理原則を理解しているかという点が問われていますので、その点を意識しながら学習をすすめるとよいのではないかと思います。

 

執筆者

加藤 駿征

加藤ゼミナール専任講師・弁護士

立命館大学法学部 卒業
中央大学法科大学院 修了
総合5位・経済法1位で司法試験合格
ニューヨーク州司法試験合格
大手企業法務系事務所に勤務する実務家弁護士
経済法講座を担当