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【経済法】株式会社関家具に対する排除措置命令 公取委令和6年12月29日

2025年12月15日

弁護士加藤 駿征

加藤ゼミナール専任講師

1. 株式会社関家具に対する排除措置命令について

公正取引委員会は、2024年12月29日に、椅子メーカーである株式会社関家具(以下「関家具」といいます。)が、取引先小売業者に「Ergohuman」の商標が付された椅子(以下「エルゴヒューマン」といいます。)につき「参考売価」と称する小売価格(以下「参考売価」という。)で販売するようにさせていた行為等について再販売価格拘束(2条9項4号)に該当するとして、排除措置命令を行いました 。[1]

再販売価格拘束行為については、近時、違反行為を認定せずに、確約計画の認定や警告で処理している事案が登場しておりますが、本件はそのような事案とは異なり、公正取引委員会が違反行為を認定し、排除措置命令を行っている点で注目されます。

[1](令和6年12月19日)株式会社関家具に対する排除措置命令について

 

2. 事案の概要

(1) 関家具は、家具の卸売業等を営む者であり、エルゴヒューマンについて、中華人民共和国に所在する製造販売業者との間で日本国内における独占販売契約を締結した上で輸入し、取引先小売業者に販売していた。

(2) エルゴヒューマンは、主に自宅やオフィス等において使用される椅子のうち、人間工学に基づいて設計され、多数の機能を有するとされる椅子(以下「多機能チェア」という。)の中では、一般消費者の知名度が高く、人気が高い商品であること等から、一般消費者向けに多機能チェアを販売する小売業者にとって、品ぞろえに加えておくことが重要な商品となっていた。

(3) 関家具は、遅くとも令和2年2月頃以降、次の行為を行うことにより、取引先小売業者にエルゴヒューマンを参考売価で販売するようにさせていた。

① エルゴヒューマンを参考売価で販売する旨に同意した取引先小売業者にのみ販売する方針に基づき、エルゴヒューマンの取引を新たに開始する取引先小売業者からは、エルゴヒューマンを参考売価で販売する旨の同意を得るとともに、エルゴヒューマンの参考売価を引き上げる際には、その都度、取引先小売業者から、引上げ後の参考売価でエルゴヒューマンを販売する旨の同意を得ていた。

② 取引先小売業者のインターネット上におけるエルゴヒューマンの販売価格を監視すること及び取引先小売業者から参考売価を下回る価格でのエルゴヒューマンの販売(以下「値引き販売」という。)を行っている他の取引先小売業者に関する苦情を受けることにより、値引き販売を行っている取引先小売業者が判明した場合、当該取引先小売業者に、参考売価で販売するよう要請していた。

③ 前記②の要請にもかかわらず値引き販売を継続した取引先小売業者に対しては、エルゴヒューマンの出荷価格の引上げを行うなどしていた。

(4) 関家具の上記(3)の行為により、取引先小売業者は、エルゴヒューマンをおおむね参考売価で販売していた。

引用 株式会社関家具に対する排除措置命令について(違反行為の概要

 

3. 再販売価格拘束行為該当性

(1) 条文

再販売価格拘束は、独禁法2条9項4号に規定されています。

(2条9項4号)
自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。

(2) 行為要件該当性

本件では、「取引先小売業者にエルゴヒューマンを参考売価で販売するようにさせていた。」との認定がされており、関家具の取引の直接の相手方である取引先小売業者に対する価格拘束として、上記のイが適用されています。

一般論としては、再販売価格の「拘束」に該当するためには、事業活動の制限が契約上の義務として定められていることを要せず、それに従わない場合に経済上なんらかの不利益を伴うことにより現実にその実効性が確保されていれば足りると考えられています。

本件では、関家具は、再販売価格について参考価格で販売することの同意を取引先小売業者から得ています(上記①)し、遵守状況を監視し(上記②)、従わない場合には、出荷価格の引き上げを行うなど(上記③)経済上の不利益を課しているため、不利益に伴う実効性の確保が認められる事案であったと考えられます。

なお、関家具のエルゴヒューマンが取引先小売業者にとって、重要な商品でなければ出荷価格の引き上げが実効性の確保につながる行為とまではいえないと考える余地もあるかもしれませんが、本件では、上記(2)でエルゴヒューマンが取引先小売業者にとって、重要な商品であることの認定もなされています。

司法試験の答案でもこのような事情をしっかり拾って事実認定を行う必要があります。

(3) 効果要件該当性

再販売価格拘束の公正競争阻害性は自由競争減殺効果のうちの、価格維持効果の点に求められていますが、再販売価格拘束は、「正当な理由がないのに」との文言が示すように、原則違法の行為類型と考えられているため、実務上、行為要件を満たせば(行為が実効性をもって行われていれば)、特段の正当化事由がない限り公正競争阻害性を認定できると考えられています。
したがって、本件の排除措置命令においても、上記の実務に従って、公正競争阻害性の認定や正当化事由の詳細な検討は行われていません。

 

4. 最後に

再販売価格拘束は、司法試験でも出題されたことのある条文であり、重要度の高い条文ですので、これを機に条文の復習を行うことをおすすめします。

加藤 駿征

加藤ゼミナール専任講師・弁護士

立命館大学法学部 卒業
中央大学法科大学院 修了
総合5位・経済法1位で司法試験合格
ニューヨーク州司法試験合格
大手企業法務系事務所に勤務する実務家弁護士
経済法講座を担当