司法試験だけでなく、2022年度からは予備試験でも新たに選択科目が課せられるようになりました。選択科目は8科目もあり、何を選択すべきか迷う人も多いのではないでしょうか。そこで、今回は、2回目の司法試験で逆転上位合格を果たすことができた立場から労働法を勉強するうえで注意すべきポイントについて紹介します。
受験生時代のしくじり経験
労働法は、労働者の利益と使用者の利益を調整する法律です。受験生の方には、社会人経験がある方や、アルバイト経験がある方など、まさに労働法が適用される中で生きてきた経験をしてきた方も多いのではないでしょうか。私自身も、学生時代に、アルバイト経験はあったため、労働法を勉強した入り口段階では躓くことなく、勉強を開始できました。しかし、イメージしやすいことから、興味がでてきて、細かい点まで気になり、いろいろな教材に目をむけてしまいました。その結果、1回目の司法試験では、労働法で下位40%の成績をとってしまい、試験結果も不合格となってしまいました。そこで、勉強していたわりに点数がつかなかった要因について2つ紹介したいと思います。
試験対策から離れてしまった勉強
私は、判例を学習している際、なぜこの結論になるのか腑に落ちないときが多々あいました。そういった際、基本書を参照し、疑問点を解消していました。労働法は、菅野先生の基本書をはじめ、いろいろな先生が執筆された基本書がありますので、多くの基本書を読み、勉強指定ました。一見、基本書を参照するという点でしっかりと勉強している感じはするのですが、試験対策という点では時には有害となる場合もあります。なぜなら、労働法の試験では、判例に沿った記述をすることが求められているからです。判例に触れていなければ高得点は望めません。そのため、いくら学説を勉強して、判例の帰結よりもいい理由付けを学んでも得点にはつながりません。 試験対策としては、判例至上主義とわりきって勉強する姿勢が大切 です。1回目の受験の際は、その姿勢が足りず、結果に結びつきませんでした。興味がわくのはいいことですが、基本書を使用するにしても、判例の見解を覚えやすくするため限度で参照する程度にとどめるべきです。
ここで、強調したいのは、どの科目にも共通しますが、 趣味的な勉強と試験対策をしっかり分けて勉強すること です。試験対策という観点からいうと、労働法は、判例を正確に暗記する作業が重要になってきます。判例を記憶する作業というのは、正直、あまり面白くありません。むしろ、興味がある科目であるにもかかわらず、ただ暗記する作業を行うというのはよりしんどいと思います。しかし、 趣味的な勉強は合格後にいくらでもできます。 実際、私自身も合格後に、基本書や実務書を参照し、理解を深めることを楽しんでいます。趣味の勉強は合格後、好きなだけできるため、受験時代は、趣味と切り分けて試験対策という観点からの勉強を意識的に行うことが必要だと思います。
自作のまとめノートをゼロから自分で作る
私は、1回目の受験にあたって、まとめノートをゼロから自作で作成していました。興味をもっていたことから、演習書や過去問を解いた後に、基本書や判例集を利用しながら、作成していきました。労働法は興味があったことから、勉強は進んでいきました。そこでは、判例の規範を記載したうえで、疑問に思った点については、基本書で調べて、まとめノートに随時加筆していくという方法で行いました。一見、疑問点について解消していっているため、成長しているように見えますが、自分の疑問点が試験対策という観点から重要とは限りません。むしろ、労働法の試験では、判例を正確におさえることが重要です。また、高得点を取るためには、判例であげられた考慮要素についてもおさえておかなければならず、規範だけおさえても試験対策という観点からは十分ではありません。そういった意味で、自分でまとめノートを作ったのはいいものの、その内容は合格のために必要十分ではありませんでした。 内容が不十分な論証集をいくら覚えこんでも、不十分な知識しか身につかず、得点には結びつきません。 そのため、2回目の受験に向けては、合格に必要な知識が網羅されているテキストを利用して、暗記したほうがよいと考え、加藤ゼミナールの講座を受講しました。加藤ゼミナールの講座は、覚えるべき事項が明示されているため、何が覚えるべきか自分で判断する必要はなく、ただひたすら記憶する勉強に集中できました。受験生時代を振り返ると、自分でゼロからまとめノートを作成したことはとても後悔しています。
趣味と試験対策を切り分ける重要性
1回目の受験は、散々な結果に終わってしまいましたが、上記の反省を活かして、2回目の司法試験の労働法では、上位約7%の成績で合格することができました。受験時代を振り返ると、コロナウイルスの拡大で、1回目の司法試験が延期となり、その影響で合格発表も1月になったため、不合格が判明したときは、次の5月の試験まで3カ月半しかありませんでした。その短期間の勉強でも、労働法で逆転上位合格できた理由は、暗記する作業を繰り返し行ったからだと思います。また、短期間であったからこそ、余計なことを考えず、試験対策という観点のみに絞って勉強することができました。労働法は、試験対策という観点を意識して勉強すればするほど成績があがる科目であるため、予備試験・司法試験どちらでも大きな武器になると思います。
相田光輝さん
大阪大学法科大学院(既修者コース)卒業
令和3年司法試験合格者(2回目合格、労働法上位7%)
不合格から900番upでの2回目逆転合格