加藤ゼミナールについて

法科大学院受験では資格や制限はある?求められる条件や資格・制限の注意点について解説

司法試験は法科大学院修了、ないしは予備試験合格という高い受験のハードルが課されていますが、それ以外には何らの年齢や国籍等による制約もない、誰にでも門戸の開かれた試験です。しかし、法科大学院の受験にあたっては資格制限や実質的な年齢制限が設けられています。

本記事では法科大学院、予備試験それぞれの受験資格について解説し、司法試験合格後に注意すべきポイントについても解説します。

司法試験受験、もしくは法曹界への就職にあたり何らかの条件に抵触しないか確認されたい方は本記事で重要なポイントを網羅していますのでぜひご一読ください。

司法試験は受験資格さえ得れば何の制限もなく受験可能

司法試験受験においては、「法科大学院修了(2023年度以降は一定の条件を満たした修了見込者も含む)」もしくは「予備試験合格」のいずれかの条件を満たすことで受験資格を得られ、それ以外は年齢の上限・下限の制限もなく、国籍や前科の有無といった要件も受験資格を制限することはありません。

回数制限としては受験資格を得てから5年間、最大5回の受験が可能で、資格を喪失した場合は再度受験資格から得なおす必要があります。

法科大学院受験には大学卒業の資格が原則必須

法科大学院に入学するためには入学試験に出願し試験に合格する必要がありますが、その出願資格としては原則大学を卒業していること、もしくは卒業見込みであることが求められます。

既修者コースに入学する場合はさらに法学部卒であること、もしくは法学部卒の相当する学力が証明できることが求められますが未修者コースであっても大学卒、もしくは大学の卒業見込みであることは必須です。

ただし、法科大学院によっては大学を卒業していなくとも認定試験合格などそれに代わる何らかの資格・証明により受験資格を得ることが可能な場合もあります。

また、年齢制限については具体的に設けられているわけではありませんが、大学卒ないしは卒業見込みの要件を満たすためには「飛び級」の制度を利用したとしても実質的には一定の年齢制限がかかっていると言えます。

予備試験であれば一切の制限はなく受験できる

司法試験の受験資格を得るもう一つのルートである予備試験の受験においては司法試験同様一切の制限はありません

また、司法試験の回数制限は(一回の受験資格に対して)最大で5回ですが予備試験の受験においては一切の回数制限もありません

法曹界で就職するにあたっては「欠格事由」に注意

受験には一切の制限のない司法試験ですが、法曹界に入るにあたっては「欠格事由」に注意しなければなりません。

具体的には試験合格後、法曹職につくにあたっては司法修習を行う必要がありますが、司法修習生は国家公務員として扱われます。したがって、国家公務員法38条(国家公務員の欠格事由)に抵触する場合、司法修習を受けることができません。

国家公務員法38条における欠格事由

  • 禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
  • 懲戒免職の処分を受け,当該処分の日から2年を経過しない者
  • 日本国憲法施行の日以後において,日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し,又はこれに加入した者

「執行を終えるまで」とは、刑が消滅することを指し、刑を終えてから10年間罰金以上の刑に処されなかった際に成立します。例えば懲役刑を刑期満了で終えた後、10年経過した場合などを指します。

「執行を受けることがなくなる」とは執行猶予つきの刑を受けた後、無事執行猶予期間を終えられた場合を指します。

欠格事由に該当する場合には、その欠格事由が消滅した後でなければ司法修習を受けられない点に注意しましょう。

なお、司法試験合格には有効期限はないため、仮に欠格事由に該当する場合でも試験に合格後、欠格事由がなくなった後に司法修習を受けることは可能です。

また、検察官・裁判官にもそれぞれ同等の欠格事由による資格制限(裁判所法第46条第1号、検察庁法第20条第1号)があり、選考の厳しさも含めて欠格事由該当者の着任は実質非常に難しいと言えます。

弁護士の場合は弁護士法7条により欠格事由が定められています。

  • 禁錮以上の刑に処せられた者
  • 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
  • 懲戒の処分により、弁護士若しくは外国法事務弁護士であつて除名され、弁理士であつて業務を禁止され、公認会計士であつて登録を抹消され、税理士であつて業務を禁止され、又は公務員であつて免職され、その処分を受けた日から三年を経過しない者
  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

弁護士は司法修習後の考試(二回試験)に合格すれば登録はできるため、欠格事由が消滅すれば弁護士として業務につくことが可能です。

 

まとめ

司法試験は制度設計上は誰にでも門戸の開かれた試験です。ただし、その前段階で受験資格を得る際に求められる条件の一つである法科大学院への入学にあたっては学歴や実質的な年齢による制限があることに注意が必要です。大卒、もしくは卒業見込みでない方で法科大学院を検討される場合、代替となる資格について各院の条件をご確認ください。

また、司法試験自体には制限はなくともその後の修習や就職においては欠格事由が問題となりえます。法曹を目指すにあたっては日常より高い倫理観が求められることもぜひ併せてご認識ください。