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社会人や予備試験受験生にもおすすめできる労働法

合格者の試験対策(労働法上位合格 相田さん)

司法試験だけでなく、2022年度からは予備試験でも新たに選択科目が課せられるようになりました。選択科目は8科目もあり、どの科目を選択すればいいか迷う方もいるでしょう。そこで、今回は、受験生のみなさんにもなじみがある労働法について、紹介します。

労働法はイメージしやすい科目

「労働法」と聞いてみなさんは具体的にイメージしますか?多くの方は、働くときに適用される法律ということをイメージすると思います。そのため、社会人の方はもちろんのこと、学生の方でもアルバイト経験がある方であれば、なんとなくイメージすることが可能だと思います。このように、科目の全体像についてイメージしやすいことから、8科目ある選択科目の中でも受験生にとって1番とっつきやすい科目といえるでしょう。

社会人・予備試験受験生にもおすすめ

社会人経験がある方には、特に身近な法律であるといえます。会社員の方であれば、会社と雇用契約を締結し、労働を提供し、賃金を得ているため、労働法が適用されるフィールドに実際身を置いていたことになります。そのため、実際に、労働法を勉強すれば、「この論点は、あの場面の問題だ」と実体験をもとにイメージする機会も多いと思います。このように、実体験をふまえて勉強をすることができれば、机上の学習のみと比較して、印象に残ることは間違いないです。人間は学んでも時間がたてば忘れる生き物ですが、実体験とリンクしてインプットすることにより記憶の定着が期待されます。社会人経験がある方は、ぜひそのバックグラウンドをいかし、労働法を選択して得意科目に仕上げていっていただきたいです。

事例問題の検討

では、実際、労働法はどのようなことを勉強するのか見ていきましよう。

〈事例〉

Aさんは、X会社で正社員として勤務しています。ある日、1日10時間労働した日がありました。Aさんは、残業代を請求できるでしょうか。

〈解説〉

労働基準法では、1日8時間を超えて労働させてはならず、それを超えて労働させた場合には時間外労働となり、割増賃金(残業代)を支払わなければならない旨が規定されています。社会人経験がある方はもちろん、アルバイト経験がある方もこの知識自体については、知っている方も多かったのではないでしょうか。そうすると、Aさんは、X会社に対して2時間分の残業代を請求できそうです。しかし、X会社の事情やAさんの立場によっては必ずしもその結論にはなるとはいいきれません。

(1)みなし労働時間制が適用される場合

Aさんが外回りの営業マンであり、外回りの後会社に戻らず直帰した場合を想定してみましょう。会社としては、Aさんが実際に何時まで働いたかは不明です。そこで、労働基準法では、「労働時間を算定しがたい」といえる場合には、所定労働時間、すなわち、8時間働いたものとみなすことができると規定しています(労働基準法38条の2)。「労働時間を算定しがたい」といえるかについては、判例があります(阪急トラベルサポート事件)。この要件に該当する場合、Aさんは、10時間働いていたとしても、残業代は請求できません。

(2)Aさんが管理職であった場合

Aさんが、飲食店の店長であったと想定してみましょう。労働基準法では、管理監督者に該当する場合、労働基準法による労働時間に関する規定が適用されていない旨明記されています(労働基準法41条2号)。そのため、店長であるAさんが管理監督者に該当すれば、10時間働いたとしても、残業代は請求できないことになります。この点についても裁判例があります(日本マクドナルド事件)。

〈勉強法〉

労働法では、まず、「労働時間を算定しがたい」に該当するか、または、管理監督者に該当するか等の条文上抽象的な要件について、判例(裁判例)の規範を正確にインプットする必要があります。そのうえで、考慮要素およびあてはめで問題となるポイントまで勉強することが求められます。実際の司法試験でも、判例の事案がそのままベースとなった問題が出題されたこともあります(令和2年度司法試験)。そのため、労働法は、判例の勉強がとても重要となってきます。

最後に

事例問題で検討した箇所はいずれも司法試験でAランクの論点であり、試験対策としておさえておかなければならない内容です。実際、Aさんが管理職であった場合については、平成20年度司法試験にも出題されています。この事例では、1日8時間超えて労働したら残業代がでるという一般常識からスタートして、例外的に残業代が発生しないケースはあるかということを検討しました。このように、 労働法はある程度常識的な観点から学習が始まるので、勉強開始の段階でわからなくて挫折することも少ない と思います。私自身、企業の法務部に在籍した経験がありますが、実際に業務の中で体験したことについて、「労働法で勉強したところだ!」という経験が多々あり、業務内容と勉強した知識がリンクしました。特に、社会人経験がある方は、ご自身の経験がイメージのしやすさをよりリアルなものにしてくれるため、具体的なイメージをもって勉強することが可能です。その利点を活かし、労働法を選択して、選択科目を得点源にしてください!

執筆者情報
相田光輝さん
大阪大学法科大学院(既修者コース)卒業
令和3年司法試験合格者(2回目合格、労働法上位7%)
不合格から900番upでの2回目逆転合格