加藤ゼミナールについて

2026年司法試験・予備試験におけるパソコン受験(CBT方式)導入

2026年の司法試験と予備試験において、受験方法が筆記式からパソコンを利用したCBT方式に変更される予定です。

論文試験が筆記式からCBT方式に切り替わることに伴い、次の5つの点に留意する必要があると考えます。

 

 

1.タイピングが苦手なら訓練必須

筆記に比べて、タイピングのほうが受験生間で速度の違いが生じやすいです。

筆速も受験生ごとに違いがありますが、速い人と遅い人とで、どんなに差があっても1,5~1,6倍程度です。

これに対し、タイピングが苦手な人と得意な人とでは、2~3倍の速度の違いが生じ得ます。

こうした差をできるだけ小さくするために、タイピングが苦手な人はタイピング講座等でちゃんと訓練をする必要があります。

タイピングは実務でも使いますし、タイピングの速度は仕事の速度に直結しますから、合格後も見据えた投資という意味でも、ちゃんと訓練しておきましょう。

 

2.脳内処理速度による差が開きやすい

筆記に比べて、タイピングの方が、脳内処理速度が答案作成の速度に反映されやすいので、受験者間において脳内処理速度による差が開きやすくなります。

これは、脳内処理速度が遅い人にとってはかなり不利です。

だからといって、ある程度の年齢(20~30歳)になると、脳内処理速度を底上げすることが困難になります。

そこで、元々の脳内処理速度が遅い人は、論文試験における問題処理の速度を高めるために、定義、論証、要件・効果、処理手順、答案の書き方など、記憶するべきことをしっかりと記憶して、試験の現場で考える時間を極力減らす工夫をする必要があると考えます。

 

3.問題の分量・形式・内容が変わる可能性

筆記からパソコン利用に切り替わることに伴い、問題の傾向がこれまで以上に記憶よりも理解を重視するものに変わる可能性もあります。これに伴い、問題の形式も変わる可能性があります。

また、時間内に処理できる情報量が増えることに伴い、問題文のボリュームが増える可能性もあります。

こうした変化に伴い、受験生の試験対策の在り方、さらには予備校の講義・教材の在り方も変わるかもしれません

 

4.物量戦法型の答案が通用しなくなる可能性

タイピングが早い人は本当に早いですから、CBT方式を導入して枚数制限や字数制限を設けない場合、タイピング速度の速い受験生による物量戦法型の答案が一定数出てきて、質が低いのに配点項目をそれなりに拾っているから合格水準を満たしてしまいという事態が生じかねません。

法務省や司法試験委員会がこうしたタイプの受験生を合格させたいと思うわけがありませんから、物量戦法では合格できないようにするための対策が講じられる可能性があります。

1つ目は、問題又は設問ごとに枚数制限や字数制限を設定するという方法です。もともと、司法研修所の二回試験でも一部の科目において設問ごとの枚数制限が設定されることがありますし、予備試験の民事実務基礎科目における準備書面問題でも枚数制限(答案用紙1頁程度)がありますから、CBT方式の導入に伴い枚数制限や字数制限が設けられる可能性は低くありません。

2つ目は、採点方式を変更して減点方式が導入される可能性です。現行の論文試験では、加点方式が原則とされており、論理矛盾も含めて間違ったことを書いても加点されないだけであり、それを超えて積極的に減点されるという事態は極めて稀です。しかし、CBT方式導入後は、物量戦法対策の一環として、加点方式と並行して減点方式も導入される可能性があります。

 

5.単語登録・予測変換機能が使えない可能性

CBT方式の具体的詳細が発表されていないので、断定することはできませんが、試験では、法務省側が用意したパソコンを利用することになると思われます。

仮にそうなった場合、単語登録機能が使えなかったり、予測変換が普段通りに機能しない可能性があります。

試験開始前に各自で単語登録をする時間が設けられる可能性もゼロではありませんが、不正防止の観点からも、あまり現実的ではありません(ただし、主要な法律用語が単語登録された状態のパソコンが用意される可能性もあります。)。

仮に単語登録機能を使用できないと、単語登録機能を頻繁に使用している人にとっては、文字の入力方法がだいぶ変わってきますから、この点に注意する必要があります。

また、法律用語は独特なので、予測変換が上手く機能しないことにより、例えば「さいけん→再建」「さがい→佐賀井」などのように、変更候補の1番目に普段使用している正しい法律用語が出てこない可能性もありますから、この意味においても、普段利用しているパソコンによる答案作成に比べて文章入力時の負担が増えると考えられます(ただし、主要な法律用語について予測変換機能が設定された状態のパソコンが用意される可能性もあります。)。

さらに、筆記に比べてパソコン入力では誤字脱字が発生しやすいので、答案作成後に誤字脱字をチェックする時間を設ける必要もあります。

こうしたことに配慮しながら、パソコンを使った答案練習を必要があります。

 

以上が、司法試験・予備試験におけるCBT方式導入に関する私の考えです。

新たに情報が発表されましたら、改めて皆様に共有いたします。

 

執筆者
加藤 喬 加藤ゼミナール代表・弁護士
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院 修了
総合39位・労働法1位で司法試験合格
基本7科目・労働法・実務基礎科目の9科目を担当