加藤ゼミナールについて

【2023年施行】法科大学院大在学中に司法試験受験が可能になる影響は?

2023(令和5)年度より司法試験制度に大きな変更がなされます。

  • 法科大学院在学中の司法試験受験が可能に
  • 司法試験および予備試験の日程変更

本記事では制度改革の詳細や趣旨や対象者となる条件、予測される影響などを解説します。

2023年(令和5年)度以降の予備試験、司法試験の受験を予定している方だけでなく、これから法科大学院の受験を予定している方にとっても重要な内容なので、ぜひご一読ください。

 

法科大学院在学中に司法試験の受験が可能に

2023年(令和5年)度より、所定の条件を満たした大学院生は在学中でも司法試験の受験が可能になります。具体的には以下の条件を満たす学生が対象です。

  • 所定の単位を取得すること
  • 1年以内に法科大学院を修了見込みであること

従来、法科大学院生が司法試験の受験資格を得るには原則として大学院を修了する必要がありました。

例外的に、在学中に予備試験に合格した場合は法科大学院の修了を待たず司法試験受験の資格が得られます。ただし、その場合は法科大学院修了に伴う受験資格を同時に得ることはできず、大学院を中退する必要があります。

今回の制度改革により条件を満たした場合には修了を待たず司法試験の受験が可能となります。

変更後の制度を利用する場合でも受験資格の有効期限は初回の受験の年度を含めて5年間という点に変更はありません。

 

制度変更の趣旨

今回の制度変更の趣旨は、法科大学院を修了して司法試験の受験資格を得るまでのプロセスを短縮することにより時間的負担を軽減すること、優秀な人材に短期間での法曹就業へのルートを用意することです。

従来の制度では大学卒業から法科大学院修了まで最短(大学4年+既習コース2年)で6年の時間を要しました。予備試験に合格した場合のみ、このプロセスを短縮できますが、予備試験は合格率3~4%の狭き門。在学中の合格者はごく少数でした。

法科大学院を経て司法試験を受験するまでの期間の長さや学費の負担が大きく法曹界への就業を断念するケースや伴って法科大学院の人気が減少し、地方の院を中心に新規受付停止が相次いでいる課題を解決するため、今回の制度が施行されます。

「法曹コース」もプロセス短縮化を目的に導入

2019年(令和元年)以降の法学部入学者を対象とする「法曹コース」すなわち、希望者で所定の条件を満たす者を「大学3年間・法科大学院2年間」の計5年間でカリキュラムを修了させ、司法試験受験資格を付与する制度も同様の目的で導入されています。

ただし、法曹コースは対象者が大学の法学部生に限られ、成績面・カリキュラム面でも高いハードルを要する上、そもそも法曹コースが用意されていない大学・大学院も少なくありません。

今回の制度変更でより広い対象者に早期受験の門戸が開かれることが期待できます。

制度変更に伴い司法試験・予備試験の実施日程も変更

制度改革に伴い、予備試験および司法試験の開催日程も2023年(令和5年)度より変更されます。

主なスケジュール変更
変更前 変更後
司法試験 5月 7月
予備試験 短答式試験:5月
論文式試験:7月
口述試験:10月又は11月
短答式試験:7月中旬
論文式試験:9月上旬
口述試験:翌年1月中旬又は下旬

元来司法試験が実施されていた5月は法科大学院の前期が開講されているため、在学中の司法試験受験者に配慮したスケジュールが組まれています。

制度改革により予想される変化

今回の制度改革に伴い、以下のような状況の変化が予想されます。これから司法試験・予備試験および法科大学院入試を予定している場合は参考にしながら戦略を立てることをおすすめします。

法科大学院の倍率増加

法科大学院在学中に司法試験を受験できることにより、法科大学院に入学するという選択に柔軟性が高まり入学希望者が増加する可能性があります。

法科大学院の受験者層の変化

法学部卒でない受験者からの未修コースの受験や社会人受験が従来よりも増加する可能性があります。

従来の「大学→法科大学院」のカリキュラムを短縮して司法試験を受けるには「予備試験合格」「法曹コース」の選択肢がありますが、いずれも早期段階からの高い学力を要する選択肢です。

未修コースの3年目にあたる年度での受験が可能になることで、未修者であっても比較的早期に法曹界に進出できる選択肢が増えたことで未修者の出願が増えるかもしれません。

また、早期受験の選択肢が増えたことで元来法科大学院をそもそも選択に入れていなかった社会人の受験が増える可能性もあります。

予備試験の受験者数の増加

在学中から予備試験を受験する法科大学院生が増加する可能性があります。

法科大学院からの早期受験が可能となっても受験に制限のない予備試験の重要性が大きく低下する可能性は低いでしょう。

予備試験の日程が従来よりも遅くなり、また法科大学院の前期日程とも重複しないため法科大学院生の受験のハードルは下がり、結果として半ば力試しの受験も含めて予備試験受験者が増加する可能性が考えられます。

学習スケジュールやカリキュラムの変化

法科大学院在学中に司法試験が受験可能になることで、法科大学院や司法試験予備校のカリキュラムが変化する可能性があります。

具体的には司法試験が実施される大学院修了の年の前期終了時点で一通りの試験対策が完了するようにカリキュラムが前倒しで組みなおされる可能性も考えられます。

まとめ

2023年(令和5年)に施行される司法試験制度の改革の重要なポイント・趣旨をまとめました。

  • 法科大学院在学中、条件を満たすことで司法試験受験の資格を得られるようになる
  • 制度改革に伴い、司法試験・予備試験の日程が変更される
  • 制度改革に伴い、法科大学院や予備試験の受験者数や受験者の層などが変化する可能性がある

制度の改革や、伴っての受験者の行動の変化の動向にも気を配りながら受験戦略を立ててみてください。