司法試験予備試験(予備試験)の出題科目の中には「一般教養」という科目が出題されます。一般教養科目はどの程度、どのように対策すればよいのか予備試験受験生の悩みのタネとなりがちです。また、一般教養科目の扱いは今後変更される可能性もあり注目を集めています。
今回は一般教養科目について、趣旨や配点、今後の動きなどの要点を抑えています。
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司法試験予備試験における一般教養科目とは?
一般教養科目は司法試験合格を目指す中で 予備試験を受験する場合のみ受験する必要のある科目 です。
予備試験は短答式試験、論文式試験、口述式試験の順番で合格者が絞り込まれていきますが、この内令和3年度(2021年度)までは短答式試験と論文式試験で一般教養科目が出題されています。
一般教養科目とは
一般教養科目とは、法律とは関係のない分野、具体的には 英語、人文科学、社会科学、自然科学といった分野 から出題される科目のことを指します。
短答式試験では約40題出題される問題の中から20題を選択して回答、論述式試験では人文科学、社会科学、自然科学の中から一題、要約や自説の展開を求められます。
予備試験のみで一般教養科目が出題される理由
一般教養科目は司法試験では出題されないため、法科大学院を修了してから司法試験を受験する場合は受験する必要がありません。
予備試験のみで一般教養科目が出題される意図は、予備試験受験者に法科大学院修了者と同等の一般教養が備わっているかを測ることです。
予備試験は年齢を含めて一切の受験資格制限はなく、実際に高校生が受験している例もあります。法曹界に足を踏み入れる人材は法律一辺倒の知識しか備えていないと実務で支障がでる可能性があります。そのため、予備試験を経て司法試験を目指す受験者が社会に出ても活躍できる水準の一般教養を備えているかを測る目的で一般教養科目が出題されます。
予備試験における一般教養科目の配点(2021年現在)
2021年現在、予備試験の一般教養科目は以下のような配点で出題されます。
論述式:50点/500点
短答式試験では全体の20%強、論述式では全体の10%の比重です。完全に無視できる比率ではありませんが、予備試験には司法試験で設けられているような「足切り(特定の科目が一定水準を下回ると他の科目の成績に関わらず不合格となる仕組み)」もないため、法律科目でしっかりと得点できれば一般教養の点数が低くても合格することは可能です。
予備試験の「論述試験」での一般教養科目が令和4年度(2022年度)より廃止
2021年現在、一般教養科目は「短答式」と「論述式」の2回出題されていますが、 令和4年度(2022年度)より「論述試験」での一般教養科目の出題が廃止 されます。
一般教養に代わり「選択科目」が出題されることが公表されています。選択科目は倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)の8科目の中から一つを選択し、回答する形式です。
短答式の試験では例年通り一般教養科目が出題されることが公表されています。
一般教養科目はどの程度対策すべきか
予備試験受験者にとって一般教養科目をどの程度対策すべきかは悩ましいところかと思います。特に短答式の比重は2割強と、無視するには少し比重が大きいながらも、 出題範囲が非常に広く有効な対策を行うのが難しい分野 でもあるためです。
当校の見解としては一般教養科目の対策に必要以上に時間を割く必要はありません。短答式の科目については40題以上の問題が出題される中で回答する問題を20題選択することができます。
問題の中には一般常識で回答できるようなものや、論理的に考えることで回答できるようなものも存在します。そういった問題を選択肢ながら回答していくことで効率よくある程度の得点を抑えることが可能です。
一般教養であまり点数を取ることができなくても、法律科目のほうで点数を重ねることができれば試験の突破は十分に可能です。
法律科目は一般教養に比べると範囲が絞られているため 学習の努力が点数に反映されやすい上、次の目標となる司法試験への対策にも直結します。
一方、一般教養科目は司法試験では出題されないため、次の目標となる司法試験の合格を見据えると一般教養科目の対策に時間を割くことは効率的とは言えません。
対策に時間をかけすぎず、過去問から出題の傾向を把握し得点しやすい問題を選択していくことが重要です。
まとめ
一般教養科目は、予備試験経由で司法試験合格を目指す受験者が法曹の道で活躍するために求められるレベルの一般教養が備わっているかを測るために設定されています。
しかし、受験生にとって対策に悩む分野であることに加えて現在その位置づけが見直されている分野です。
法律科目を重点的に対策しつつ、今後の動向についても気を配っていくことが重要です。