司法試験に合格すると、法曹の道を歩むための次のステップとして司法修習が用意されています。
司法修習について具体的にイメージしていただけるように、修習のスケジュールやタームごとの大まかな修習内容、給料などのポイントについて解説します。
Contents
司法修習とは?概要とスケジュール
司法修習は新司法試験の合格者が法曹資格を得るために義務付けられている1年間の修習 です。修習は以下のようなスケジュールで例年12月から翌年の11月まで実施されます。※新型コロナウイルスの影響で前後する場合があります。
9月~11月 | 12月 | 1月~7月 | 8月~9月 | 10月~11月 | 11月 |
合格発表 修習申込 配属辞令 |
導入修習 | 分野別実務修習 | 選択型実務修習 | 集合修習 | 司法修習生考試 (二回試験) |
集合修習 | 選択型実務修習 |
9月~11月:司法修習申し込み、事前課題、採用発令
司法試験の合格発表は例年9月に行われ、試験合格者が法曹の道を目指す場合は司法修習への申し込みが必須です。
司法修習のうち、1月~7月にかけて行われる分野別実務修習は全国の地方裁判所で実施されますが、この申し込みの際に配属の希望を出すことができます。
申し込みが受理されると、白表紙と呼ばれる教材と導入修習前にこなしておく必要がある事前課題が返送されます。その後、11月に正式に採用発令および分野別実務修習の配属が発表されます。
12月:導入修習
導入修習は事前課題の解説や起案に関する基本的な考え方など、講義やグループワークを中心に1年間の修習のガイダンスのような位置づけで実施されます。
例年埼玉県和光市の司法研修所で実施されるのが原則ですが、新型コロナウイルスの影響でオンラインで実施される場合もあります。
1~7月:分野別実務修習
導入修習を終えると司法修習生は全国の配属が決定された司法修習地に移動し、実地での分野別実務修習に移ります。
分野別実務修習は民事裁判、刑事裁判、検察、弁護の4つの科目に分かれ、1クール約2ヵ月間に分けて配属地の裁判所・検察庁および弁護士事務所で実施されます。
修習中は実際に検察庁の中で実際の刑事事件を割り当てられたり、裁判所で民事裁判、刑事裁判の傍聴、事件の起案を行ったりと実際に起きた事件に則した実践的な内容も含まれます。
また、弁護士の修習においては所属する弁護士事務所により内容が異なりますが、実際の弁護の現場に同席するケースが多く見られます。
分野別実務修習を終えると、修習生は2つのグループに分けられます。一方は選択型実務修習を8月~9月にかけて行い、もう一方はその間集合修習が行われます。そして、それぞれの修習を終えると、今度は交代して他方の修習を受け、最終段階である司法修習生考試(二回試験)を受けます。
8~9月or10~11月:選択型実務修習
配属されるグループによって8~9月、もしくは10~11月にかけて選択型実務修習が行われます。この修習はその名の通り、修習生が自身の興味や志向に合わせて修習を受ける内容を選択します。
研修所が設置したプログラムや、配属地の裁判所・検察・弁護士会が独自で用意しているプログラム、更に自身で企業や官公庁に掛け合って実施するプログラムも存在します。
8~9月or10~11月:集合修習
グループによって8~9月、もしくは10~11月の選択型実務修習でない方の期間で集合修習が行われます。内容は民事弁護・刑事弁護・民事裁判・刑事裁判・検察の5科目の講義が中心で、起案や模擬裁判など、実践的な内容の修習が行われます。
11月:司法修習生考試(二回試験)
上記の修習を終えると、11月に司法修習生考試(通称二回試験)と呼ばれる試験が実施されます。司法修習生考試に合格すると、法曹の資格を得られます。
科目は民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の5科目で、1日に1科目の論述形式で実施されます。
合格率は90%以上と高水準ですが、不合格の場合は翌年の司法修習生考試を全ての科目で受験しなおす必要があります。また、それまでに獲得していた採用内定についても取り消されてしまうケースが大半のようです。
司法修習中は「修習給付金」という給料が出る
司法修習生は公務員に準ずる身分として扱われ、 13万5千円 / 月の「修習給付金」と呼ばれる給料 が発生します。
また、修習のために下宿が必要な場合は3万5千円 / 月の「住居交付金」が出るほか、引っ越しの際にも「移転給付金」という補助が出ます。
なお、司法修習中は修習に専念するためアルバイトなどの副業は原則認められていませんが、 最高裁判所からの許可があれば兼業が認められます。
まとめ
司法修習について、スケジュールや大まかな修習内容、待遇などについて解説しました。司法修習は法曹で活躍するにあたり必須のステップです。
ぜひ、司法試験合格前の早い段階から司法修習に対する認識を持ち、法曹界への道のりをイメージしてみてください。