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司法試験とは?全体像と重要なポイントをピックアップして解説

司法試験について

法曹界を目指す方にとっての大きな関門となる司法試験。現行の試験制度の導入により、かつてよりもハードルは下がってはいるものの、依然として文系最難関の国家試験に位置づけられる狭き門です。

一方で、司法試験は誰もが挑戦できるといった意味では非常に平等な制度でもあり、社会人としてのキャリアチェンジの選択肢としても人気なほか、学生時代から目指すことや、退職後のセカンドキャリアとして選択することも可能です。

今回は司法試験について、受験者が抑えておくべき重要なポイントを中心に情報を網羅しています

各項目については別の記事で詳しく解説していますので、全体の要点を抑える上でご活用ください。

 

司法試験とは?

司法試験は 法曹三者(弁護士、検事、裁判官)になろうとする者が必ず通過しなければならない国家試験 です。

法曹の実務を行うにあたって必要な知識や能力を備えているかを測ることを目的とされ実施される試験で、国内の文系資格の中では最難関のレベルに位置づけられています。

2002年までは受験資格や回数制限などが一切設けられていない試験制度(いわゆる旧司法試験制度)でしたが、現在は受験を行うにあたり次の項目で説明するような受験資格を獲得する必要があります。

司法試験の受験資格

司法試験の受験資格を得るためには

  • 法科大学院を修了する
  • 司法試験予備試験(予備試験)に合格する

のいずれかの条件を満たす必要があります。 受験資格は資格を得てから5年間有効で、各年度1回、最大5回の試験を受けることができます。 

法科大学院

法科大学院は法曹人口の養成を主目的として設立された大学院です。法科大学院の既定のカリキュラムを修了することにより、司法試験の受験資格を得ることができます。

カリキュラムは法学既修者向けに2年間の教育を行う既習コースと、法学未修者向けに3年間の教育が行われる未修コースがあるほか、社会人を対象とする夜間コースを設立している法科大学院も存在します。

予備試験

司法試験予備試験(予備試験)に合格すると、法科大学院を修了したと同等以上の実力があるとみなされ司法試験の受験資格を得ることができます

入学に大卒以上の学歴を有することが求められる法科大学院と異なり、予備試験には受験資格や制限など一切存在しないため、誰もが受験することができます

予備試験は短答式試験、論文式試験、口述式試験と段階的に行われ、各試験の合格者が次のステップに進める形式が取られています。

予備試験の合格率は3~4%前後とハードルの高い試験ですが、その分その狭き門を超えた受験者の司法試験合格率は非常に高い数値が出ています。

司法試験の科目・配点・合格点

実際に実施される司法試験の科目や配点、合格点といった情報をまとめます。

司法試験の科目や配点について

司法試験はマークシート形式の短答式試験と、記述形式の論文式試験に分かれます。それぞれの試験は以下のような科目・配点で実施されます。

短答式試験

科目 配点 試験時間
民法 75点 75分
憲法 50点 50分
刑法 50点 50分

論文式試験

科目 配点 試験時間
選択科目 100点 180分
公法系科目第1問(憲法) 100点 120分
公法系科目第2問(行政法) 100点 120分
民事系科目第1問(民法) 100点 120分
民事系科目第2問(商法) 100点 120分
民事系科目第3問(民事訴訟) 100点 120分
刑事系科目第1問(刑法) 100点 120分
刑事系科目第2問(刑事訴訟法) 100点 120分

 

まず 短答式試験の点数で論文式試験の採点対象者が選抜された上で、全ての科目の総合評価で合否が決まります 

なお、合否判定は論文式試験の点数の14/8倍(×1.75倍)と短答式試験の点数の合計点、といった形で論文式試験に比重が置かれた判定がされます。

また、短答式試験は各科目40%、論文式試験は各科目25%の「足切り」の基準が設けられており、1科目でも下回った場合、他の科目の点数に関わらず不合格となります。

司法試験の合格点

論文式試験および最終的な合否判定の合格ラインは以下の通りです。

短答式試験合格ライン

年度 受験者数 合格者数 合格率 合格点※ 全体平均
令和3年度 3,424 2,672 78.0% 99 117.3
令和2年度 3,703 2,793 75.4% 93 109.1
令和元年度 4,466 3,287 73.3% 108 119.3
平成30年度 5,238 3,669 70.0% 108 116.8
平成29年度 5,967 3,937 66.0% 108 113.8

最終合格ライン

年度 短答式試験
通過者数
合格者数 合格率 合格点 全体平均
令和3年度 2,672 1,421 53.0% 755 794.07
令和2年度 2,793 1,450 52.0% 780 807.56
令和元年度 3,287 1,502 45.7% 810 810.44
平成30年度 3,669 1,525 41.6% 805 790.17
平成29年度 3,937 1,543 39.2% 800 780.74

各試験の合格率を見るとそれほど倍率が高くないようにも見えますが、そもそも受験資格の段階で大きく選抜されている試験です。

計画的に学習し、着実に得点していくことが求められます。

司法試験のスケジュール

司法試験は例年11月~12月に試験公告、願書受付が行われます。出願の際に、試験地と選択科目を選択を行います。

 試験は5月の中旬にまとまった日程で短答式試験と論文式試験が実施されます。 短答式試験の合格発表は6月に行われ、短答式試験合格者のみ、論文式試験が採点されます。

論文式試験の合格発表は9月に行われ、その後司法修習の申し込みへと進んでいきます。

司法試験の合格者に関するデータ

司法試験の合格者に関するデータは、毎年法務省の公式ホームページに掲載されています。ここでは特に関心が高い方が多そうな情報について簡潔にまとめています。

平均的な受験回数

年度 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 平均
令和3年度 1,024 173 101 76 47 1.56回
令和2年度 960 222 126 85 57 1.67回
令和元年度 884 282 108 89 89 1.83回
平成30年度 862 269 187 134 73 1.88回
平成29年度 884 282 139 108 89 1.85回

司法試験合格までの平均受験回数は例年2回弱程度です。初回の受験で合格(いわゆる一発合格)する比率が比較的高い一方で3回目以降の受験で合格を勝ち取るケースも少なくありません。

司法試験はそもそも受験資格を得るまでに長い道のりを経る必要がある試験であり、自身のペースで着実に取り組んでいく必要がありそうです。

法科大学院と予備試験合格者

法科大学院を修了すると司法試験の受験資格が得られますが、その合格者数や合格率は法科大学院ごとに大きな開きがあります。

法科大学院の受験を考える場合、そういった実績も見ながら志望校を選定することが重要です。

また、予備試験受験を経て司法試験に挑戦する受験者の合格率はどの法科大学院よりも高い数字を記録しています。

社会人受験やセカンドキャリアでの受験

司法試験を受験するにあたり、 年齢や国籍などによる受験の制限は一切ありません。 法科大学院を修了するには大学卒業が要件となるため実質的な下限の年齢制限がありますが、予備試験は誰もが受験することができます。

10代の合格者が出ることもあれば、70代の合格者がでることもあります。かなり早い段階から法曹の道を目指す場合は実力さえあれば大学卒業を待たずに資格を得ることも可能な一方で、定年退職後のセカンドキャリアとして法曹界を目指すような選択も可能です。

また、予備試験を中心に社会人受験からの合格者も例年一定数出ており、キャリアチェンジの手段としても選択されていることがわかります。

法学部と非法学部

現行の試験制度は、法学部出身者以外の受験者への門戸も広く開くことも目的の一つとして導入されています。

法科大学院経由での受験者の合格率を比較すると

  • 法学部出身者の合格率:30%前後
  • 非法学部出身者の合格率:15~20%前後

と差はありますが、そもそものスタート地点が異なることを考慮すると、十分挽回が可能な水準と言えるでしょう。

司法試験合格後の法曹への進路

無事司法試験に合格しても、すぐに資格を得て社会で活動することはできません。実際にどのような段階を踏んで現場に出るのか、また職業としてはどのような選択肢があるのかを解説します。

司法修習

司法試験に合格すると、その年度以降の司法修習に申し込むことができます。

司法修習は約1年間のカリキュラムの中で法曹の実務を学ぶ場です。座学での講義から実際に裁判所や検察庁、法律事務所の実地での研修も行われます。

全てのプログラム終了後、「考試」(二回試験)と呼ばれる試験が実施され、試験に合格することで正式に法曹の資格を得ることができます。

※不合格となった場合は翌年度以降の考試が受験できます。

司法試験の合格には有効期限などはないため、一度試験に合格すればその後時間を置いて司法修習に申し込むことも可能です。合格した年度の司法修習に申し込む場合は、合格後すぐに手続きを行う必要があるのでご留意ください。

法曹の進路や就職活動

無事に考試に合格すると、晴れて法曹の資格者として実務を行うことができます。法曹資格を使った働き方としては主に

司法修習後の進路
  • 裁判官
  • 検察官
  • 弁護士(事務所勤務)
  • 組織内弁護士(インハウスローヤー)
  • 弁護士として独立(即独)

といった選択肢があります。この内、裁判官と検察官は公務員であり、それぞれ裁判所、検察庁から採用される必要があり、修習期間中から積極的に意思表明を行った上で面接試験を受ける必要があります。

弁護士として所属する事務所を探す場合、早い段階では予備試験合格発表後や司法試験合格発表後など、司法修習が始まる前から説明会が実施されており、修習前、修習期間の合間を縫って就職活動を行う必要があります

まとめ

司法試験における重要なポイントを網羅しました。司法試験は簡単な試験ではありませんが、 法曹の資格を得た先には魅力的な選択肢が数多く広がっており、目指す価値が十分にある試験 です。

ぜひ、ポイントを抑えながら司法試験の全体像を理解し、着実な学習計画のもとに試験合格を目指してみてください。