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社会人から司法試験合格を目指すには?選択肢や合格率、メリットを解説

予備試験について 司法試験について

「かつて断念した法曹界への道に再度挑戦したい」
「仕事で弁護士と関わる中で法曹界への興味を持った」
「ステップアップとして司法試験に挑戦してみたい」

といった目的で司法試験を目指したい社会人は数多くいます。しかし、学習に専念できる学生ですら難関である司法試験に仕事をしながら合格することが可能なのか不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで、今回は社会人が司法試験を目指すために辿るべき具体的なルートは社会人受験の合格率、さらには社会人受験ならではのメリットなどを解説していきます。

 

社会人が司法試験に合格するためのルート

社会人が司法試験に合格するためのルートとしては、

  1. 仕事を辞め、一般的な法科大学院を修了する
  2. 仕事をしながら夜間コースの法科大学院を修了する
  3. 司法試験予備試験に合格する

の3つが考えられます。

一般的な法科大学院に入学する

まず考えられるのは法科大学院に入学し、修了後に司法試験を受験する方法です。既習コースで2年間、未習コースで3年間のカリキュラムを修了した後司法試験を受験する、一般的な学生と同様のプログラムです。

法科大学院に通うためには仕事との両立は現実的ではなく、通学期間中は学費に加えて在学中の生活費も含めて十分な資力を有することが前提の選択肢です。

夜間コースのある法科大学院に入学する

経済的事情等で仕事を辞めて法科大学院に通うことが現実的ではない場合、社会人が通うことのできる夜間コースのある法科大学院に入学する選択肢もあります。

夜間コースは平日の夜間帯および休日に講義が行われカリキュラムが進行していきます。週間に行える講義の数が限定されるため、通常のコースと比較して長期間(3年~5年)の通学を要します。

2021年現在、夜間コースでカリキュラムを修了することのできる法科大学院は以下の通りです。

夜間(のみ)コースのある法科大学院
  • 筑波大学法科大学院
  • 日本大学大学院 法務研究科
  • 福岡大学法科大学院
  • 琉球大学法科大学院(※既修者コースのみ)

働きながら法科大学院のカリキュラムを受講でき、修了後は司法試験の受験資格を得られるため、バランスの良い選択肢とも言えます。

しかし、普段の仕事に加えて残りの時間のほぼ全てを法科大学院の講義と予習、復習に費やすハードな生活を余儀なくされるため、忍耐力を要します。

また、夜間と言っても平日の講義は18時ごろから行われるのが一般的であるため、残業ができないことも含め職種や働き方にも制限を受けます。

司法試験予備試験に合格する

司法試験予備試験(予備試験)に合格することで、法科大学院のカリキュラムを修了することなく司法試験の受験資格を得ることができます。

受験を決意した段階での知識量や学習のために割ける時間により合格に必要な年数は異なってきますが、 予備試験には受験の回数制限もないため、自分のペースで学習しながら試験に臨むことが可能です。 

学習方法としては完全に独学で学習する方法や予備校に通う方法などが考えられますが、予備校を利用した場合であっても法科大学院に比べて費用を大きく抑えることができるため、経済的にも多くの方にとって最も現実的な選択肢と言えます。

また、法科大学院に入学するには大卒の資格が必要となるため、高卒の方などが司法試験を目指す場合は特に、予備試験の受験が現実的な選択肢です。

 

予備試験の社会人受験の合格率

社会人の予備試験受験者数および、合格者数は以下のデータが公表されています。

予備試験受験者の社会人比率

年度 受験者数 社会人 社会人比率
令和3年度 11,717 7,123 60.7%
令和2年度 10,608 6,369 60.0%
令和元年度 11,780 7,142 60.6%

予備試験合格者の社会人比率

年度 合格者数 社会人 社会人比率
令和3年度 374 115 30.7%
令和2年度 442 115 23.5%
令和元年度 476 109 22.9%

※「社会人」は受験者の中から自己申告で大学生、法科大学院生、その他大学院生を除いたもの

 

予備試験受験者の中で社会人受験者比率は例年60%前後、対して合格率は20%強~30%程度です。

受験者数の比率、合格者数の比率を見ると学習に専念できる法科大学院や大学生と比較するとどうしても合格率は下がりますが、一定以上の比率で社会人の合格者も毎年出続けていることがわかります。

また、予備試験合格者の中で実際の新司法試験に合格した社会人の比率は以下の通りです。

年度 社会人受験者 社会人合格者 合格率 (参考)
全体合格率
令和3年度 136 115 84.5% 93.5%
令和2年度 153 115 75.2% 81.8%
令和元年度 191 125 65.4% 77.6%

(受験者の中から自己申告で大学生、法科大学院生、その他大学院生を除いたもの)

予備試験合格者全体の新司法試験合格率と比較すると下回りますが、 予備試験に合格した社会人は高い水準で司法試験にも合格しています。 

 

社会人受験のメリットや社会人から法曹界に入るアドバンテージ

社会人が法曹界に入る道のりは簡単ではありませんが、 社会人受験ならではのアドバンテージ も存在します。重要なものをいくつか挙げていきます。

基本的なマナーや社会人経験の強みが備わっている

社会人経験を経てから法曹界に入る場合、学生の内から法曹を目指す受験生と比較し、社会の基本的なマナーが備わっている点や、就業経験に基づいた強みがあらかじめ形成されている点が実務経験に携わるにあたり有利に働く可能性が十分に考えられます。

受験のペースを自ら設定できる(※予備試験の場合)

予備試験の受験には回数制限がないため、学習開始段階の習熟度や勉強に割ける時間に合わせて無理のないペースでの受験計画を設定できます。

一般的なペースとしては法律関連の仕事をしている場合で1~2年、法科大学院の既習コースに入学できる程度の知識がある場合で2~4年、未修の場合で3~5年程度を目標に設定する方が多いようです。

相対的にリスクの低い選択である(※予備試験の場合)

社会人として仕事をしながら予備試験合格を目指す場合、仮に予備試験ないしは新司法試験に合格できなかった場合、ないしは途中で断念してしまった場合でも、今まで通り仕事を続ければよいだけなので、相対的にリスクを抑えながら法曹の道を目指すことができます。

 

まとめ

社会人から法曹を目指すルートは「仕事を辞め、法科大学院を修了する」「仕事をしながら夜間制の法科大学院を修了する」「予備試験に合格する」の3パターンが考えられますが、 現実的な選択肢としては予備試験合格が最も有力 です。

学習に専念できる大学生、大学院生と比べると合格率は下がるもののデータから見ても社会人受験からの合格は十分に可能であり、また、予備試験を目指す場合は自分のペースでリスクを抑えながら受験することも可能です。

また、社会人経験があるからこそ法曹界で活躍できる可能性が上がることもありえます。法曹の道に興味がある場合、ぜひ具体的な計画を立てながら試験合格を目指してみてください。