宇波 壮一郎 様
東京大学法学部卒業
東京大学法科大学院既修2年在学中
令和3年予備試験 合格
令和4年司法試験 合格
宇波様の労働法の合格体験記はこちらからご覧いただけます。
総合 1178.04点 7位
論文 590.31点 6位
公法系 155.11点(A、A 3位)
民事系 213.21点(A、A、A)
刑事系 146.00点(A、A)
選択科目 75.98点(2位)
司法試験の選択科目で労働法を選び、労働法の講座を探していた時に加藤先生に出会いました。1年早く司法試験に受かっていた75期の友人(同じく労働法選択)に加藤先生の労働法講座をお勧めされ、加藤ゼミナールの労働法の講座を取りました。
それがとても分かりやすく、また、試験でいかに点数を取るかに特化して指導してくださる加藤先生の姿に強く共感し感銘を受けました。
そのため、当初は労働法講座のみを取る予定だったのですが、基本7法に関する講座(総まくり講座)にも興味が湧き、サンプル教材を覗いてみました。
そうすると、例えば憲法では巷ではあまり説明を受けることのない違憲審査基準の使い方が詳しく説明されていたり全科目においてほぼ全ての論点が論証形式で記載されていたりするなど、非常に網羅性が高く、かつ、答案にすぐ活かせる内容の講座であると分かったので、基本7法の講座も受けてみたいと思い、基本7法の総まくり講座も取ることにしました。
そして、司法試験直前の受講開始ではありましたが、何とか全て受講し終えました。
基本的知識は元々備えていたということもあり、講座を消化するために必要な時間も十分に確保できたので、司法試験にしっかり活かすことができたと考えています。
司法試験直前に受講を開始したので、とにかく早く講座を聴いて、その後に自分なりに消化する時間も設けようと考えていました。
主に以下のことに気をつけました。
(1)マークの色やマーク箇所は、自分なりにアレンジする。
初学者の方は、先生の指定通りにマークをするのが良いと思います。私もそうしていました。
しかし、総まくり講座を受講する段階では私は基礎的知識は学習済みでしたので、マークの際は、自分にとって新たに覚えるべき知識や自分にとって目から鱗でそれまでの理解を一層深めてくれるような記載だけに絞ってマークするべきだと考えました。
一方で、加藤先生がマーカー指定をしている場所を把握しないというのは抵抗がありました。
そのため、講義の前に加藤先生のマーク指定を見て、その箇所がテキストを見てわかるように薄く軽くシャーペンで印をつけました。
そして、講義中または講義後に、自分がマーカーを引くべきだと思った所にだけマーカーを引いていました。
もちろん先生の指定通りにマーカーを引くことを否定はしませんが、私は、マーカー箇所は最終的には自分の現在の知識・理解の穴に応じて自分で決めるべきだと思います。
先生のマーカーの指定は、先生が強調して伝えたいと考えている部分であって、それを全く把握しないというのは妥当ではないと思います。しかし、個々の生徒の知識・理解の濃淡や穴にはバラつきがあります。先生の指定したマーク箇所を把握した上で、最終的には自分で判断をしてマーカーを引くと、復習の時にマーカーが多すぎて逆に要点が見えづらいということがなくなると思います。(ただ、上述のように、初学者段階ではそもそも知識・理解がない段階だと思いますので、先生の指定通りにマーカーを引くのが無難かと思います。)
マークの色は、自分がそれまで決めていた色で行いました。
(2)講座を受けた後は、自分なりの一元化教材に一元化する。
加藤ゼミナールのテキストは、論証形式ですでに載っている論点が多いので、そのまま答案に活かしやすく、アウトプットひいては試験の点数に直結しやすいテキストになっていると思います。
しかし、私はテキストを読んで覚えるタイプではなく、講義をざっと聴いてテキストを読んだ後、テキスト等を見ずに自分で思い出しながらアウトプットする中で覚えるタイプです。
また、他の予備校にも通ったことがありましたし、基本書等も複数読んでいましたから、知識がごちゃごちゃになったり整理がつかなくなったりするのを防ぐべく、勉強開始以来ずっとノートに一元化をしていました。
以上の理由から、総まくり講座を受けた後も、ノートに一元化する作業をしていました。私はこの作業を非常に重視していました。この作業により、自分の言葉で説明できるようになり自分の頭が整理されますし、これをそのまま答案に書けば良いとなるので、答案に直結させることができます。
論証についても、しっくり来て腑に落ちやすい表現・暗記しやすい表現が何かというのは個人差があると思います。与えられた論証を常にそのまま丸暗記しようとするのではなく、その論証の本質的部分は維持しつつ、自分にとって納得感のある表現に適宜修正するという作業も、膨大な数の論証を覚える上では大事だと考えています。
《憲法》
公法系第1問(憲法)では、制度的保障たる大学の自治がその保護対象たる学問の自由と対立してしまう場面が出ました。この問題意識も総まくり講座等で学習済みでした。あとベースライン論も軽く書きました。(他にも難しい論点はあったのかもしれないですが、おそらくそれには気づけていないです。)
判例への言及も、もし混ぜられるなら混ぜていく方が点が取れる、と聞いていたので、思い切って東大ポポロ事件や旭川学テ事件という名前も出して言及しました。判例を直ちに想起し判例名まで書けたのは、総まくり講座のおかげで、各判例について要点だけを抽出して覚えていたからだと思います。
《行政法》
公法系第2問(行政法)では、原告適格、訴えの利益、裁量基準がある場合の裁量権の逸脱・濫用などが出ました。
原告適格は、出題が予想されていましたし、当てはめのやり方まで詳しく総まくり講座で学んでいました。例えば利益の重要性について、利益が重要というので終わるのでなく、利益が重要だから一般的公益の中に吸収解消させるのは難しいという言い方までして規範との結びつけを見せるなどできたのは、総まくりでそのように教わったおかげです。
訴えの利益についても、付随的効果の残存の有無(行訴法9条1項かっこ書)という枠組みの中で書くことができました。
裁量権の逸脱・濫用についても、いくつかのパターンに応じて書き方を教わっていたので、対処できました。
《民法》
民事系第1問(民法)の設問2は難しく感じたのですが、状態債務論や貸す債務の没個性などの605条の2第1項の趣旨から、一応の記述はできました。
《商法》
民事系第2問(商法)も、出題された分野・論点はいずれも総まくり講座で重要と言われていたものでした。
《民訴法》
民事系第3問(民訴法)では裁判上の自白が出ましたが、これも総まくり講座で対策済みでした。
裁判上の自白では、書くことが多く、書く順番も大事です。事前に総まくり講座を受けて、試験に出たらこの順番でこれを書くというのを決めていたのが良かったです。
不要証効と当事者拘束力と裁判所拘束力の書く順番についてもちゃんと考えて書くことができました。
明文なき主観的追加的併合について、それまで理由づけをしっかりと理解できていなかったことを総まくり講座で思い知らされていました。それまでは、単に人が増えるから訴訟不経済となり訴訟が複雑化するのだと思っていましたが、判例の問題意識は、訴訟資料の継続利用の可否が定かではないという点にあるのだと知りました。本番では、総まくり講座を踏まえて書けました。
《刑法》
刑事系第1問(刑法)では、正当防衛などが出ました。総まくり講座に論証として載っていた最新判例の「急迫」性の判断枠組みを書いて、しっかり当てはめできました。
《刑訴法》
刑事系第2問(刑訴法)ではおとり捜査が出ました。ここは、特に総まくり講座を受けていて良かったと思った部分です。あくまで任意捜査の限界の枠組みで書くべきこと、その際は普通の捜査との違いを示して捜査の公正・刑罰法規の保護法益を捜査の必要性との天秤にかけること(川出先生の「判例講座」の立場)、判例で示された3要素の位置付け、などを勉強していたことがそのまま活かせました。
訴因変更の要否も出ました。
以下、教材について特に良かったことを書きます。
《基本7法の総まくり講座》
①論点がほぼ全て論証化されて掲載されていること。
加藤先生が講義内でおっしゃっていたように、”理解”するために必要な情報とかっちり”覚える”べき情報は明確に分けて考えるべきだと思います。各論点を”理解”したとしても、それを点数に直結させるには、実際の答案に書くべき要点・ポイントを絞り込みその部分をかっちり”覚える”必要があります。総まくり講座では、論証をほぼ全ての論点について載せてくださっていたおかげで、今まで何となく理解していたにすぎなかった論点も、試験に出たらすぐにアウトプットして対応できるという自信がつきました。
インプットからアウトプットまでの流れをスムーズにやりやすいテキスト内容になっていると感じました。
②講義が短すぎず長すぎないこと。
カバーしている論点・判例の範囲は十分に広く、加藤先生の講義もとても丁寧であるにもかかわらず、講義時間が非常にコンパクトです。
すでに基本知識がある人向けという前提の講座だからこそ、なのかもしれませんが、それにしても、タイムパフォーマンスがかなり良い講座でした。
しっかり歯ごたえがあるのにあまり時間を消費しないで済んだので、不思議な感覚すら覚えました。
③マーク箇所の指定が、講義中ではなく、事前指定であること。
加藤ゼミナールの講座では、マーク箇所が講義中ではなく事前に指定されます。講義中に指定する方式だと、マークの指定を受けて実際にマークするという作業が繰り返し発生し、講義時間や講義への集中力がその分削れてしまうので、事前指定方式は良いと思います。
④判例知識をどう実際の答案に活かすかを加藤先生がちゃんと説明してくださること。
判例をべったりマーカーしたりべったり解説したりするのではなく、判例の判旨のうち答案に直接活かせるところがどこかを明示してくださったのが非常に勉強しやすかったです。特に公法系科目でありがたかったです。
⑤論点のカバー範囲が広いこと。論点の論証が正確かつ精巧に作り込まれていること。
細かめの論点も含めて、しっかりカバーされています。あまり有名な論点ではないが、現場思考問題として出そうな論点までカバーされているのが良かったです。
また、論証の内容についても、憲法で少し捻った表現の自由が出た場合の書き方(ヘイトスピーチや象徴的言論や消極的表現など)、刑法の実行の着手の論点の論証(山口厚裁判官の補足意見が取り込まれている)、民訴法の補助参加の利益の論点の論証(事実上の影響で足りることの根拠・事実上の影響の具体的内容など)、刑訴法のおとり捜査の書き方(捜査の公正と刑罰法規の保護法益を対立利益にする)など、非常に説得力・納得感のある論証が多かったです。
論証のすぐ隣に有名基本書等の出典が書いてあるのも、納得感を高めて覚えやすくなった一因でした。
⑥有名・最新の基本書の知識がしっかり取り込まれていること。
予備試験1年目は全く基本書・判例百選を読みませんでした。予備試験1年合格に失敗した後、勉強方法を見直してみようと思い、初めて基本書・判例百選を読んでみました。そこで、基本書(特に有名なもの)・判例百選に目から鱗の記載が多くあると感じ、夢中になって各科目の有名基本書と判例百選を読破しました。これをしたお陰で、各論点ひいては法律知識全体の理解が深化したと感じています。
ただ、読破することは試験対策上のコスパが悪いというのはやはり難点です。基本書や百選にある記載のうち、特に秀逸なものをまとめている講座があれば良いなとずっと考えていました。
そして、加藤先生の総まくり講座を受講したときに、この講座がまさに求めていたものだと感じました。
加藤先生は、有名・最新の基本書や判例百選の記述のうち、直接答案に活かせるところを抜粋してテキストに一元化してくださっているので、非常にコスパよく勉強できました。
①模範答案が、分量・記載内容ともにある程度現実的なものになっていること。最近の年度については中位答案の掲載もあること。
加藤先生の司法試験過去問講座の答案は、内容・量ともに、良い意味で完璧すぎず、現実的なものになっています。
記載量については、ページが使い切られている模範答案もありますが、文字が大きめなので、実際の答案における分量はそこまで多いものではなく、現場でも再現可能だと感じました。この点が勉強しやすかったです。
また、加藤先生の司法試験過去問講座は解説が非常に丁寧です。テキストにもびっしり書かれていて、総まくり講座のテキストで対応するページ数も書かれています。
「解説を読んでその問題に対する完全解を理解する→模範答案において現実的なラインを模索する」という流れで勉強できたのが良かったです。
②司法試験委員会の理解にことごとく寄り添っていること。
出題趣旨や採点実感に基づいて、司法試験委員会の理解はこういうものであるからこのように答案を書くべき、と指導してくださったのが非常に良かったです。
試験委員の考えをしっかりと取り入れており、とても納得感のある講座でした。
③問題文の読み方まで丁寧に解説があること。
加藤先生の司法試験過去問講座では、問題文の読み方まで丁寧に指導してくださいます。
特に公法系において、目から鱗の情報が多くありました。
憲法における人権選択のやり方や行政法における論点抽出のやり方・会議録の読み方など、この講座を受けて初めて知れた点が多くあります。
例えば憲法の人権選択について、それまで私は、問題文の事情から論理的に問題にし得る人権を選んでさえいれば良いと考えていましたが、とことん出題者の出題意図に寄り添って、出題者が何の人権で書いて欲しいのかを問題文の書かれ方から読み解くべきだと知り、問題文への向き合い方がガラッと変わりました。
(1) 全ての科目をなるべく早く1周しましょう。論文講座にも早めに手をつけるのが合格への近道です。
全ての科目を1周して初めて理解が深まる論点なども多くあると私は思います。また、論文講座を受けることで初めてインプットの範囲と量の目安がわかると思います。
1周目から深く理解しようとしすぎるべきではないと思います。
(2) 合格の目標年度も早めに設定した方が後々のメンタルはラクになります。
(3) 何が出題されても一定水準以上の答案は書けるという「懐の深さ」を常に意識しましょう。「懐の深さ」を磨くには、論証における規範や条文の趣旨への深い理解が必要です。
(4) 問題文にとことん寄り添って、出題者が書いて欲しいと考えているであろう答案を書く、という姿勢を忘れないでください。自分の知識にこじつけて答案を書いたり、問題文中の事情を拾いきらなかったりするのは駄目です。
真面目に勉強してきた人ほど、自分が勉強してきた内容のほんの一部しか本番では使わなかった、と感じてしまうかもしれませんが、それで良いのだと思います。
各科目単位で見れば、勉強してきたことのほんの一部しか出題されていないかもしれません。しかし、その年度の全科目を全体として見れば、やはり満遍なく出題されているはずです。あなたが淡々とたくさん勉強してきたことは、全体の成績としてちゃんと現れます。
(5) 論点を学習する際は、その論点の中核となる問題意識は何なのか・それがどのような事案で顕在化する論点なのか・それがどの判例に出てきて当該判例の射程はいかほどなのか、なども意識しましょう。論点を覚えても、それを幅広い事案に使いこなせないと意味がないです。
(1) 司法試験の過去問をまずはしっかりやりましょう。少なくとも2013年~直近年度はやるべきで、できれば2006年~2012年もやるべきです。過去問の焼き直しが出た時に、その過去問をやっていた周りの受験生はちゃんと書けるのに自分だけ書き負ける、という事態が生じるのが一番まずいです。
(2) 選択科目もしっかりやりましょう。基本7法の学習は十分進んでいるが選択科目の学習が全然進んでいないという人は、選択科目に一番時間をかける勢いでも良いと思います。選択科目での足切りは絶対に避けましょう。
(3) 短答で足切りを食らいそうな人は短答対策も早めにやっておくのが吉です。直前に焦って短答をやっても頭に入らないと思います。
ただ、短答の足切りは皆が恐れることなので、自分の感じる不安が本当に現実化し得るものなのか、模試などでしっかり見極めましょう。模試などで短答足切りの恐れはほぼなさそうと判断できるなら、論文対策に時間をかけるべきだと思います。
今年こそ合格できると思っていたにもかかわらず、不合格になってしまうということがあるかもしれません。しかしこれは多くの人が経験することで、必要以上に落ち込む必要はありません。やるべきことは常に同じで、自分の立ち位置や正しい勉強方法を見誤らないように意識しつつ、可処分時間を最大限使って淡々と日々勉強を続けることです。これさえやっていれば、あなたが合格すべきタイミングで合格できます。合格すべきベストタイミング・その人にとっての最短合格のタイミングというのは個人差があります。早ければ早いほど良いというものでは絶対にないと私は思います。
私は予備試験1年合格に向けて本気で頑張ったつもりでしたが、その目標は叶いませんでした。もしかしたら、それくらい良いではないか、と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私はその1年間は死に物狂いで勉強しましたし、短答試験直前にコロナで3ヶ月の延期が発表された後も息切れ寸前ではありましたが何とかペースを保って更に勉強をしました。
予備試験を始めるまではずっとスポーツをやっていたこともあり身体の健康には気をつけていた私でしたが、延期分の3ヶ月は、自分の思っていた以上に精神的ストレスがかかっていたみたいで、10kg以上体重が増え、入眠障害にもなりました。論文試験直後に会った友人にことごとくびっくりされたのも、今では良い思い出です。それでも論文で落ちてしまった時は、本当にショックでした。しかしなお立ち直って淡々と勉強を続け、次の予備試験・司法試験に受かることができました。
今思えば、もし1年目の予備試験に受かっていたら、法科大学院に入って法科大学院の友人ができることもなく、予備試験・司法試験に上位で受かれることもなかったでしょうし、就活もオフライン・対面で行うことはできていませんでした。何より、2021年5月に設立した加藤ゼミナールで司法試験対策をすることはできていませんでした。後付けかもしれませんが、私は私にとってベストなタイミングで合格させてもらえたのだと思っています。
長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。
この合格体験記が少しでも皆様の合格に役立てば嬉しいと思って書かせていただきました。
皆様が予備試験・司法試験に合格されることを心より祈っております。
もし直接お話できる機会があればぜひお話しましょう。皆様が合格されてから実務でご一緒できることも楽しみにしております。