加藤ゼミナールについて

司法試験の「参考書」の種類と選び方②(民事系)

合格者の試験対策(実務家Sさん)

私が実際に使用した参考書

この記事では、私が実際に使用した参考書のうち、判例集と予備校本について、その使い方と共に紹介します。
問題集にあたる書籍についても、「読み物」として使用している場合があるので、紹介していきたいと思います。

※基本書については、「(司法試験 基本書)の記事URL」でまとめています。

民法

判例集

■判例百選(有斐閣)
民法は判例百選(Ⅰ:総則・物権、Ⅱ:債権、Ⅲ:親族・相続)をシリーズで使用していました(もっとも、家族法は判例集まで手が回らなかったので、ほとんど読んでいません。)。
・使い方
ロースクールの授業にあわせ、該当裁判例をざっと読んでいました。
通読したのはロースクール2年生の冬~3年生の春頃でした。事案の概要と判旨を読み、判旨のうち論文で問われそうな部分にはマーカーを引いていました。また、「何故その裁判例が重要といわれるのか」を理解していないと答案を書く際に使えないと思い、解説で裁判例の意義を説明している箇所もしっかり読むようにしました。
・コメント
民法の百選は、あとで読み返してわかりやすいよう、事案を図にし、付箋で貼っていました。

民法は覚えるべき裁判例・規範が多く、百選に書き込みをするだけでは、知識を整理することができませんでした。
そのため、一元化教材(暗記用のまとめ教材)としては後述する趣旨規範本を使用し、百選はあくまで判例を理解するためにだけに使いました。

※初学者の方へ
私は、初学者のときに、判例百選を通読しようとして挫折しました。基本書⇔判例集を行ったり来たりすることで、情報量が多くなりすぎ、消化しきれなかったのです。また、裁判例の重要度がわからず、膨大な量の裁判例を同じ熱量で読み進めていったことも敗因のひとつでした。
「基本書と判例百選はセットで使う」とよく言いますが、これは勉強がある程度進んでからになります。初学者のうちは、基本書で法体系と裁判例の概要だけ掴み、ある程度下地ができたら百選に進めばいいと思います。

予備校本・その他

■「趣旨・規範ハンドブックシリーズ」(辰巳法律事務所)
条文の趣旨・要件・規範などが1冊にまとまっています。詳細な説明や裁判例の引用などはありません。通称「趣旨規範本」。
・使い方
一元化教材(情報を整理し、何度も見返して暗記をするための教材)として使用しました。基本書を読み、ある程度の知識がついてから、使い始めました。
ロースクールの授業にあわせて、趣旨基本では足りない部分を書き込みし、自分だけの暗記用ノートを作っていきました。
自分で書き込みをした趣旨規範本は、司法試験合格まで何度も見返しています。
・コメント
趣旨規範本は、書き込みをして一元化するのには最適な素材だと思います。情報がコンパクトにまとまっており、書き込みをする余白もあるからです。
私は民法以外の科目でも、一元化教材として趣旨規範本を使用したものが多いです。

会社法・商法

判例集

■判例百選(有斐閣)
会社法の判例も百選を使用していました。会社法は、司法試験で判例に近似した問題が出ることもあり、事案も含めて丁寧に読んでいました。
・使い方
会社法を一通り勉強した頃、基本書で大きく取り上げられている判例からつぶしていきました。民法と同じく、簡単な事案の図をかいて付箋で貼り、趣旨や意義をメモしていきました。
・コメント
民法と比べると、会社法の百選は直前期まで目を通していたと思います。
会社法に関しては、友人が作成したまとめノートを使用して暗記を行い、百選にはメモ程度の書き込みしかしていません。

予備校本・その他

■「事例で考える会社法」(有斐閣)
会社法の論点を問う設問(1頁~3頁ほどで割と長め)と解説から成る書籍です。標準回答時間が設定されており、位置づけとしては問題集なのでしょうが、私は論点理解のための参考書として使用していました。なお、答案例は載っていません。
法科大学院生の多くが使用する本です。
・使い方
設問を読み、自分で簡単な答案構成をしたうえで、解説を読みました。問題文からの論点抽出が苦手だったので、この本を読んで、論点が実際の問題でどう問われるのかを学びました。
・コメント
この本は、重要判例の要件や規範(例えば事業譲渡の要件(最判昭和40年判決)など)に関し、各事案における要件・規範の具体的な使い方についても解説がなされており、答案を書く際に有用でした。
なお、具体的な解答例が載っているわけではないので、「会社法の答案の書き方がわからない」という方は、別途、参考書や予備校で補う必要があります。

民事訴訟法

判例集

■判例百選(有斐閣)
・使い方
和田吉弘「基礎からわかる民事訴訟法」を読み終わった後、重要判例から読み込んでいきました。司法試験の民訴では、重要な学説も抑える必要があるため、解説部分もしっかり読んでいます。
・コメント
民訴の百選は何度も読み返しました。

予備校本・その他

■「趣旨・規範ハンドブックシリーズ」(辰巳法律事務所)
条文の趣旨・要件・規範などが1冊にまとまっています。
・使い方
定義を覚えるために使っていましたが、最終的に加藤ゼミのレジュメに頼っていたため、使用頻度は低いです。

■えんしゅう本(辰巳法律研究所)
問題と簡潔な答案例が記載された問題集です。問題は主に旧司法試験の過去問を取り上げています(一部新司法試験の過去問もあります。)。
・使い方
「解く」のではなく、「読む」ものとして使用しました。
旧司法試験の過去問について、答案例の流れを覚えました。
・コメント
民訴については、答案の書き方がわからず、「旧司法試験の問題・解答を抑えると良い」というのを聞いて、答案例がついているこちらの問題集を使用しました。解答例はとても簡潔ですが、問題文から民訴上の問題点を特定し、論点について論述する、という流れがなんとなく分かるようになりました。
藤田広美「解析民事訴訟法」も旧司法試験を扱っていますが、具体的な解答例がないため、えんしゅう本を使用していました。
※最終的には、加藤ゼミで民訴の書き方が分かるようになりました。

要件事実

要件事実は、司法試験受験時には参考書を使用しておらず、基本書のみを使用していました。

執筆者情報
実務家弁護士S
私大法科大学院卒業・新司法試験合格・実務経験2年以上
加藤ゼミの受講により勉強法を変えたことで司法試験に合格したことから、その経験を後輩に伝えたいと思い記事を執筆。
受験生時代の得意科目は刑法、苦手科目は行政法。