加藤ゼミナールについて

司法試験合格者が使用した「基本書」、全部教えます(公法系、労働法)

合格者の試験対策(実務家Sさん)

公法系

憲法と行政法の基本書についても、司法試験受験生の中ではスタンダードなものを使用していました。

憲法

■芦部信喜『憲法』岩波書店
憲法の教科書といえばこれ、というほど有名な基本書です。
使い方:憲法の授業にあわせて通読しました。判例を読んだり、択一を解いたりした際に、よく理解ができていない部分は、再度この本を読み直しました。
コメント:憲法の勉強をするのであれば、1冊は持っておくべき本です。論文の書き方や択一知識の網羅という点では不足がありますが、「表現の自由とは何か」といった、基本的な知識・考え方を学ぶことができます。
私は、芦部の憲法で下地を作ってから、論文の書き方を学んだり、択一知識を入れていきました。

■野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利『憲法Ⅰ・Ⅱ』有斐閣
通称「四人組」と呼ばれる基本書です。
使い方:統治の勉強をするため、『II―総論・統治』のみ使用しました。択一や授業の不明点を調べるため、辞書的に使用しました。
コメント:芦部の憲法より情報量が多く、辞書としても十分に使うことができました。統治分野は、ロースクールの授業や択一問題を解くことで知識を身に着けていたため、この基本書を通読することはしていません。

■安西文雄・巻美矢紀・宍戸常寿『憲法学読本』有斐閣
1冊で憲法の論点、判例をコンパクトにまとめた基本書です。①憲法総論②基本的人権③統治機構の3部構成になっています。
使い方:憲法の論文の書き方や、判例・学説の抑えるべきポイントがわからなかったことから、基本的人権部分を通読しました。
コメント:私は次の3つの理由から、とても分かりやすい基本書だと思います。

  • (ⅰ)審査基準についてわかりやすい記述がある
  • (ⅱ)権利の保証範囲、いかなる審査基準を用いるのか…というように、論文試験に使いやすい形で構成されている
  • (ⅲ)判例とその意義が非常にコンパクトにまとまっており、論文試験において判例の抑えるべきポイントが明快である
  • 憲法の論文式試験が苦手であったり、知識として抑えるべきポイントがわからない人は、一度読むことをおすすめします。

行政法

■櫻井 敬子・橋本 博之 「行政法」弘文堂
行政法の基本書の中では最も有名な「サクハシの行政法」です。
使い方:ロースクールの授業にあわせて通読し、問題を解くたびに該当箇所を読み直していました。
コメント:行政法の基本的な理解については、この1冊で十分だと思います。私は、橋本 博之「行政法判例ノート」を使用し、判例と基本書を行ったり来たりしながら学習しました。
※私は、サクハシと行政法判例ノートを使用して勉強をしましたが、ある程度学習が進むと「基本書・判例の言っていることは分かるが、答案は書けない」状態になり、長らく行政法に苦手意識がありました。合格後に振り返ると、これは、基本書の問題というより、行政法の考え方がわからなかった、判例の似ている事案を比較するという視点に欠けていたことが原因だと思います。私は加藤ゼミでこの部分を補完しましたが、論文対策という意味では、基本書以外のツールも使用すればよかったと思います。

労働法

 両角道代  森戸英幸  小西康之 他「労働法 (LEGAL QUEST)」有斐閣
コンパクトにまとまった労働法の基本書です。
使い方:労働法の授業にあわせて通読しました。
コメント:選択科目に割く時間を考えると、情報量の多い基本書は読み切れないと思い、リークエシリーズの基本書を使用しました。基礎知識が端的にまとまっているため、読みやすかったです。もっとも、労組法についてはやや記述が薄いと感じたため、後述の「労働組合法」で補完しました。
労働法は、判例を重点的に読んでいたため、基本書を繰り返し読み込むことはしていません。

■西谷敏「労働組合法」有斐閣
その名の通り、労組法に特化した基本書です。
使い方:辞書的に使用しました。
コメント:リークエの労組法の部分では不明な点があるときに、こちらの本を辞書として使用しました。労組法に特化した基本書ですが、1冊でかなりの情報量がある(536頁あります。)ため、通読には向かないように思います。

おわりに

私が使用した基本書の紹介は以上になります。
基本書はあくまで「基本」の書籍であり、試験対策という意味では不十分な部分もあります。他に使用した書籍については、「司法試験の「参考書」の種類と選び方④(公法系、労働法)」の記事も参考にしてみて下さい。

執筆者情報
実務家弁護士S
私大法科大学院卒業・新司法試験合格・実務経験2年以上
加藤ゼミの受講により勉強法を変えたことで司法試験に合格したことから、その経験を後輩に伝えたいと思い記事を執筆。
受験生時代の得意科目は刑法、苦手科目は行政法。