法科大学院制度が導入されて15年以上が経ちます。現在、法科大学院制度導入前の「旧司法試験」制度とくらべ司法試験の合格率そのものは上がっていますが、法科大学院ごとの合格者数や合格率には大きく差があります。
そこで今回は令和3年度(2021年度)のデータから合格者数が多い法科大学院、合格率が高い法科大学院や、逆に当該年度の結果が芳しくなかった大学院などを比較していきます。
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法科大学院の校数の変遷
2021年現在国内に存在する法科大学院は私立、国立あわせて36校存在します。(青山学院大学大学院法務研究科法務専攻は2021年度をもって閉鎖予定で新規での学生を募集していません。)
かつては最大で74校もの法科大学院が存在していた時期もありますが、法科大学院間の競争の結果定員割れ状態となる法科大学院も存在する「乱立」状態でした。その後、合格者数の低迷や財政上の経営難、運営のリソース不足など様々な事情からの閉鎖が相次ぎ、現在の校数まで減少しています。
令和3年度(2021年度)の法科大学院別データについて
法科大学院ごとの詳細なデータについては法務省が司法試験のデータとして公表しています。
合格者数の多い法科大学院
合格者数を数多く輩出している法科大学院としては以下が挙げられます。法科大学院志望者にとっても「上位校」「名門」と呼ばれるような法科大学院が目立ちます。
法科大学院名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
慶應義塾大法科大学院 | 227 | 125 | 55.0% |
早稲田大法科大学院 | 231 | 115 | 49.8% |
京都大法科大学院 | 185 | 114 | 61.6% |
東京大法科大学院 | 199 | 96 | 48.2% |
中央大法科大学院 | 261 | 83 | 31.8% |
一橋大法科大学院 | 110 | 64 | 58.2% |
大阪大法科大学院 | 115 | 47 | 40.8% |
神戸大法科大学院 | 113 | 47 | 41.6% |
同志社大法科大学院 | 110 | 39 | 35.5% |
名古屋法科大学院 | 55 | 25 | 45.5% |
合格率の高い法科大学院
続いて、合格率の視点からも上位の法科大学院をピックアップします。合格率はそもそもの母数が少ない法科大学院が浮上するケースもありますが、一定の受験者数がいながら高い合格率を出している法科大学院はやはり上位校が目立ちます。
法科大学院名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
愛知大法科大学院 | 3 | 2 | 66.7% |
京都大法科大学院 | 185 | 114 | 61.6% |
一橋大法科大学院 | 110 | 64 | 58.2% |
慶應義塾大法科大学院 | 227 | 125 | 55.0% |
東北大法科大学院 | 39 | 20 | 51.3% |
山梨学院大法科大学院 | 4 | 2 | 50.0% |
東洋大法科大学院 | 2 | 1 | 50.0% |
早稲田大法科大学院 | 231 | 115 | 49.8% |
岡山大法科大学院 | 33 | 16 | 48.5% |
東京大法科大学院 | 199 | 96 | 48.2% |
合格者を輩出していない法科大学院
令和3年度(2021年度)、合格者を輩出していない法科大学院は19校ありました。(受験者0のケースを含む)
- 愛知学院大法科大学院
- 大阪学院大法科大学院
- 香川大法科大学院
- 鹿児島大法科大学院
- 京都産業大法科大学院
- 久留米大法科大学院
- 國學院大法科大学院
- 静岡大法科大学院
- 島根大法科大学院
- 信州大法科大学院
- 駿河台大法科大学院
- 中京大法科大学院
- 東海大法科大学院
- 新潟大法科大学院
- 白鴎大法科大学院
- 広島修道大法科大学院
- 明治学院大法科大学院
- 名城大法科大学院
- 龍谷大法科大学院
予備試験に合格した場合の司法試験の受験者数、合格者数
司法試験の受験資格を得る方法として、法科大学院の他に司法試験予備試験(予備試験)に合格することが挙げられます。
令和3年度の司法試験合格者のうち、予備試験ルートでの受験生の結果をまとめます。
予備試験合格者の合格率は法科大学院出身者と比較して高い
令和3年度(2021年度)司法試験合格者のうち、予備試験に合格して受験資格を得た受験者の人数は400人でした。そのうち374人が司法試験に合格しており、その合格率は93.5% と、どの法科大学院よりも高い水準です。
予備試験自体がそもそも合格率4%前後の狭き門であると同時に、予備試験の対策が司法試験の対策に直結するため、予備試験を通過した合格者の多くが司法試験を通過できている事情があります。
法科大学院に在籍しながら予備試験を受験することも可能
社会人が働きながら司法試験を目指す場合などは予備試験に合格することが司法試験を受験するのが現実的な手法ですが、法科大学院への進学が検討できる場合、法科大学院ルートで司法試験を受験するか、予備試験ルートで司法試験を受験するかは二者択一ではありません。
予備試験の受験資格には一切の制限がなく、法科大学院生も例外ではありません。従って、法科大学院のカリキュラムを消化しつつ、予備試験に合格できればそのまま司法試験を受け、合格できなければ法科大学院の修了をうけて司法試験の受験資格を得る、という選択を取ることが可能です。
予備試験に合格する見込みが高くなくても、予備試験の自身の結果や合格最低点などの基準は知ることができるため、力試しがてら受験する法科大学院生も少なくないようです。
まとめ
法科大学院を修了すれば自動的に司法試験の受験資格が得られますが、法科大学院によっては実績が芳しくないケースもあります。
法科大学院ルートを考える場合、カリキュラムや実績などを評価しながら上位の法科大学院に合格できることが望ましいと言えるでしょう。
また、法科大学院在籍中であっても予備試験を受験することも可能なので、司法試験合格を見据えて対策を立てるのもメリットの多い方針と言えます。