加藤ゼミナールについて

司法試験の「参考書」の種類と選び方③(刑事系)

合格者の試験対策(実務家Sさん)

刑法

判例集

■前田雅英「最新重要判例250」弘文堂
事実・判例要旨・解説が1頁にまとまっています。
・使い方
事案を読み、各事案で問題になったポイントを抑えるようにしていました。解説については、基本書やロースクールの授業でも理解ができなかった場合のみ読んでいます。
・コメント
事案の冒頭に、各裁判例で問題になった点が簡潔にまとめられています。
私は復習する際に、事案をざっと読む→問題点を思い出す→規範とあてはめを思い出す、という順番で記憶喚起していました。

予備校本・その他

■「趣旨・規範ハンドブックシリーズ」(辰巳法律事務所)
・使い方
一元化用教材として使用しました。授業や自習の際に、論文で使えそうなフレーズや着目すべきポイントがあれば、随時書き込んでいきました。
・コメント
各論部分の情報量がやや少なかった印象があります(その後の改訂で追加されているため、今は多少改善されています。)。
論証は自分でアレンジし、答案に書きやすい形に変えていました。

■井田良「刑法事例演習教材」有斐閣
事例と解説から成る問題集です。答案例は載っていません。
・使い方
問題文を読み、論点を抽出する練習をしました。繰り返し読んで、事案からスムーズに論点を抽出できるようになることを目的としていたため、フル答案を書いたことはありません。
・コメント
複数論点がある事例、頻出の事例の処理方法を学ぶために使用していました。
答案例は記載されていないため、刑法の書き方に不安がある方は、他に答案付きの教材(又は予備校)で補完した方が良いでしょう。

刑事訴訟法

判例集

■判例百選(有斐閣)
・使い方
事案を読み、規範とその使い方を学びました。刑訴は判例を重視し、繰り返し百選を読んでいたように思います。
・コメント
授業で扱った重要判例については、解説部分も読みました。
抑えるべき学説やポイントについては、付箋にメモ書きして貼っていました。

予備校本・その他

■古江頼隆「事例演習刑事訴訟法」有斐閣
設問と解説から成る書籍。答案例は載っていません。
私が受験生だった頃、ほとんどのロースクール生が持っていました。
・使い方
事案を読んで論点が何かを考える→解説を読み論点について学ぶ、という使い方をしていました。重要論点について、基本書の補完をするイメージでした。
・コメント
典型的な事案(≒裁判例に近似している事例、司法試験に出題される事例)から論点を抽出し、論点についてどう考えるかを学ぶことができます。
この本についても、答案例は載っていないため、具体的な答案の書き方を学ぶことはできません。
論点を深化させるための本であり、ある程度学習が進んだ応用者向けだと思います。

【番外編】重要判例解説(ジュリスト臨時増刊)について

毎年4月頃になると、過去1年分の最新判例・裁判例を掲載した重要判例解説(ジュリスト臨時増刊/いわゆる「重判」。)が発売されます。

判例百選に乗っていない重要判例もあるため、周りの受験生は、司法試験直前になると「過去3年分くらいは読む」と話していました。

私も焦って過去3年分ほどは目を通したのですが、結論としては、

  • (ⅰ)付け焼刃なのであまり記憶に残らない
  • (ⅱ)重要性がわからないのに、結構な量の裁判例を読むのは負担

でした。

確かに、司法試験では最新判例が出題されることもあるのですが、そのために直前期に重判を買って読むのは、金銭的にも時間的にも結構な負担です。

最新判例を抑えたいのであれば、重判を揃えて読むよりも、予備校を利用したり、ロースクールの教員にお願いし、読むべき重要判例を絞った方が良いのではないかと思います。

執筆者情報
実務家弁護士S
私大法科大学院卒業・新司法試験合格・実務経験2年以上
加藤ゼミの受講により勉強法を変えたことで司法試験に合格したことから、その経験を後輩に伝えたいと思い記事を執筆。
受験生時代の得意科目は刑法、苦手科目は行政法。