はじめに
司法試験に合格すると、修習、二回試験を経て、主に裁判官・検察官・弁護士へと進路が分かれます(一部、公務員や会社員になる方もいます。)。
法曹になった者の一例として、私が弁護士になるまで、進路についてどのように考えていたのかをご紹介します。
合格前の希望進路
私は、法科大学院在学中から弁護士を志望していました。
人と話すことが好きだったので、法曹三者の中でも、人との距離が一番近いと考えられる弁護士が良いのでは、と漠然と思っていたからです。
また、一般民事を扱う弁護士事務所にインターンシップに行ったことがあり、弁護士であれば、訴訟の対応や法律相談にとどまらず、多角的な部分から依頼者や相談者を支援できるのも魅力に感じました。
修習期間
修習中の進路の決まり方
修習が始まる前に、希望進路のアンケートを記入します。アンケートには、「裁判官・検察官・弁護士」について、自分の中での志望割合を記載します(例えば、裁判官:検察官:弁護士=20:30:50)。
また、修習が始まると、担当教官との面談の場が設けられ、その中でも希望進路を聞かれます。その後の進路に関わりますので、少しでも裁判官・検察官に興味があれば、その旨を教官に伝えておくべきです。
●検察官・裁判官になるには、修習中の起案の成績が重視され、裁判官・検察官志望者は、二回試験が終了してようやく進路が確定します。
●弁護士志望者について、私の周りでは、修習開始前に約半数が事務所の内定を持っていました(地方修習です。)。12月に修習が開始し、夏ころには全員内定が決まっていました。
※東京や大阪などの都市部と、地方部でも事情は変わってくると思いますので、あくまで参考情報です。
進路について修習中に感じたこと
- 裁判官、検察官も人とのコミュニケーションが重要
修習を経て思ったのは、裁判官・検察官であっても、人と話す機会が非常に多いということです。例えば検察官であれば、取り調べだけでなく、捜査関係者だったり、法曹関係者だったりと日々会話することがあり、法曹関係者のいずれも「人と近い」ものでした。
しかし、困っている人を前にして、自由に動くことができるという意味で、修習を経ても弁護士が魅力的であることに変わりはありませんでした。 - 「弁護士」は資格でしかない
就活をする上では、自分がなりたい、または業務をしたい弁護士事務所の方向性を決める必要がありました。
私は一般民事を希望していたのですが、一般民事を扱っている事務所といっても、企業からの相談・紹介がメインの事務所、交通事故や債務整理など一部の業務に特化している事務所、弁護団活動に力を入れている事務所等、その内容は千差万別でした。
就活をしていく中で、弁護士というのは資格の総称であって、どのような仕事をしているかは、事務所や各人によって全く異なるのだということがわかりました。
進路の絞り方
このように、修習を経ても、私は弁護士以外の進路に変更することはありませんでした。ここで、前述のように、「どのような事務所を選ぶのか」という選択が待っていました。
自分の興味・希望を挙げると、好きな法分野は労働法で、出来れば相談者と対面で会える仕事を希望していました。また、修習を経て、小規模事務所に魅力を感じていました。
そこで、就活では自分の希望に優先順位をつけ、①人数が少ない事務所であり、②一般民事を扱っているところ(一部業務に特化していないところ)、に絞りました(今考えると、①と②は殆ど重なっているかもしれません。)。
コロナ禍が始まった折で、地方から東京に戻ることがほとんどできなかったのですが、就活を初めて2つ目の事務所に内定を頂き、現在はそこで働いています。
- 就活の状況
就活をする前は、法曹人口の増加から、就職難が続いているのかと思っていました。
しかし、現在は就職難は解消されているそうで、確かに同じクラスでは、集合修習前には全員の進路が決まっていました。
進路を決める上で大切にしてほしいこと
今は希望進路がはっきりしなくとも、修習に行くと、法曹の仕事を間近で見ることができ、自分のなりたい法曹像が少しずつ見えてくるかもしれません。
また、受験生時代は、司法試験の成績で進路が決まると思っていましたが、実際にはそうではありません。
これから法曹を目指す方には、自分のやりたいことは何かを全力で考え、困難があっても諦めないでほしいと思います。
実務家弁護士S
私大法科大学院卒業・新司法試験合格・実務経験2年以上
加藤ゼミの受講により勉強法を変えたことで司法試験に合格したことから、その経験を後輩に伝えたいと思い記事を執筆。
受験生時代の得意科目は刑法、苦手科目は行政法。